2016年12月25日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第60回「使徒言行録19章1〜7節」
(13/12/29)(その3)
(承前)

 バプテスマのヨハネは、自分の洗礼を、「来るべき方」の洗礼を先取りする
ものと捉えていました。そして「来るべき方」の洗礼とは、「聖霊と火」によ
る洗礼です。よって、バプテスマのヨハネの洗礼を受けた上で、イエスを信じ
る者は、聖霊をいただくはずだったのです。
 4節でパウロが「ヨハネは、自分の後から来る方、つまりイエスを信じるよ
うにと、民に告げて、悔い改めの洗礼を授けたのです」と言っているのは、そ
ういう意味です。
 よって、ここでも、バプテスマのヨハネの洗礼をうけて、そしてイエスを信
じたら、それでも当然聖霊を受けるはずでして、この人々が「聖霊を知らない」
と言うのは、この人(々)について何が欠けていることになるでしょうか。それ
は、その人々が受けた「バプテスマのヨハネの洗礼」なるものが、「来るべき
方」の洗礼を先取りするものではなかった、ということでしかありえません。
「バプテスマのヨハネこそメシアである」と信じるグループの枠にとらわれて
いたのでしょう。
 さて、それでは、この人々が「聖霊を受け」て、真正のクリスチャンとなる
ためにはどうしたらよいでしょうか。再洗礼です。
 そこで彼らは主イエスの名によってもう一度洗礼を受けました。そして、そ
の洗礼の時、同時に、パウロが彼らの上に手を置くと、聖霊が降り、聖霊が
降ったしるしが示されました。それが「その人たちは異言を話したり、預言を
したりした」だったのです。そして、この人々、たまたま、「約」ではありま
すが12人でした、は聖霊を受け、もう一度、力強くクリスチャンとしての歩み
を始めたのです。
 アポロは、聖書研究を通して自力で「バプテスマのヨハネこそメシアである」
と信じるグループを抜け、抜けたばかりでなく枠を超えました。しかし、「バ
プテスマのヨハネこそメシアである」と信じるグループを抜けても、自力では、
その枠を超えられない人にとっては、「再洗礼」という新しい出発の道が必要
だったのです。
 そこまで厳密にする必要があるのだろうか、ともかく教会に来ているのだか
らそのままでいいではないか、とお思いのかたもいらっしゃる、と思います。
しかし、1節に「コリント」の名が出されているので、コリント教会の内紛が
意識されている、と思いますが、厳しい内部対立を克服するためには、信仰の
原点、どうしても譲れない点を皆でもう一度確認しなければならないのです。
そしてその上で教会の真の一致を図らなければ、迫害の時代をとうてい耐え抜
いていくことはできません。パウロは、そして、使徒言行録は、これから来る
べき迫害の時代に目を向け、備えています。

(この項、完)


第61回「使徒言行録19章8〜10節」
(14/1/5)(その1)

8節〜10節「パウロは会堂に入って、3か月間、神の国のことについて大胆に
論じ、人々を説得しようとした。しかしある者たちが、かたくなで信じようと
はせず、会衆の前でこの道を非難したので、パウロは彼らから離れ、弟子たち
をも退かせ、ティラノという人の講堂で毎日論じていた。このようなことが二
年も続いたので、アジア州に住む者は、ユダヤ人であれギリシア人であれ、だ
れもが主の言葉を聞くことになった。」

 パウロの第三伝道旅行の続きです。パウロの第三伝道旅行そのものを振り
返って見ますと、パウロはアンティオキアを出発し、ガラテヤとフリギアの地
方を回り、そして、エフェソに到着しました。そして、いよいよエフェソ伝道
を開始する、というそういう場面に今います。
 そして、もしも皆さんが今日の記事だけをお読みになったとしたら、「パウ
ロはエフェソへ到着し、いつものようにまずシナゴグで伝道し、いつものよう
にそこから追い出されて、キリスト教会を形成し、多くの人々に伝道した」と
いう記事を読んで、「ああ、またか」、つまりパウロが新しい伝道地に入った
ときのパターンを確認して、「エフェソにも教会ができた」ことを確認して、
それで終わってしまうしょう。
 しかし、エフェソ伝道はそれほど単純ではないのです。まず第一に、パウロ
がエフェソへ来たのは、今回が初めてではない、ということです。
 18:19によれば、パウロは第2伝道旅行からの帰途にエフェソに立ち寄りまし
た。そして、シナゴグでの伝道にすぐに着手しました。そればかりでなく、
18:20、21によれば、シナゴグのユダヤ人たちと「別れを惜しむ」ほどの間柄
になった、とされています。だとしたら、その「ユダヤ人との親しい関係」は
その後どうなったのでしょうか。

(この項、続く)



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