2019年05月05日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第2回「ヨハネの黙示録1章4〜5節a」
(15/4/19)(その2)
(承前).

 特に、「時が迫っている(3節)」と受け止めている人にとって、この「黙
示録」は大いなる指針となるのではないでしょうか。
 この「時が迫っている(3節)」感覚ですが、パウロは、持ち合わせていま
した。朝、太陽が昇り、夕べに日が落ちる、このことが変わるわけではありま
せん。四季の移り変わりが逆転する訳ではありません。しかし、この「時が
迫っている(3節)」感覚を、「空気」の変わり目を感ずるのです。「時代の
空気」と言いますか、神のみ心に沿わない方向に流れが変わったことを感じる
のです。
 パウロは、ユダヤ戦争の始まるもう何年も前から、感じ取り、それで、あん
なにしつこくユダヤ教徒に改宗を勧めていたのです。その時パウロの行動の指
針となったのが、実は、イエス様が語られた「小黙示録」、マルコによる福音
書で言えば13章であったのではないか、と思われるのです。マルコによる福音
書13章で、これはもちろん後にユダヤ戦争後に編集の手が加えられていますか
ら、現在の版は詳細すぎますが、神殿の崩壊を予告され、その時にどう対処す
べきか、を告げられていたのです。パウロも、証拠はありませんが、何らかの
形で、イエスが語られたその伝承を知っていたのではないでしょうか。
 さて、今私たちに「時が迫っている(3節)」感覚があるかどうか、そこが
問題です。皆様はいかがでしょうか。
 一昨日、金曜日に「はじめての聖書レッスン」がありまして、そこで、私は
「ヘイト・スピーチ」を取り上げました。私も現場に居合わせたことがないも
のですからそうだったのですが、「韓流ブーム」に対する反動だろう、ぐらい
に思っていたら、そうではない。在日コリアンの方々は、時代の変わり目の、
空気の変わり目を感じ取っていらっしゃるのです。そして、それは日本人であ
る者にとっても他人事では決してありません。
 そこでは、白昼堂々と「殺せ」という言葉が叫ばれている。だれにも妨げら
れることなく。
 許伯基先生という在日大韓基督教会の牧師がおられます。戦後日本で生まれ
られた、たぶん二世あるいは三世の方だと思われます。今まで、いろいろな差
別を体験してきたけれど、「ヘイト・スピーチ」には足元が揺るがされる恐怖
を感じる、とおっしゃっていました。
 根底に民族否定、人権否定、人間否定、生命否定の、悪質な悪魔的力が働い
ているのです。そして、現状では、だれもそれを差し止めようとしない。
 金曜日は、若いお母さまたちを対象の会でしたが、この時代の中で子どもた
ちが、本当に健全に育つことができるのか、皆不安を抱いていらっしゃること
がひしひしと伝わってきました。
 さて、「ヨハネの黙示録」について言えば、実際その当時の教会が、どのよ
うな恐怖感、不安感を抱いていたのか、ここではまだ、わからないのですが、
この「黙示録」が手紙の形で述べられている、ということに今日は注目したい、
と思います。

4節「ヨハネからアジア州にある七つの教会へ。」

 この手紙はアジア州にある教会にあてられています。で、アジア州とはどこ
なのか、という問題なのですが、もともとはセレウコス朝シリアの領地のこと
でした。しかし、その後、アッタルスV世が紀元前130年ごろローマに支配を
委ねた地域のことを言うようになりました。小アジア西部沿岸地域および内部
、ローマの「プロコンスル・アジア」のことです。ここで、おそらくキリスト
教会にとって大きな困難があった、あるいは予感されたのでしよう。
手紙ですので、挨拶が続きます。

〜5節前半「今おられ、かつておられ、やがて来られる方から、また、玉座の
前におられる七つの霊から、更に、証人、誠実な方、死者の中から最初に復活
した方、地上の王たちの支配者、イエス・キリストから恵みと平和があなたが
たにあるように。」

 困難には触れられません。困難に具体的に触れるのはずっとずっと後のこと
となります。
 ここでは、この手紙の目的が書かれています。それは、不安の中にあり、恐
怖の下にある教会に、平安を与えるためです。
 日本語訳聖書では、新共同訳でも協会訳でも、翻訳者が後ろから「えいやー」
と訳し上げてしまっていますが、原文では、「恵みと平和があなたがたにある
ように」が冒頭です。
 お気づきの方もいらっしゃることと思いますが、今月の聖書の言葉でもそう
ですし、「はじめての聖書レッスン」ではそれを取り上げて勉強したのですが、
パウロが、どの手紙でも必ず使っている挨拶です。
 つまり、ざっくばらんに言えば、常套句なのです。
しかし、アジア州の七つの教会では、恵みと平和そして愛と和解とは全く逆の
事態が進行しています。

(この項、続く)



(C)2001-2019 MIYAKE, Nobuyuki & Motosumiyoshi Church All rights reserved.