2017年06月04日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第70回「使徒言行録20章25〜35節」
(14/3/9)(その3)
(承前)

 もう一つは、「あなたがた自身の中からも、邪説を唱えて弟子たちを従わせ
ようとする者が現れる」です。これは、「異端」「分派」のことを明らかに
言っています。「異端」「分派」との戦いと言うか、「異端」「分派」との区
別、分化には、莫大なエネルギーが注ぎ込まれることが求められます。
 どちらも大変です。前者は獰猛であり、後者は「手強い」です。これに権力
の弾圧が加わったら、教会は一体どうなることでしょう。
 ところが、この「一体どうなることでしょう」の事態は現実のものとなりま
した。
 この事態に対して、おいて、パウロの勧告は、31節の「結」、「目を覚まし
ていなさい」だったのです。「目を覚ましていなさい」と言う言葉は、聖書の
どこにでも出てきそうな気がしますが、意外とそうでもありません。福音書中
の、イエスの神殿崩壊の予告の部分、マルコ13:34、35、37など、テサロニケ
一5:6、黙示録3:2、3、16:15など、終末について述べられている文脈に限られ
ています。
 教会は、そもそも神の国の教会ですから、日々終末と直面しています。よっ
て「監督」の仕事は、何よりも夜昼「目を覚ましていること」だったのです。
大変ではありますが、多くの「監督」は、この仕事を成し遂げ、そして、今の
教会があることを、わたしたちは忘れてはなりません。
 ここでは終末の出来事はまだですが、それに備えることが求められているの
です。私たちも終末への備えを怠らぬようにいたしましよう。
 32節以下は、別のテーマですので、次回に回すことといたします。

(この項、完)


第71回「使徒言行録20章32〜38節」
(14/3/16)(その1)

32節「そして今、神とその恵みの言葉とにあなたがたを委ねます。この言葉は、
あなたがたを造り上げ、聖なる者とされたすべての人々と共に恵みを受け継が
せることができるのです。」

 今、パウロのエルサレム行を目前に控え、ミレトスで、エフェソの教会の長
老たちを前にして、パウロの訣別説教が行われているところです。
前々回のところで、パウロはイエスに倣う者であること、キリストに倣って
「王の凱旋」をもってエルサレム入城をしようとしていることを明らかにしま
した。
 王ならぬパウロが、なぜ、「王の凱旋なのか」という点については、今まで
にも説明してきましたが、それは、イエスが救いの業を完成されたように、パ
ウロは異邦人伝道という、神の救済の歴史の時代を画する大事業を成し遂げた
からです。まだ、ローマ行は残っていますが、パウロにとっては、エルサレム
行は天への凱旋の入口でもあるのです。
 となると、次に、イエスの訣別説教の場合と同様に、残された弟子たちに課
題を与えねばなりません。
 イエスの訣別説教の場合には、派遣命令があります。「あなたがたが出かけ
て行って実を結び、その実が残るようにと、また、わたしの名によって父に願
うものは何でも与えられるようにと、私があなたがたを任命したのである
(15:16)」とあるように、イエスの証人としての役割を割り振りました。
 パウロの場合には、これが先週学んだところですが、教会の「長老(プレス
ビュテロイ)」たちに、長老としての職務だけでなく、「監督(エピスコポイ)」
としての職務を与えました。年長者としての職務だけでなく、霊的な指導もし
てください、という訳です。
 更に次へまいりまして、イエスそしてパウロが弟子たちに使命を与えるのに
は、理由があったということです。
 イエスの場合、迫害(ヨハネ15:18以下)です。これは、ヨハネによる福音書
全編から推測するに、ユダヤ教の迫害です。それゆえ、弟子たちは、イエスが
神から来られた方であることを否定するユダヤ人たちに、「イエスが神そのも
のであられることを証しなければならなりませんでした。
パウロの場合には、これは先週の最後のところで触れました。教会がもうすで
に出来上がっている時代のことですから、今の教会と変 わりはありません。
教会の中に外から入り込んで教会の組織を破壊しようとする教師、教会の中か
ら起こってくる「異端」「分派」との戦いです。監督には、これらと戦う使命
が課せられているのです。
 さて、そこでやっとここから今日のテーマに入っていきます。イエスがいな
いところで、そしてパウロがいないところで、弟子たち、そして「長老(プレ
スビュテロイ)」たち、「監督(エピスコポイ)」たちは、その厳しい戦いを戦っ
ていかねばならないのですが、どうやってそのような戦いを戦うことができる
か、と言うことです。同手しても「助け」が必要です。

(この項、続く)



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