2019年05月12日
〔使徒言行録連続講解説教〕
(15/4/19)(その3)
(承前).
どうして、恵みと平和、そして愛と和解がもたらされることができるので
しょうか。それが、父・子・聖霊なる三位一体の神によってなされる、という
のがここで伝えられているメッセージなのです。何と心強いことでしょうか。
しかし、それにしては首をかしげざるを得ないことがあります。
まず、「今おられ、かつておられ、やがて来られる方」とは神のことです。
ギリシア語で「エゴー・エイミー」とは、神の名乗りです(出エジプト記3:14)。
イエスもしばしば「エゴー・エイミー」を用いられました。特にヨハネによる
福音書で。
「かつておられ」は、聖書では用いられていませんが、ユダヤ教文献では登
場するようです。
ところが、問題は「やがて来られる方」です。残念ながら神をそのようにお
呼びする例はありません。しかし、1:7では「その方(たぶんイエスのこと)」
が雲に乗って(つまり終末の時)来る、とされているので、イエスの再臨はそ
のまま、神の到来と考えられているのだ、と思われます。神は終末の時までは
来られないのです。これは教会の不安を増すことになるのではないでしょうか。
ちょっと飛ばしてイエス・キリストですが、ここも他に見られない表現がと
られています。
「証人、誠実な方、死者の中から最初に復活した方、地上の王たちの支配者」
です。
イエス・キリストのことを「証人」と呼ぶのは、こことやはり黙示録の3:14
しかありません。どういう意味があるのか。イエスは神そのものであられるは
ずなのに。
詩編89編の影響を考える人もいますが、私は「証人(マルトゥス)」という語
が後に「殉教者」のことを指すようになったことを考えると、ここで、イエス
の御苦難が考えられているのではないか、と思います。イエス・キリストの十
字架は成就されました。しかし、イエスに続く者の苦難はまだまだ続いている
のです。とすると、文法的には多少問題があるかとは思いますが、「忠実な証
人」と訳した方がよい。
そして、「死者の長子(たぶん復活のことを言っている)」と続くのです。
長子とはりーだーのことで、イエスが復活の先駆けとなったことを言っている、
と思われます。しかし、すべての死者の復活はまだです。
よって地上の王たちへの支配も、天においては完成しているかもしれません
が、地上においてはまだです。
残念ながら、神もキリストも今は強くないのです。そしてさらに、
そこで、3番目の「また、玉座の前におられる七つの霊から、」ですが、私た
ちはずばり聖霊の働きを期待したのですが、残念ながらそうではありませんよ
うです。
「七つの霊」は残念ながら複数形です。「七つの霊」であり、「一つの聖霊」
ではない。神の助け手ではあるかもしれないが、「聖霊」として強力な働きを
なしているわけではない。
三位一体の神は、どれをとってもまだ形成途上の、未完成の神なのです。こ
んな「未完成の神」が恐怖におびえる教会に平安を与えることができるので
しょうか。
できるのです。
今は困難に勝てないでしょう。しかし、イエスによる†と復活というさきがけ
はありますから、やがてはできる、確実にできる、それが教会に与えられた
メッセージなのです。
それまではやはり困難が続くかもしれません。でしょう。しかし、教会には、
その時をめざし、三位一体の神を仰ぎ見つつ歩むことが許されているのです。
(この項、完)
第3回「ヨハネの黙示録1章5b〜6節」
(15/5/3)(その1)
5節b〜6節「わたしたちを愛し、御自分の血によって罪から解放してくださ
った方に、わたしたちを王とし、御自身の父である神に仕える祭司としてくだ
さった方に、栄光と力が世々限りなくありますように、アーメン。」
黙示録の講解説教の3回目です。
まだ、3回目なので、振り返りもさほど大変ではありません。行きつ戻りつし
ながら、少しずつ学びを進めていくことといたしましょう。
まず最初に、この黙示録という書物が、だれに向けて、何を、何の目的で記
されたか、という問題ですが、それは、今までの2回の説教で取り上げたとこ
ろでかなり明らかとなってきました。
書かれた相手は、アジア州にある7つの教会です。現代の私たちは、日本も
含むこのアジアのために書かれたのか、と一瞬びっくりして、耳をそば立たせ
てしまうかもしれませんが、そうではありません。もっともっと、ずっとずっ
と狭くて、今「小アジア」とも呼ばれる、現在のトルコ共和国の、しかも西海
岸、当時のローマ帝国の「プロコンスル・アジア(アジア州とでも訳せましょう
か)」にある7つの教会に向けて書かれたものなのです。
(この項、続く)
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