2017年02月26日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第65回「使徒言行録19章28〜40節」
(14/2/2)(その1)

28〜32節「これを聞いた人々はひどく腹を立て、『エフェソ人のアルテミスは
偉い方』と叫びだした。そして、町中が混乱してしまった。彼らは、パウロの
同行者であるマケドニア人ガイオとアリスタルコを捕らえ、一団となって野外
劇場になだれ込んだ。パウロは群衆の中へ入っていこうとしたが、弟子たちは
そうさせなかった。他方、パウロの友人でアジア州の祭儀をつかさどる高官た
ちも、パウロに使いをやって、劇場に入らないようにと頼んだ。さて、群衆は
あれやこれやとわめき立てた。集会は混乱するだけで、大多数の者は何のため
に集まったのかさえ分からなかった。」

 第3伝道旅行における、パウロのエフェソでの働きについて学んでいます。
パウロのエフェソでの2年3か月に及ぶ伝道の最大の成果は何でしょうか。一
見、宣教が、アジア州で主の福音を聞かない人が一人もいないくらい(10節)、
進展したこと、と考える、受け止める人が多いことと思います。
 しかしそうではありません。コリント教会問題の解決です。
コリント教会は、パウロの異邦人伝道の実です。シナゴグから完全に独立した、
これこそ純粋に「キリスト教会である」と言える、初めての教会です。
 ところがこの教会はできたばっかりなのに、私たちの教会も「全く同じ」体
験をしてきましたが、真の主イエス・キリストによって偶像礼拝から解放され
たはずなのに、再び偶像礼拝時代と「全く同じ」ことをやり始めました。派閥
争いと淫行です。
 そればかりではありません。パウロの使徒としての権威の否定まで始めまし
た。主イエスは使徒に福音宣教の使命とそして権威とをお与えになったのです
から、使徒としての権威の否定はキリスト教そのものの否定です。
 コリント教会はキリスト教の、異邦人伝道の麗しき果実であったはずが、
あっという間に内部から腐りはじめ、悪臭を放つようになってしまったのです。
 異邦人伝道は、いやキリスト教の福音宣教自体がここで終止符を打たれかね
ない危機に直面したのです。一歩間違えば、キリスト教は、過去の歴史の遺物
になってしまったのです。そうなれば、もちろん、使徒言行録も未完のまま闇
に葬り去られることとなったことでしょう。
 使徒言行録の著者は、黙って、かたずをのんで事の成り行きを見守るしかあ
りませんでした。これが、エフェソにおける、パウロとコリント教会のやり取
りに、使徒言行録が一切触れず、沈黙せざるを得なかった理由です。
 しかし、コリント教会問題は、コリント教会の「悔い改め」によって解決し
ました。ここに至るまでには、パウロの「キリストに倣った」とりなしの苦難
がありました。コリントの信徒への手紙一と二は、実は「第五の福音書」とも
言える内容を持ったものなのです。キリストに倣う者も、キリストの苦難の執
り成しの業の一端を担わざるを得ないのです。
 コリント教会問題の解決を待って、使徒言行録は再開されました。異邦人伝
道は、その第一の目的地、ローマへ到達するまで続けられねばなりません。エ
フェソ教会における、異邦人伝道における第一のテーマである、偶像礼拝から
の解放の戦いも続けられねばなりません。
 ところで、偶像礼拝からの解放を言うからには、異教との対決を避けるわけ
にはいきません。21節から40節の物語は、今までも取り上げられることはあり
ましたが、異教との対決を初めて本格的に取り上げた物語です。
 先週は、21節から27節の前半部分を読みました。振り返っておきましょう。
異教社会で、偶像礼拝からの解放を宣べ伝えるとき、必ず起こることが、迫害
です。この物語は、迫害がいかにして起こるか、時代を超えた知識をわたした
ちに提供してくれます。
 まず、最初に迫害を引き起こすのは、異教の祭司ではありません。異教に
よって利権を得ていた業者です。第1段階の迫害は「経済」から始まるのです。
 エフェソでもそうでした。デメトリオという銀細工職人が、アルテミス神殿
の模型を作って、おそらく、日本で言う「ご仏壇」「神棚」のようなものだと
思われますが、生計を立てていました。パウロの宣教が広まるにつれ、アルテ
ミス神殿への参拝者が、たとえわずかであったとしても減り、アルテミス神殿
の模型の売り上げが減る、という事態があったのでしょう。これはパウロのせ
いである、このままでは自分も同業者も失業してしまうかもしれない、という
危機感から、立ち上がるわけです。

(この項、続く)



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