2021年1月24日

〔ヨハネの黙示録連続講解説教〕

第47回「ヨハネの黙示録5章11〜12節」
(16/7/3)(その2)
(承前)

 問題は天使たちの働きです。天使たちは、なぜこのように声を上げていたの
でしょうか。
 残念ながら、そのヒントは11節、12節にはありません。
そこで、黙示録を読み始めてから、天使の働きを見ると、実は3つしかありま
せん。そして、その中重要な働きは一つしかなかったのです。
 一つは、1:1、この黙示録そのものが天使によって伝えられた、というこ
と。そして第二は、エフェソから、ラオディキアに至るまで、7つの教会に、
それぞれの教会の「教会の天使」として執り成したこと、そして第三は、5:7、
「封印を解いて、この巻物を開くのにふさわしい方はだれか」と叫んだこと、
この3つだけです。
 そして、第一と第三は物語進行上の働きでしかありませんので、これまでの
所、天使の大きな働きは、「教会の天使」として、イエスの7つの教会への忠
告を聞いて、受け止め、そして教会に伝える働きだったのです。
 7つの教会の現実はどうだったでしょうか。本来は天国の先駆けとして、神
の国の「鏡」でなければならないはずなのに、皆弱さに悩んでいました。その
弱さたるや、迫害を受けての弱さかと思いきや、一つの教会の例外を除いて、
内部分裂、偽教師の台頭による混乱に悩んでいたのです。
 何と情けないことが、今まで触れませんでしたが、「教会の天使」たちは、
その現実をもっともよく知り、最も深く痛みを覚えていたのではないでしょう
か。
 その「教会の天使」が、『屠られたような小羊』であられるイエスが巻物の
封印を解く方として登場された時に、喜びの叫びを上げたことに、私たちも注
目せねばなりません。イエスの贖いこそ、この教会の弱さ、混乱を解決する、
させる力であったのです。
 次にその叫びの内容です。
「『屠られた小羊は、力、富、知恵、威力、誉れ、栄光、そして賛美を受ける
にふさわしい方です。』」
 『屠られたような小羊』であられるイエスは、どうやって、教会の混乱を収
めたのでしょうか。教会に神から遣わされた権力者として君臨し、教憲教規を
振りかざし、教会員を、たとえ暴力をふるうことはなかったとしても、混乱を
収めるためだ、と称して、怒鳴りつけ、パワーハラスメント行為を繰り返しつ
つ、敵対者を排除しつつ、教会員を黙らせたのでしょうか。
 そうではありません。全く逆でありまして、自らが、『屠られた小羊』とし
て、虐待され、棄てられ、そして殺され、教会員の身代わりとなって、教会の
混乱を収めたのです。
 ですから、「力がなかった」が、『屠られた小羊』の実態だったのです。
しかし、その様子をありのままに見ていた天使から、『屠られた小羊』として
のイエスに賛辞が送られました。
 7つの賛辞ですが、これはブセットという学者が正しく捉えているように、
最初の4つと残りの3つに分けられます。そして、最初の4つの1番目と4番
目が、最も大切です。1番目は力、4番目は「威力」これは正しくは「権力」
と訳すべきです。この2つは『屠られた小羊』としてのイエスには徹底的にあ
りませんでした。
 しかし、そのことのゆえに、教会の混乱を収めた、とりなしをなしたのです。
結果、この方には、本当の「富」と「知恵」があることが知れ、そして、やっと
終末の時に至って、「誉れ」「栄光」「賛美」を受けることとなったのです。
それまでは「地獄」だったはずです。
 「すべての民を贖う」、これは聞こえの良い言葉です。しかしそのためには、
『屠られた小羊』による、どろどろとした犠牲があったことを忘れないように
いたしましょう。

(この項、完)



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