2017年02月12日

〔使徒言行録連続講解説教〕

(14/1/26)(その1)

23節「そのころ、この道のことでただならぬ騒動が起こった。」

 私たちは、使徒言行録を読みながら、13章以降、キリスト教を世界に伝え、
キリスト教の教理を確立したパウロの足跡を辿っています。
 今、19章まで来まして、第3伝道旅行の途上、エフェソにおります。パウロ
のエフェソでの伝道は、2年3か月に及び、大成功を収めました。教会の支え
の下、学校の講堂で教える、という活動を通して、福音は広くアジア州中に伝
えられることとなったのです。
 しかしながら、パウロはエフェソ滞在中に、コリント教会で実にさまざまの
問題が起きていることを耳にして、それで自分がその問題解決のためにコリン
トに出向くことを決意しました。そして、その前にテモテとエラストを使者と
して、コリント教会の様子を探りに行かせました。そこまでが、先週取り上げ
ました21節から22節に記されていることです。
 ところが、ここから始まるパウロとコリント教会のやり取りについて、使徒
言行録が何も触れていない、何事もなかったかのように沈黙している、という
「使徒言行録最大のなぞ」に私たちは直面するのです。
 まず、パウロとコリント教会との間にやり取りがあったこと自体が使徒言行
録では触れられていません。21節、22節は、使徒言行録だけでは解釈、いや理
解不可能です。
 「アカイア州」という表現自体、あたかも「コリント」という名を使うこと
をさけているかのようであります。使徒言行録にとって、コリントの名はタ
ブーでさえあったのです。
 一方、私たちは、コリントの信徒への手紙一、二を通して、パウロとコリン
ト教会との間に大変密なやり取りがあり、しかも、問題は大変にこじれていた
ことを知っています。
 なのに、なぜ使徒言行録は、「パウロとコリント教会との関係」にふれてい
ないのでしょうか。私たちはまず「パウロとコリント教会との関係」について
きちんと知る必要があります。先週も触れましたが、もう一度振り返って見ま
しょう。
 パウロは、エフェソでコリントの教会内に派閥争いがあることを、クロエの
家の人から聞かされ、そしてコリントの信徒への手紙一を書きました。が、別
ルートから、コリント教会の人にみだらな(ポルノ=売春)行為があることを知り
、コリントの信徒への手紙一以前に手紙を書いています。それで、彼は手紙を
書くだけでは収まらず、テモテらに教会の様子を探りに行かせたのです。テモ
テが持ち帰った知らせは、おそらくかなり悪いものでした。コリント教会の
人々は偶像礼拝から解放されたはずなのに、元に戻ってしまっていたのです。
そこでパウロはさらにエフェソとコリントを往復する旅を行い、コリント教会
の人々を叱責しているのですね(Uコリント13:1)。加えて、「涙の手紙」とい
う涙ながらにコリント教会の人を責める手紙を書いています(Uコリント2:4、
7:8)。
 パウロとコリント教会との間には、ここまで、濃厚な、そして重大な関係が
あったのです。パウロにとって、コリント教会の問題は、本当に心配な問題で、
毎日胃が痛くなる思いで過ごしていたに違いありません。
 なのに、使徒言行録が「パウロとコリント教会との関係」について一切触れ
ない、大変に疑問なのですが、それについて私は、使徒言行録がコリント教会
の醜態を、「許しがたい罪」だと考えていたからだ、と解釈しました。これら
は、異邦人伝道にあってはならない事ゆえ、これらが克服されなければ、異邦
人伝道が終わってしまうので、使徒言行録としては成り行きを見守るしかな
かったのです
 しかし、実は、「パウロとコリント教会との関係」はもっと深刻なことに
なっていたのです。コリント教会の人々は、異教に逆戻りしていたばかりでは
なく、パウロの使徒としての権威の否定までしていたのです(Uコリント10〜
12章)。これはキリスト教の根幹にかかわることです。
 教会は、イエス・キリストがその福音を「使徒」に託したところから始まり
ました。それゆえ、それが否定されたら、イエス・キリストの福音が、教会そ
のものがなくなってしまいます。実は、異邦人伝道ばかりでなく、教会の歴史
が、つまり使徒言行録自体が、ここで「失敗」のうちに終わってしまう危機に
あったのです。
 教会は、この危機にどうやって対応したのでしょうか。それは、パウロ自身
が、聖霊の導きにより、キリストの苦しみをわが物として、執り成すことに
よってでした。あのパウロが「愚か者」になって、コリント機妖怪の人々の
「傲慢」の罪を一身に負い、執り成したのです。そして、コリント教会に福音
を回復させたのです。

(この項、続く)



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