2019年09月01日
〔使徒言行録連続講解説教〕
第11回「ヨハネの黙示録2章6〜7節
(15/8/2)(その1)
6〜7節「だが、あなたには取り柄もある。ニコライ派の者たちの行いを憎ん
でいることだ。わたしもそれを憎んでいる。耳ある者は、“霊”が諸教会に告
げることを聞くがよい。勝利を得る者には、神の楽園にある命の木の実を食べ
させよう。」
エフェソの教会への手紙の3回目、最終回です。
振り返ってみますと、手紙はエフェソ教会へのお褒めの言葉から始まりました。
教会の内部に異なった教えを持った教師どもが現れた時、それを黙認せず、
「また、あなたが悪者どもに我慢できず、自ら使徒と称して実はそうではない
者どもを調べ、彼らのうそを見抜いたことも知っている。」
つまり、エフェソ教会は彼らを徹底的に調べ上げ、彼らを「偽教師(「偽」
とは、キリストに反する者との意味です)」として判断し、放逐した、そのこ
とがイエスに褒められているのです。
しかし、エフェソ教会は責められるべき所もありました。しかし、それは、
長所もあるけれども短所もあるよ、という意味ではなく、長年にわたる教会の
内部紛争の結果、起こってきたことです。教会が困難を乗り越えた後、精神の、
信仰のゆるみがあった、ということです。
そのままではいけません。イエス様はリハビリを勧められます。「想起」
「悔い改め」「実行」は、このリハビリのプロセスを言っています。長期にわ
たる、「決して無理をしない」リハビリを経て、教会は再び、使徒の使命を果
たしうる教会として立つことができるのです。
そして、今日は第3部、一般には、「再びお褒めの言葉」などと言われてい
ますが、そう単純ではなく、内部紛争を経て、しかも勝利し、リハビリも済ん
だ教会に与えられる「使命」です。
その使命とは何か、と言えば、何と「憎む」こと。今日はこの使命の意味か
ら入って行くことといたしましょう。
「だが、あなたには取り柄もある。ニコライ派の者たちの行いを憎んでいる
ことだ。わたしもそれを憎んでいる。」
「ニコライ派」につきましては、諸説ふんぷんですが、2:14以下、20節以
下を参考にするに、教会内部の異なった教えを奉ずる人のことでしょう。詳細
は分かりませんが、一度内部紛争を体験したものとして、異なった教えには、
十分に注意しなさい、という意味と思われます。
しかし、「憎む」という表現は尋常ではありません。原語の「ミセオー」と
いう語も、非常に強い意味の語で、「強い嫌悪感を抱く」ないしは「それ以上
に関心を持つことを拒否する」という意味を持ちます。新約聖書で、36回登場
しますが、2回を除いて、すべて「憎む」と訳されています。日本語の「憎む」
という語に、意味内容、語感共に非常に近い語です。
新約聖書36回の内、多くが、神(イエス)に対して、あるいは、神(イエス)
を信じる者に対して敵対者がとる態度について表現する語として用いられてい
ます。たとえばマタイによる福音書10:22(「また、わたしの名のためにあなた
がたはすべての人に憎まれる。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。」)
など。
しかし、その一方で、クリスチャンが、特に教会員同士で「憎み合う」こと
は厳しく禁じられています。たとえば、ヨハネの手紙一3:15、「兄弟を憎む
者は皆、人殺しです。あなたがたの知っている通り、すべて人殺しには永遠の
命がとどまっていません。」とあるとおりです。
この教えがどこから来たか、と言えば、マタイによる福音書5:43〜44で
しょう。イエスの山上の説教ですが、「あなたがたも聞いているとおり『隣人
を愛し、敵を憎め』と命じられている。しかし、私は言っておく。敵を愛し、
自分を迫害する者のために祈りなさい。」からだ、と思われます。
よって、新約聖書においては、「憎む」ことが「よいこと」として奨励され
ているのは、神(イエス)に従うことを妨げるあらゆるものを「憎む」以外に
はないのです。たとえば、「もし、だれかがわたしのもとに来るとしても、父、
母、妻、子供、兄弟、姉妹を、さらに自分の命であろうとも、これを憎まない
なら、わたしの弟子ではありえない(ルカによる福音書14:26)。」など。
が、その延長線上として、ここ(黙示録2:6)と、ユダ23においてだけ、
(ユダ23は、さすがに「ミセオー」を「憎む」と訳すことがはばかられたのか
、
「忌み嫌いなさい」とここだけ訳し変えています。)兄弟、教会員同士でも、
異なった教えを持つ者を憎むことが勧められているのです。これはいったいど
うしたことなのか。異なった教えを持っていたとしても、和解すべきではない
のか。そして、私たちは、このテキスト、2:6から何を学び取ったらよいのか、
考えてまいりましょう。
(この項、続く)
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