2019年05月19日
〔使徒言行録連続講解説教〕
第3回「ヨハネの黙示録1章5b〜6節」
(15/5/3)(その2)
(承前)
「7」というのは、聖書においては完全数ですので、教会の数が7つだったと
は限りません。その地域にある全教会のために書かれたのです。
では、何のために書かれたか、ということですが、それがドミティアヌス帝
による迫害だったのですね。どんな迫害だったのか、今のところ分かりません
が、それはひどい迫害で、多くの死者、殉教者を出す迫害であったことは確か
です。
教会への迫害、死者、殉教者というと、今の私たちの教会にはぜんぜん関係
のない話のように思われるかもしれませんが、キリシタン弾圧を持ち出すまで
もなく、わずか、70有余年前、日本の教会においても、ホーリネス教会の弾圧
というのがありまして、多くの死者が出ているのであります。
ついでですが、先代の君恵牧師は、戦時中すでに、日本基督教団第六部の
「婦人伝道師」でしたから、亡くなった牧師ともかなり面識があったはずです。
で、その弾圧下にある教会に対して、(おそらく不安と恐怖におののいてい
ることでしょう、)「黙示」つまり、これから起こる出来事を示すことによって、
つまり、終わりの時になれば、神の勝利があるのだ、ということを示すことに
よって、困難に直面していたとしても、「恵みと平和」が諸教会に与えられる
ように、祈る、そのために書かれたものでした。
まだ、1章の1節から5節途中までしか読んでいませんですが、その辺まで
は分かって来られたと思います。
どうでしょうか。私も迫害下の教会を体験している者ではありませんが、戦
時中、国の政策によって、プロテスタント教会がすべて合同させられ、そして
できたのが、日本基督教団のはじまりです。そして、その教団の中で、当時の
教団の幹部が、ホーリネス教会の信仰を「あれは、おかしい」という主旨のこ
とを言って排除したのが、弾圧の始まりだったのです。こういう歴史を学んで
いくと、弾圧は、特殊な時代に特殊な人々によって作られるのではなく、弾圧
の種はどこにでも転がっているように思うのですが、いかがでしょうか。
次の問題は、この黙示が信用できるのか、という問題です。
で、ここが大変に難しいところでありまして、どの宗教も終末論というものを
持っています。仏教でもそうです。昔、歴史でお習いになられたと思いますが、
「末法思想」というものがそれです。それで、仏教ですとか、キリスト教の場
合には、それなりの根拠をもって終末論というものが主張されるのですが、実
は、「終わりの時」というものは誰も見たことがないものなので、いくらでも
インチキ終末論が主張できる。
諸外国はともかく日本ではそんなことはあるまい、と高をくくっていたとこ
ろが、オウム真理教と称するグループが、インチキ終末論を盾に本当に悪質な
犯罪行為をやってくれて、しかも、人もうらやむエリートまでがそれに加担し
て、日本では、宗教そのものに対する不信感が深く根付いてしまった、という
のが現状です。
それで、黙示録の場合には「黙示」の根拠は何なのか、と言えば、もっとも
その「黙示」の内容はまだ明らかとなってはおりませんが、「三位一体の神」
である、というところが、前回のテーマでした。
「三位一体の神」と言えば、キリスト教国ではない、日本の高等学校の歴史
の教科書においてさえ明記されているキリスト教教義の根本です。
しかし、この教義が確立するためには、何と500年の年月を必要としている。
国教としてのキリスト教が確立された時代になれば、日本人が仏教に対して抱
くように、「あの宗教は国で認められた宗教だから安心よ」という議論も成り
立つかもしれません。で、その宗教で言っていることだから、ということで
「信用」を勝ち取ることもできるかもしれません。
しかし、紀元後100年のこの時代においては、叶わぬ話です。
要するに前回のところは簡単に言うと、そういうことなのです。
そこで、では何を根拠に、この「黙示」が信じるに値するものであるか、と
言えば、それはイエス・キリストである、しかも、十字架上で血を流してくだ
さったイエス・キリストである、というそのことが、今日の5節b〜6節の議
論なのです。
結論を先に言えば、理屈はもちろん役に立ちますが、力にはならない。実際
にそのことのために身をもって証した人がいて、信じられる、力になる、とい
うことです。
もう一度5節b〜6節を見てみましょう。
「わたしたちを愛し、御自分の血によって罪から解放してくださった方に、わ
たしたちを王とし、御自身の父である神に仕える祭司としてくださった方に、
栄光と力が世々限りなくありますように、アーメン。」
(この項、続く)
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