2020年04月19日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第27回「ヨハネの黙示録3章14〜17節」
(15/12/27)(その1)
(承前)

 宗教上の施設については知られていません。
なぜ、このような町にキリスト教会ができたのか、それは、宣教者も宣教の過
程も一切知られていないので、不明ですが、コロサイの信徒への手紙との微妙
な関係からいろいろな推測は可能です。
 コロサイの信徒への手紙には、何べんか、ラオディキアの教会のことが触れ
られています。(2:1、4:15、16)2:1では、「わたしが、あなたがたと
ラオディキアにいる人々のために、また、わたしとまだ直接顔を合わせたこと
のないすべての人のために、どれほど労苦して闘っているか、分かってほしい。」
とまで言われています。
 コロサイの信徒への手紙がパウロの真正の手紙ではない―パウロの名を冠し
て書かれた手紙である―ことはほぼ確実ですが、内容からして、コロサイの教
会とラオディキアの教会とが一体であったことが窺われます。同じ時期に、同
じ宣教者によって2つの教会が造られたのではないでしょうか。
 2つの教会が共通して抱えていた問題点については、次回以降触れるとして、
ラオディキア教会の問題点について、黙示録ではどういわれているか、早速そ
こに入ってまいりましょう。
 「わたしはあなたの行いを知っている。あなたは、冷たくもなく熱くもない。
むしろ、冷たいか熱いか、どちらかであってほしい。熱くも冷たくもなく、な
まぬるいので、わたしはあなたを口から吐き出そうとしている。」
 まず、ラオディキア教会の信徒は信仰が「冷たくもなく熱くもない。」「な
まぬるい」と言われています。さらに「冷たいか熱いか、どちらかであってほ
しい。」と言われています。つまり、信仰が「熱い」ないしは「冷たい」こと
がよく、「なまぬるい」のがだめだ、ないしは悪い、と言われているのです。
これはどういうことでしょうか。
 私はかつてここを読んで、私の背景には「ホーリネス的な信仰がいい」との
固定観念があったのですが、「ラオディキア教会員は、熱心さが足りない。
もっと一生懸命に教会に通って奉仕しろ」という意味だ、と受け取ってきまし
た。すなわち、熱心な信仰が勧められている、という解釈です。
 このように解釈する人は多いことと思います。しかし、だとすると、「冷た
い」のがよい、「なまぬるい」よりよっぽどよい、と言われていることの説明
がつかないのです。
 「熱い」(ゼストス)も「なまぬるい」(クリアロス)も、さらには「冷たい」
(プスュクロス)も、新約聖書ではここでしか使われていない語なので、これ
らの語のニュアンスをつかむのは難しいのですが、あ、ありました。「冷たい」
(プスュクロス)だけは、マタイによる福音書10:42だけですが、他の用例があ
りました。そこでは「冷たい水」でした。
 一例にすぎませんが、これらの語は、実際の温度のことを言っているような
のです。その人の態度の比喩ではありません。とすると、ここで「心が熱して」
とか「心が中途半端で」とか「心が冷たい」ということではなく、物事に白黒
はっきりしなさい。中途半端はいけません。受け入れるものははっきり受け入
れ、拒否するものはきちんと拒否しなさい。という意味になるのではないで
しょうか。
 信仰生活を進めていく上で、絶対に受け入れなければならないものがありま
す。「小さい者」を受け入れねばなりません。一方絶対に受け入れてはいけな
いものもあります。『権力』を受け入れてはなりません。(ヘロデ8:15)
是々非々とすべきで、受け入れるのだか、受け入れないのだか、はっきりしな
いのが一番よくない、と言われているのではないでしょうか。
 だとすると、後半部分、「あなたは、『わたしは金持ちだ。満ち足りている。
何一つ必要な物はない』と言っているが、自分が惨めな者、哀れな者、貧しい
者、目の見えない者、裸の者であることが分かっていない。」の部分について、
一般には、ラオディキア教会の豊かさと「自己満足」がとがめられている、と
解釈されているのですが、そうではなく、あらゆることを中途半端にしか受け
入れないので、そして逆に言えば、受け入れてはいけないものまで受け入れる
ので、実は何も身についておらず、イエスから離れてしまっている状態を言っ
ているのではないでしょうか。
 こういった信仰では、逆境の時何の役にも立たないでしょう。小さいものを
受け入れることもなく、権力に抵抗することもありません。
 しかし、時代の中で、何を受け入れ、何を受け入れてはいけないのか、その
判断は難しいところです。どう判断したらよいのか、次回学んでいくこととい
たしましょう。

(この項、完)



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