2017年02月19日
〔使徒言行録連続講解説教〕
第64回「使徒言行録19章23〜27節」
(14/1/26)(その2)
(承前)
「パウロとコリント教会との関係」については、その後コリントの信徒への
手紙二のかなりの部分が書かれ、そしてテトスが派遣されて、パウロとの間に
和解が成立しました。つまり、キリストとの和解が成立したのです。キリスト
の出来事がここで再現されたのです。
そして、使徒言行録は再開されました。教会の活動の記録、そして異邦人伝
道の記録を再び取り始めたのです。
さて、再開された使徒言行録は、コリント問題を非常に重くにないつつある
その間の出来事として、一つのエピソードを取り上げております。テーマは偶
像礼拝にいかに対応するか、です。異邦人伝道は続けられねばなりません。本
日は「出来事」のみについて触れてまいりましょう。
24〜27節「そのいきさつは次のとおりである。デメトリオという銀細工師が、
アルテミスの神殿の模型を銀で造り、職人たちにかなり利益を得させていた。
彼は、職人たちや同じような仕事をしている者たちを集めて言った。『諸君、
ご承知のように、この仕事のお陰で、我々は儲けているのだが、諸君が見聞き
しているとおり、あのパウロは「手で造ったものなどは神ではない」と言って、
エフェソばかりでなくアジア州のほとんど全地域で、多くの人を説き伏せ、た
ぶらかしている。これでは、我々の仕事の評判が悪くなってしまう恐れがある
ばかりでなく、偉大な女神アルテミスの神殿もないがしろにされ、アジア州全
体、全世界があがめるこの女神の御威光さえも失われてしまうだろう。』」
パウロの第2伝道旅行以来のローマ伝道のテーマは以下のものでした。第一
は、偶像礼拝からの解放、第二は、第一と関連しますが、偶像礼拝に関連して、
「霊」に取りつかれている人、この「霊」は、その人の自由を奪う、という意
味において「悪霊」ですが、その人への「悪霊祓い」、そして第三に、もとも
と持っていらした「カミ(大いなるもの)への畏れ」を言わば「窓口」として、
主イエスを信じる信仰へと導くこと、そして第四は、伝道の手続きの問題です
が、あくまでも「ローマの法」に則って伝道が進められるべきである、という
ことでした。ギリシア伝道、すなわちローマ伝道、それは多神教に生きる世界
への伝道であったのですが、は、偶像礼拝からの解放をもっとも大きな課題と
していたのです。
このエピソードは、19:11以下のエピソードと同じく、パウロが、エフェソ
での伝道において、偶像礼拝からの解放を第一のテーマとしていたことを明ら
かにします。一生懸命伝道したことと思います。ゆえに偶像礼拝、アルテミス
という現地の神を拝む人が減ったのです。偶像礼拝から解放されるチャンスが
増えるので、これはいいことです。
が、アルテミス神殿で利権を得ている人にとっては、これはたまりません。
パウロの宣教を捏造して悪く言い、群衆を扇動して迫害しよう、とします。今
の日本でも起こりそうな出来事です。
まず「悪く」ですが、パウロは「手で造ったものなどは神ではない」は言っ
たかもしれませんが、彼の中心メッセージではありません。なぜなら、偶像批
判は、日本のあほ宗教を除いてどの宗教も取り組んできたことです。ここは、
自分に都合の悪いことをキリスト教のせいにしているのです。
もう一つ26節、翻訳は「説き伏せ」と訳していますが、原文は「改宗させ」
です。(メーシステーミ)キリスト教が勢力を増やそうとしている、との批判で
す。が、キリスト教は勢力を伸ばそうとしているのではなく、人々が偶像礼拝
から自由になることを目指しているのです。
すなわち、「女神の御威光さえも失われてしまう」と言って、今起こってい
るのは宗教戦争であるかのように、訴え、反感をあおっているのです。宣教活
動は世の救いをもたらすためのものであって、戦争ではありません。
このように、偶像礼拝からの解放を目指す異邦人伝道は、「偶像礼拝からの
解放」というテーマとかかわりのないところで、しばしば迫害を受けるのです。
しかし、この種の迫害は容易に乗り越えることができます。その点について
は、次回学びましょう。
パウロが注意するのは、偶像礼拝から解放されたにも拘わらず、偶像礼拝に
再び戻ってしまうことです。
私たちも、偶像から自由な生き方を目指してまいりましょう。
(この項、完)
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