2021年3月28日

〔ヨハネの黙示録連続講解説教〕

第52回「ヨハネの黙示録6章5〜6節」
(16/8/14)(その1)

5〜6節「小羊が第3の封印を開いたとき、第三の生き物が『出て来い』と言
うのをわたしは聞いた。そして見ていると、見よ、黒い馬が現れ、乗っている
者は、手に秤を持っていた。わたしは、4つの生き物の間から出る声のような
ものが、こう言うのを聞いた。『小麦は1コイニクスで1デナリオン。大麦は
3コイニクスで1デナリオン。オリーブ油とぶどう酒とを損なうな。』」

 いつものように、前回振り返りから参りましょう。
前々回から、『屠られたような小羊』であられるイエスが封印を一つずつ開い
ていく作業が始まりました。
 そして、第一の封印が解かれたとき、そこには「白い馬」とそれにまたがった
騎士が登場しました。その騎士は、弓を持ち、冠が与えられ、勝利に勝利を得
ようと出て行きました。
 この白い馬とそれに乗った騎士については、世界に戦争という裁きをもたら
す、と解釈されてきましたが、実はそうではなく、この「白い馬」とそれにま
たがった騎士は、「救いをもたらす者」で、地上に神のことばを伝える宣教者
(伝道者)である、ということが分かりました。
 マルコによる福音書13:10に、イエス様が、ヨハネの黙示録と同じく、終末
の出来事を預言された中で「しかし、まず、福音がすべての民に宣べ伝えられ
ねばならない。」と言われているとおり、終末は、すべのものの決算がなされ
るときですから、裁きは避けられません。しかし、裁きにに先立って、福音が
「白い馬」とそれにまたがった騎士によって宣べ伝えられることにより、これ
から起こされる裁きは、本当の救いをもたらすためのものであることを指し示
そうとされたのです。
 そして、前回は、それに引き続いて、第二の封印の開封と、「火のように赤
い馬とそれにについて騎士」について、学びました。
 この「火のように赤い馬とそれに乗った騎士」が もたらすものは、「地上
から平和を奪い取って、殺し合いをさせる」ことでした。
 これは大変なことです。世界紛争です。
ここで使われている「平和」という語は、黙示録では他は、1:4〜5の祝祷の
中でしか使われていない語で、「神様から与えられる平和」ですから、「火の
ように赤い馬とそれに乗った騎士」は、地上に争いをもたらすばかりではなく、
「神の平和」さえ、奪ってしまうのです。人の心の中が憎しみで満たされてし
まう、のです。
 しかし、神の裁きである、としても、そして、百歩譲ってそれが避けられな
いものであるとしても、「地上に」、すべての人に、「神の平和」さえ、奪って
しまう出来事が起こっていいのか。
 そこで、何が裁かれようとしているのか、神がだれをお裁きになろう、とし
ているのかが問題となるのであります。
 この問題については、古来、裁かれる者に聖徒も含まれるのかどうか、が大
論争となってきました。
 しかし、実は、神が「紛争」を持って、地を裁かれるというという考えは、
旧約聖書の時代から、そしてユダヤ教に受け継がれてあったのであります。
 それでは、その「紛争」によって神が裁きをなそうとしておられる相手は誰
なのか、と言うと、堕落した天使と人の子の間にできた子でした。(第一エノ
ク書88:2)
 どういうことか、と言えば、ノアの洪水の時も、悪の始まりは、「神の子ら
は、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。(創世記6:2)」
ことから始まりました。
 「悪」は神に遠い所、たとえば異教徒などから始まるわけではない。この
人々は知らないだけである。そうではなく、神に最も近いところにいる者、天
使の堕落から始まるのです。裁きは、まずクリスチャン、その中でも特に聖職
者の堕落に対して、そこに「紛争」が起こり、殺し合いが起こる、という形で
起こる、ということを、この「火のように赤い馬とそれに乗った騎士」の物語
は告げているのです。
 以上を受けて、本日は、第三の封印の開封と、黒い馬の登場です。この黒い
馬は地上に何をもたらそうとしているのでしょうか。
 5節「小羊が第3の封印を開いたとき、第三の生き物が『出て来い』と言う
のをわたしは聞いた。そして見ていると、見よ、黒い馬が現れ、乗っている者
は、手に秤を持っていた。」
 まず「黒い馬」ですけれども、これは「赤い馬」とは異なり、現実にもいる
馬です。しかし、聖書の中での用例は、旧約聖書ゼカリヤ書6章2節、6節と
ここにしかありません。ゼカリヤ書6章2節、6節では「黒い馬」は、神の裁
きを告げ知らせる役割を担わされていますので、ここ、黙示録6:5でも神の
裁きを実行するために登場したことに、ほぼ間違いありません。それでは、そ
の神の裁きとは何なのでしょうか。

(この項、続く)



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