2021年3月21日

〔ヨハネの黙示録連続講解説教〕

第51回「ヨハネの黙示録6章3〜4節」
(16/8/7)(その2)
(承前)

 まず、「赤」という色ですけれども、黙示録では、ここの他には、12章と17章、
18章に登場し、ここ以外は、すべて神に逆らう「竜」と女にまつわるものです。
神に逆らう者が流す「聖なる者たち(殉教者)の血」を象徴している、と考えら
れます。
 よって、赤が血を指し示すことは、ほとんど異論のないくらい明らかである、
と考えられるのですが、それでは、6:4においては、だれによってだれの血
が流されようとしているのか、そこが問題です。
 この問いを持って、私たちは、以下を見ていく必要があります。
事柄一つ一つの前に全体を見てみたい、と思いますが、この「火のように赤い
馬とそれに乗った騎士」が もたらすものは、「地上から平和を奪い取って、
殺し合いをさせる」ことでした。
 これは大変なことです。世界戦争です。
ここで使われている「平和」という語は、黙示録では他は、1:4〜5の祝祷の
中でしか使われていない語で、「神様から与えられる平和」です。「火のよう
に赤い馬とそれに乗った騎士」は、地上に争いをもたらすばかりではなく、
「神の平和」さえ、奪ってしまうのです。人の心の中が憎しみで満たされてし
まう、ということでしょうか。
 この「火のように赤い馬とそれに乗った騎士」が何者であるかも定かではあ
りませんが、そのようなことを神がさせる、いや、少なくともお許しになられ
るとしても、それはいったいどうしたことなのでしょうか。
 ここで、この者が与えられた「剣」について検討してまいりたい、と思いま
すが、「剣」という語については、黙示録には、ここ以外に8つの用例があり、
そして、その用法については、見事に真っ二つに分かれております。
 一つは、1章、2章、ですでに出てきたイエス様の「正義」の剣、それは、
19章において、実際に用いられます。そして、13章において、先ほど出てきた、
神に逆らう勢力によって用いられる「悪の剣」です。
 だとすると、ここは、「火のように赤い馬とそれに乗った騎士」も、「第二
の生き物が『出て来い』と言う指示によって出てきた者ですから、つまり、神
から遣わされた者ですから、彼の剣も「正義の剣」である、と考えられるので
す。
 「赤い馬」ですけれども、これについては、聖書全体で、ここの他には、ゼ
カリヤ書1:8と6:9しかなく、そこは「赤毛の馬」と訳されていますが、ゼ
カリヤ書においては、「白い馬」もそうですけれども、神の裁きを告げる者と
しての役割を担わされています。
 そうしますと、「火のように赤い馬とそれに乗った騎士」は、神の裁きを使
命として担わされた者と言うことになるのであります。
 しかし、神の裁きである、としても、そして、百歩譲ってそれが避けられな
いものであるとしても、「地上に」、すべての人に、「神の平和」さえ、奪って
しまう出来事が起こっていいのか。
 そこで、何が裁かれようとしているのか、神がだれをお裁きになろう、とし
ているのかが問題となるのであります。
 この問題については、古来、裁かれる者に聖徒も含まれるのかどうか、が大
論争となってきました。
 皆さまはどう思われますでしょうか。
しかし、実は、神が「紛争」を持って、地を裁かれるというという考えは、旧
約聖書の時代から、そしてユダヤ教に受け継がれてあったのであります。
 それでは、その「紛争」によって神が裁きをなそうとしておられる相手は誰
なのか、と言うと、堕落した天使と人の子の間にできた子でした。(第一エノ
ク書88:2)
 どういうことか、と言えば、ノアの洪水の時も、悪の始まりは、「神の子ら
は、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。(創世記6:2)」
ことから始まりました。
 「悪」は神に遠い所、たとえば異教徒などから始まるわけではない。この
人々は知らないだけである。そうではなく、神に最も近いところにいる者、天
使の堕落から始まるのです。
 誤解を恐れずに言えば、裁きは、まずクリスチャン、その中でも特に牧師の
堕落に対して、そこに「紛争」が起こり、殺し合いが起こる、という形で起こ
る、ということを、この「火のように赤い馬とそれに乗った騎士」の物語は告
げているのです。
 私たちは、恐れるべきでしょうか。「堕落」については、恐れるべきでしょう。
しかし、むやみに恐れる必要はない。牧師の隠された堕落まできちんと見てお
られる神ですから、「普通の」方は、かえって安心しておられてよいのではな
いでしょうか。
 神はあなたの、隠れたよきことをきちんと見ておられます。

(この項、完)



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