2021年12月26日

〔ヨハネの黙示録連続講解説教〕

第71回「ヨハネの黙示録10章1〜4節」
(17/1/29)(その2)
(承前)

 この有様を目の当たりにして、天国にいらっしゃる方々も、躊躇されたので
はないでしょうか。このまま、最後の最後まで突っ走るか、それとも、ここで
立ち止まるのか、この躊躇の中に、天国にいらっしゃる方々の憐れみを感じる
のですが、それが、第7の、最後の天使がラッパを吹く前の、10章1節から11章
15節までの幕間劇です。

 幕間劇は「もう一人の力強い天使」登場から始まります。

1〜3a「わたしはまた、もう一人の力強い天使が、雲を身にまとい、天から下って
来るのを見た。頭には虹をいただき、顔は太陽のようで、足は火の柱のようで
あり、手には開いた小さな巻物を持っていた。そして、右足で海を、左足で地
を踏まえて、獅子がほえるような大声で叫んだ。」

 ここで、見者ヨハネは、今まで、天上で事の成り行きを見守っていたのです
が、一旦地上に降りたと考えられます。人類の3分の1が死んだ状況が心配だった
のでしょう。
 すると、そこで「もう一人の力強い天使」が天から下って来るところへ出っく
わしました。この天使がはたしてまともな天使なのか、あるいは、はたまた堕
天使なのか、気になるところなのですが、後の記述から、まともな天使、しか
も「大天使」とも言える人物であることが明らかとなります。
 まず、「雲を身にまと」っていました。「雲」は聖書では、しばしば神がお
顕れになられるときのしるしです。また、「頭には虹をいただき」とあります
が、「虹」は、契約の虹もありはしますが、神の輝きを指し示すものでもあり
ます。(エゼキエル1:28)「顔は太陽のようで、足は火の柱のようで」は、
黙示録1:15の「天上のキリストの姿」に近い。
 つまり、その姿は、限りなく、神、キリストの姿に近いのです。これは、明
らかに、神、キリストの名代として来られた天使、もちろんまともな天使に違
いありません。それで、多くの注解者が、ザカリヤ、マリアのところにも来た、
天使「ガブリエル」ではないか、と推測しています。もちろんそう書いてない
のでわかりませんが、そう推測されるような人物であることは確かです。
 その人物が、「右足で海を、左足で地を」踏まえ、すなわち全世界に向かって、
「獅子がほえるような大声で叫んだ」と言うのですから、重大な宣言をしたの
です。
 何の宣言をしたのでしょうか。それは、この場面においては、「このまま裁
きの業を継続するのか、どうか」でしょう。
 果たしてどちらであったのか、については、5節以下で触れられるとして、
それが明らかにされる前に、「7つの雷」が声を上げたのです。

3b〜4節「天使が叫んだとき、7つの雷がそれぞれの声で語った。7つの雷が
語ったとき、わたしは書き留めようとした。すると、天から声があって、「7
つの雷が語ったことは秘めておけ。それを書き留めてはいけない」と言うのが
聞こえた。」
 雷は、聖書では、しばしば神の声のたとえとして用いられてきました。
(サム上2:10など)しかし、雷がしゃべる、という記述はここ以外にはどこに
もありません。このしゃべる雷とは何なのか。それは、前後関係から推測する
しかありませんが、それは、天使たちの天上での「喧々諤々」の議論の様子を
再現しているのではないでしょうか。
 何を議論しているのか。それはもちろん、このまま裁きを継続するのか、そ
れとも一旦中断するのか、と言う議論です。「7つの雷がそれぞれの声で語った」
ということは、天使たちの間でも議論が分かれた、と言うことを表わしている
のではないでしょうか。
 それはそうでしょう。世界は、神の裁きを必要とするくらい乱れています。
この点については異論はないでしょう。しかし、あまりにも乱れているために、
それに即した裁きが行なわれると、またそこには、あまりにも多くの犠牲者が
出るのです。裁きをこのまま続けていいのか、一旦見直すべきなのか、一考の
余地のあるところです。
 天使たちの意見も分かれたことと思います。皆様が天使だったら、どのよう
な意見を述べられますでしょうか。
 ところがそこで「天からの声」、それは明らかにキリストないしは神の声で
すが、「7つの雷が語ったことは秘めておけ。それを書き留めてはいけない」
とのこと。つまり、天上の会議の議論はともかく、一つの意志が決定された、
それをこれから大天使(おそらく)ガブリエルが明らかにするので、「良く聞け」
と言う訳です。
 その決定が何なのか、は次回ですが、天においても、世界や人間の運命でさ
え、慎重な議論を踏まえて進めて行かれることを覚え、私たちの教会も十分に
慎重な議論を踏まえて、教会の歩みを進めていくべきであろうか、と思う次第
です。

(この項、完)



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