2019年11月24日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第17回「ヨハネの黙示録2章16〜17節」
(15/9/20)(その1)

 本日は、いよいよペルガモン教会への手紙の3回目、最終回となります。仲
間から殉教者を出しながら、知らん顔をして内紛に明け暮れていたこの教会に、
どのような裁きが降るのか、大変に興味深いところであります。
 今日は前々回、前回の丁寧な振り返りは必要ないか、と思いますが、ペルガ
モンの教会員が何に惹かれて、このようなことをしたのか、つまり殉教者を見
捨てるようなことをしたのか、そこのところは、今日の結論を出すうえでも不
可欠の前提となりますので、前々回、前回の物語をまとめる形で振り返ってお
きたい、と思います。
 ペルガモン教会の教会員が、少なくとも一部の教会員が、クリスチャンであ
りながら、他の神(々)に惹かれていた(すなわち「偶像礼拝」をしていた)こ
とは確かなのでありますけれども、その可能性は3つあるわけであります。
 可能性の第一は「(ローマ)皇帝礼拝」ですが、これは、最初から除外して
おいて構いません。すなわち、「(ローマ)皇帝礼拝」は、権力によって押し
付けられたものであって、クリスチャンが自らの意志でそれに傾くということ
は、ほとんど想定できないことだからです。テキストにそのような示唆がない
ばかりではありません。内紛をしていても、クリスチャンはクリスチャンなの
です。ところが、第二次世界大戦中の日本基督教団においては、神社参拝を自
らの意志で進んでしました。本来、権力に対しては、クリスチャンは、痩せて
も枯れても潔癖であるはずなのに、日本基督教団はそうではなかったのです。
 しかし、ここは日本ではありません。ギリシアでは、彼らはローマの権力に
媚びたのではなく、彼らが育った風土、ギリシアの土着の神(々)に惹かれたの
です。つまり、彼らの名称「バラムの教えを奉ずる(グループ)」「ニコライ派」
が、そうであることを実証しているのです。
 バラムは、先週申し上げましたように、そもそもは、民数記22章から24章に
よれば、モアブの魔術師でありながら、神を信じる正しい人でした。ところが、
伝承の過程で、イスラエルをモアブの神の礼拝へ誘う悪者になってしまった、
そういう人です。黙示録では、実像ではなく、伝承にもとづいて、彼ら、クリ
スチャンでありながら、他の神(々)に惹かれている(すなわち「偶像礼拝」を
している)人々のことを「バラムの教えを奉ずる(グループ)」と呼んでいるの
です。ということは、彼らが「土着の神」に惹かれていたことは確かです。
 また、「ニコライ派」については、「ニコライ」が、使徒ないしは使徒に準
ずる者の中で、唯一の「改宗者」すなわちギリシア人であったことを考え合わ
せると(使徒言行録6:5)、「ギリシアの神々に寛容であったグループ」と
の推測が成り立つのです。
 それでは、彼らが惹かれていた、土着にして、ギリシアの神は「どなた」な
のか。ゼウスを中心とする神々なのか。あるいは、医神「アスクレピオス」な
のか。そこで私は、「土着にして」ということが、ヒントになるのですが、医
神「アスクレピオス」である、という大胆な仮説を打ちたててみたのです。さ
らに、そこから、殉教者アンティパスは、医神「アスクレピオス」の神殿の医
師にして祭司であったのだが、キリスト教に改宗、すなわちクリスチャンにな
ることによって、医神「アスクレピオス」の神殿から裁かれ、死刑となった、
というさらに大胆な、あまりにも大胆な推論を打ちたててみたのです。
 この推論があっているのかどうか、全く分かりません。また、確かめようも
ありません。しかし、この推論を前提として、今日のテキストに入らせていた
だきます。

16〜17節「だから、悔い改めよ。さもなければ、すぐにあなたのところへ行って、
わたしの口の剣でその者どもと戦おう。耳ある者は、“霊”が諸教会に告げる
ことを聞くがよい。勝利を得る者には隠されていたマンナを与えよう。また、
白い小石を与えよう。その小石には、これを受ける者のほかにはだれにも分か
らぬ新しい名が記されている。」

 イエスの攻撃の対象となっているのは、「ニコライ派」と言われるグループ
の人々のはずです。だとすると、イエスの勧告の第一声、「悔い改めよ」は、
大変に不可解な勧告です。なぜなら、エフェソ教会の場合にも、教会の問題は、
「ニコライ派」の教師たちが教会内で幅を利かせていることでした。それに対
して、イエスの勧告は、彼らを徹底的に調べ上げ、憎み、追放し続けるように、
とのことでした。そして、エフェソ教会の人々は、そのことを成し遂げたがゆ
えに褒められていたのでした。なのに、今回はなぜ「悔い改めよ」なのか。

(この項、続く)



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