2021年10月31日
〔ヨハネの黙示録連続講解説教〕
第67回「ヨハネの黙示録9章7〜12節」
(17/1/1)(その2)
(承前)
7〜10節「さて、いなごの姿は、出陣の用意を整えた馬に似て、頭には金の冠
に似たものをつけ、顔は人間の顔のようであった。また、髪は女の髪のようで、
歯は獅子の歯のようであった。また、胸には鉄の胸当てのようなものを着け、
その羽の音は、多くの馬に引かれて戦場に急ぐ戦車の響きのようであった。更
に、さそりのように、尾と針があって、この尾には、5カ月の間、人に害を加
える力があった。」
まず「いなご」ですが、ヘブライ語で、「アルべス」と言います。
が、日本で害虫ではあるが、食用に供するそれとは大いに違い、イスラエルで
は、そもそも青草を食いつくす「神の罰」として受け止められてきたようです。
(出エジプト記10章)
その害が、たまらなく大きかったのでしょう。預言者の時代になると、今日
では、その一つ一つを分類学的に同定するのは困難なのですが、ヨエル書1:4、
2:45では、日本語訳で行きますが、「かみ食らういなご」「移住するいなご」
「若いいなご」「食い荒らすいなご」と区別されて使われるようになりました。
これらには、それぞれ別のヘブライ語の名が付されました。日本でたとえば
「ブリ」が成長期に従って別の名が与えられているようにです。日本では、
「ブリ」をおいしく食べるためでしたが、イスラエルでは、「いなご」の害が
多岐にわたっていたからです。
そしてついに、「ゴーブ」という名まで与えられ、この名は、ペリシテとの
有名な戦場を連想させますが、(サム下21章)いなごは、神が遣わす「戦争」
をさえ意味するようになったのです。(アモス7:1、ナホ3:17)
よって「出陣の用意を整えた馬に似て、頭には金の冠に似たものをつけ、顔
は人間の顔のようであった。また、髪は女の髪のようで、歯は獅子の歯のよう
であった。また、胸には鉄の胸当てのようなものを着け、その羽の音は、多く
の馬に引かれて戦場に急ぐ戦車の響きのようであった。」とは、戦争によって、
人々が蹂躙される様を、「いなごの群れ」で表しているのです。
一方、さそりについては、旧約聖書で6回しか出て来ず、イスラエルでは、
さそりについては、その怖さがあまり知られていなかったことが分かります。
しかし、預言書で唯一、エゼキエル書2:6で、神に逆らう者(異邦人?)が
下す罰として登場しますので、ヨハネの黙示録の時代には、異邦人が戦争でも
たらす害として、受け止められるようになっていたのではないでしょうか。
ただ、このいなごの害が怖いのは、「いなごは、底なしの淵の使いを王とし
ていただいている。その名はヘブライ語でアバドンと言い、ギリシア語の名は、
アボリオンという。」からです。
「底なしの淵」と訳されている語は、言うまでもなく、前回言った「アビュース」
であり、そして、それは、言うまでもなく、堕落した天使や、デーモン(小悪
魔)が、閉じ込められるところです。
更に「使い」という訳は何が何だかわからず、「天使」と訳さねばなりませ
ん。
つまり、もうお分かりでしょう。いなごの群れは、天から追放されて落ちて
きた堕天使を王と仰ぐその手下どもだったのです。かつて善人で堕落した者ど
もは、筋違いの怨念の塊ですから、何をするか分からない。最もひどい嫌がら
せをすることになるのです。この天使、そして悪人どものボスの名は、「アバ
ドン」ないしは「アボリオン」と呼ばれており、どちらも「破壊する」との意
です。「さもありなん」です。
厳しいです。しかし、地上で起きたことの後始末ですから、仕方ありません。
しかし、それが5カ月限定である、と言うのですから、このことを神の憐れみと
考えて、堪えに耐えていきましょう。
(この項、完)
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