2022年1月9日
〔ヨハネの黙示録連続講解説教〕
第72回「ヨハネの黙示録10章5〜7節」
(17/2/5)(その2)
(承前)
なぜ、このような丁寧な誓いが必要なのでしょうか。それは、天使がダニエ
ルの時よりも信用されなくなった、ということを表わしているのです。今は、
天使の誓いさえ信用されない、世の末なのです。
ところで、その誓いの内容は、どうなのでしょうか。災いはこのまま続行さ
れるのでしょうか。
6b〜7「もはや時がない。第7の天使がラッパを吹くとき、神の秘められた
計画が成就する。それは、神が御自分の僕である預言者たちに良い知らせとし
て告げられたとおりである。」でした。
日本語の聖書では、「時」と同じ語で訳されてしまっている語に、ギリシア
語の原語には、「ホーラ」「カイロス」「クロノス」という3つの語があって、
それぞれ使い分けられていることは、皆さま既によく御存じのことでしょう。
あえてその違いを強調して訳せば、「ホーラ」は「(その瞬間の)時」、「カ
イロス」は、「時代」、「クロノス」はチクタクチクタクと進む「時間」と訳
すことができるか、と思います。
で、ここ(6節)で言う「時」は何か、と言えば、「クロノス」なのです。
よって、ここでは、「もはや、第7の天使のラッパまで秒読み段階に入った。
すなわち災いは、計画通りに実行される、ということが分かるのです。
が、「災い」が成就する、とは言われておらず、「神の秘められた計画(原
語はミュステーリオン、)」が成就する、と述べられている。これはいったい
どうしたことなのでしょうか。
実は、ここで、大天使は、滅びではなく、救いの告知をしたのです。
「ミュステーリオン」とは、元来「秘密(秘められた意味)」という意味で、
いい意味にも悪い意味にも用いられる語です。黙示録でも、「大淫婦」の
ミュステーリオンが「大バビロン、みだらな女たちや、地上の忌まわしい者の
母」である、と記されています。
10:7でも、原文は「神のミュステーリオン」とだけ記されているので、そ
れが滅びのことを指すのか、救いのことを指すのか分からないのです。
しかし、原文は、その「神のミュステーリオン」を言い換えて、「ユーアン
ゲリオン(良き)知らせ」、更に、預言者たちによって告げ知らされた」と付
け加えているのです。ですから、時がチクタクと迫っているのは、災いではな
く、救いであることが分かるのです。
しかし、第七の天使はまさにラッパを吹かんとし、災いを用意しているでは
ありませんか。それはどうなのでしょう。
実は、原文にあって、翻訳でぬけ落ちてしまっている重要なひと言があるの
です。翻訳のせいです。それはこういうことです。原文は、正確に訳すと、
「第7の天使が、ラッパを吹き鳴らそうとする『声の日々に』」と記されてい
るのです。意味不明のように見えるかもしれませんが、本当にそう書いてある
のです。どういう意味だろうか。第7の天使がラッパを吹き鳴らした、それで
世界が終っちゃった、では少なくともない、と言うことです。この「第7の天
使が、ラッパを吹き鳴らそうとする声の日々に」は、少なくともずっと続いて
いく、と言うことです。それがどこまでか、続いて、その後「神のミュステー
リオン」、すなわち救いが来る、という意味なのです。第七の天使は第七の災
いをもたらすでしょう。それは世界の悪の後始末ですから、途轍もなく、大き
く、厳しいものになるでしょう。しかし、それで災厄は終わりなのです。その
次には、「神のミュステーリオン」が開示される。こうして、大天使ガブリエ
ルの誓いによって、黙示録で初めて、終わりの時が、「神のミュステーリオン」
の開示されるときが、「クロノス」の延長線上に見えてきたのです。
が、その「クロノス」の正確な長さはまだ分からない。しかし、もうストップ
ウォッチは押されている。
私たちの目の前は真っ暗かもしれません。しかし、その先にこそ、「神の秘
められた計画」の成就が秒読み状態であることを覚えて、何とか、暗闇を耐え
ていきましょう。
(この項、完)
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