2019年07月07日
〔使徒言行録連続講解説教〕
第7回「ヨハネの黙示録1章12〜16節
(15/6/21)(その1)
前回のところは、少し詳しく復習する必要があります。
このヨハネの黙示録の著者であるヨハネは、エーゲ海の小島、パトモスにいま
した。「リゾート気分でいたのか」と思われるかもしれませんが、そうではあ
りません。パトモスという島は当時流刑地だった、という伝承もあり、迫害に
よって流されてこの島にいた可能性があります。
最も、当時パトモス島は流刑地ではなかった、との研究もあり、確定はでき
ないのですが、その場合でも明らかに迫害を逃れてパトモスにいたのです。
どんな気持ちだったでしょうか。私自身はそういう場面を体験したことがな
いので、想像するしかないのですが、おそらく、不安でおののいていた。ない
しは、不安が重くのしかかっていたことと思います。
なお、これは先々週申し上げたことで、蛇足になるかもしれませんが、9節
の「神の言葉とイエスの証しのゆえに」という部分、ここは、「神の言葉とイ
エスの証しのために」と訳すこともできます。そして、かつては、後者の訳を
採用する人が多かったのですが、だとすると、ヨハネはパトモス島でも宣教活
動を行っていたことになります。
そうではありません。前後の文脈から明らかなとおり、彼は、宣教活動のゆ
えに捕えられて、ないしは捕縛の手を逃れて、パトモス島にいたのです。
さて、そんなある日、それは、「主の日」でした。「主の日」とは、何で
しょうか。いつのことでしょうか。それは日曜日です。主イエス・キリストが
復活された日のことです。ユダヤ教では、土曜日が安息日だったのですが、ク
リスチャンはだんだんと「主の日」に礼拝を守るように変わって来たのです。
「主の日」という語、表現は、新約聖書ではここにしかなく、ヨハネの黙示録
の時代になってやっと、主日礼拝が定着してきたことが分かります。
その主日礼拝の最中、ヨハネが“霊”に満たされていると、「“霊”に満た
されていると」というと恍惚としていたかのようですが、そうではなく、聖霊
に満たされているということです。そうすると、「後ろの方でラッパのように
響く大声」が聞こえ、「あなたの見ていることを巻物に書いて、エフェソ、ス
ミルナ、ペルガモン、ティアティラ、サルディス、フィラデルフィア、ラオ
ディキアの7つの教会に送りなさい。」と言われたのです。
以上が、狭く言えば、黙示録2章から3章に記された7つの教会への手紙、
さらには黙示録全体が書かれた所以、きっかけであったわけです。
なお、この7つの教会とヨハネとは、「共に『苦しみ』、ただの苦しみでは
なく『迫害』という苦しみに遭っている」という点において連帯の内にあり、
それゆえ、『兄弟』と呼べる中にあることは、先々週の説教の冒頭で申し上げ
た通りです。
さて、本日は、その語りかけたお方の描写です。現代のわたしたちからする
と、大変奇異に思えることもあるかもしれませんが、そもそもこのお方はどな
たであり、そして、このお方の奇異なお姿は、何を表わしているのか、御一緒
に検討してまいりましょう。
12〜15節「わたしは、語りかける声の主を見ようとして振り向いた。振り向く
と、7つの金の燭台が見え、燭台の中央には、人の子のような方がおり、足ま
で届く衣を着て、胸には金の帯を締めておられた。その頭、その髪の毛は、
白い羊毛に似て、雪のように白く、目はまるで燃え盛る炎、足は炉で精錬され
たしんちゅうのように輝き、声は大水のとどろきのようであった。」
まず、ヨハネが見たものは、7つの燭台でした。
これは何でしょうか。旧約聖書ゼカリヤ書4:2のように、旧約の預言者で、
幻の中にこれを見た人もいます。しかし、その出所は、出エジプト記25:31で、
神殿の中で備えられるべき備品でした。神殿は、神がこの地上でおはしますべ
き所です。幻の中で、7つの燭台が見えた、ということは、そこにおはします
方が、神ないしは神から来られた方、ということになります。果たして誰だっ
たのでしょうか。
13節によれば、その方は、「人の子のような方」でした。「人の子のような
方」とは何者なのでしょうか。今までもたびたびちらっと触れることはありま
しが、ここで、この際はっきりしておきましょう。
「人の子のような方」は、聖書全体で、もう1箇所、ダニエル7:13で出てき
ます(ここでは「人の子のような者」と訳されている)。
すなわち「見よ、「人の子」のような者が天の雲に乗り、「日の老いた者」
の前に来て、そのもとに進み、権威、威光、王権を受けた。諸国、諸族、諸言
語の民は皆、彼に仕え、彼の支配はとこしえに続き、その統治は滅びることが
ない。」です。
(この項、続く)
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