2016年12月11日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第59回「使徒言行録18章24〜28節」
(13/12/15)(その3)
(承前)

 このように「聖書の学び」のみから、イエスにたどり着く人がいることは本
当に素晴らしいことです。しかし、教会の交わりを欠いた聖書の学びは、大き
な問題点を抱えていたことも確かです。それは、十字架と復活の主との出会い
の体験が欠落していた、ということでした。
 このアポロがエフェソのシナゴグでユダヤ人伝道を始めました。が、ここに
は教会の手助けがどうしても必要だったのです。

26節後半〜28節「これを聞いたプリスキラとアキラは、彼を招いて、もっと正
確に神の道を説明した。それから、アポロがアカイア州に渡ることを望んでい
たので、兄弟たちはアポロを励まし、かの地の弟子たちに彼を歓迎してくれる
ようにと手紙を書いた。アポロはそこへ着くと、既に恵みによって信じていた
人々を大いに助けた。彼が聖書に基づいて、メシアはイエスであると公然と立
証し、激しい語調でユダヤ人たちを説き伏せたからである。」

 パウロはエフェソ伝道に手を付けたばかりですが、エフェソにはこの時点で
すでに教会ないしは教会の「種」ができていたように思われます。プリスキラ
とアキラの伝道と牧会の働きによるものでしょう。
 プリスキラとアキラとが、シナゴグでアポロなる人物がキリスト教の伝道を
始めたことを聞きつけてシナゴグに行ってその話を聞いてみると、正確に教え
てはいたのですが、欠けている点があることに気づきました。その欠けている
点とは何でしょうか。それは、前後関係から、明らかに「イエスの十字架と復
活の体験(そしてその継承、すなわち聖餐の業)」です。そこでプリスキラとア
キラとは、彼を「脇へ引き寄せ、」もっと正確に、つまり教会の伝承をきちん
と伝授したのです。「招いて」と訳されている語、原語は「パラランバノー」
です。マルコ8:26、ペトロが受難予告をしたイエスをいさめようとした場面で
用いられています。プリスキラとアキラとは、アポロを、少なくとも教会にお
いては、弟子として指導したのです。
 こうして真のキリスト教会の伝道者として立つことができたアポロは、今度
は教会によって送り出されて、アカイア州、すなわち、コリント教会での伝道
に従事することとなりました。しかし、いかに有能であっても、キリスト教会
の伝道者としては未熟であったアポロのその未熟さが、コリント教会に混乱を
もたらした一因であったことを、ルカは見過ごしませんでした。次回はその混
乱の一端とそれへのパウロの対応について、使徒言行録の角度から取り上げる
ことといたしましょう。
 いずれにせよ、聖書の学びはイエスのメッセージに行き着くことは確かです。
が、教会の指導なしには、それは未完成のままであるということも忘れてはな
りません。


第60回「使徒言行録19章1〜7節」
(13/12/29)(その1)

1節「アポロがコリントにいたときのことである。」

間にクリスマスが入りましたので、位置の確認が必要です。
パウロの第三伝道旅行の記録です。パウロはアンティオキアを出発し、ガラテ
ヤとフリギアの地方を回りました。その次にどこに現れるのかな、と思いまし
たら、どうやらエフェソに来ていたようです。今日の記事は、パウロがエフェ
ソで体験した出来事です。
 ところが、本来でしたら「パウロは内陸の地方を通ってエフェソに下って来
て」という記述から物語が始まるべきところ、「アポロがコリントにいたとき
のことである」という、一見パウロと関係のないかのように思われる一文から、
この物語は始まっています。どうも、今日の物語はパウロだけではなく、アポ
ロにも関連していそうです。どこがどう関連するのか確認するためにも、アポ
ロとは何者なのか、エフェソでアポロに関して何が起こったのか、前回を振り
返るところから話を始めてまいりましよう。
 パウロが、第三伝道旅行の一環としてエフェソに来る前に、エフェソにアポ
ロなる伝道者が突然現れました。彼は、シナゴグでユダヤ人相手にイエスがメ
シアであることを熱心に教え始めました。それで、その評判を聞いて、当時エ
フェソの教会を守っていたプリスキラとアキラとが、シナゴグに聞きに行った
のだ、と思われます。すると、アポロは、聖書(旧約聖書)に基づいて、正しく
教えてはいるのですが、何かが抜けている、ということに気づきました。そこ
で、二人はアポロを脇へ引き寄せ、教え、「もっと正確に神の道を説明した」
ところ、アポロは「真正なる」キリスト教の伝道者として立つことができるよ
うになりました。以上が、エフェソでアポロ関連で起こった出来事です。

(この項、続く)



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