2016年03月20日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第43回「使徒言行録15章36〜40節」
(13/8/11)(その1)

36節「数日の後、パウロはバルナバに言った。『さあ、前に主の言葉を宣べ伝
えたすべての町へもう一度行って兄弟たちを訪問し、どのようにしているかを
見て来ようではないか。』」

 いよいよ、今日のテキストから、パウロの第2伝道旅行の記事が始まります。
パウロの伝道旅行の内、この第2伝道旅行こそが、パウロの、そしてその当時
の教会が、最も大きな成果を上げた異邦人伝道でした。しかし、この異邦人伝
道は、意外な出来事が発端となって始まったのです。今日はまずそこから入っ
て行くことといたしましょう。
 いわゆる「エルサレムの使徒会議」が終了しました。最も「使徒会議」とい
う語は聖書本文には一切登場しません。実質は「宗教裁判」でした。議題とい
うより、案件は「異邦人信徒に割礼を強制することの是非」でした。そして、
「異邦人信徒に割礼を強制しない」という決定、判決が成されたのです。
 これは、異邦人伝道という観点からすると、時代を画する画期的な判決です。
しかし、この判決には「指令」が付加されていました。そして、この指令は、
「要望」ではなく、実は、「偶像に供えて汚れた肉と、みだらな行いと、絞め
殺した動物の肉と、血とを避ける」という律法の一部を守るように、との「命
令」でした。
 アンティオキア教会に対して、判決結果の「伝達式」が執り行われました。
使者を二人派遣して、しかも「正式文書」を手渡す厳かなものでした。伝達の
内容についてですが、「異邦人信徒に割礼を強制しない」という判決ももちろ
ん伝えましたが、重点は「偶像に供えて汚れた肉と、みだらな行いと、絞め殺
した動物の肉と、血とを避ける」という律法を守るように、との「勧告」すな
わち「命令」にありました。
 この、福音に反する「命令」を、アンティオキア教会の人々はどのように受
け止めたのでしょうか?何と「励ましに満ちた決定」として喜んだのです。
「異邦人信徒に割礼を強制しない」との判決を喜んだのは当然のことです。が、
アンティオキア教会の人々が「励ましに満ちた決定として喜んだ」のは、「判
決」に対してではなく、「命令」に対してです。
 どうしてそんなことが起こりうるのか。そこに、この前の説教で「結論」と
して触れましたように、アンティオキア教会の人々の「知恵」があったのです。
「勧告」の原語は「パラクレ―シス」という語です。この語には「勧告」すな
わち「命令」という意味と、もう一つ「勇気づけ」という意味があります。エ
ルサレム教会が「命令」としてなした「勧告」を、アンティオキア教会の人々
は何と「勇気づけ」、すなわち「愛の業の勧め」として受け取ってしまったの
です。なんと素晴らしい「知恵」、そして「信仰」でしょうか。
 そして、ここから今日のテキストに入りますが、「割礼強制」のない異邦人
伝道が公認されたとはいえ、一部とは言っても「律法遵守」を強制されて、ア
ンティオキア教会は、異邦人伝道への意欲を著しくそがれた、異邦人伝道への
意欲に水を差されたのは確かです。第一次伝道旅行に際しては、あんなに熱心
にパウロとバルナバを送り出した教会の意欲が(13:1〜3)、テキストから見
るかぎり、全く感じられないのです。
 替わりに、新たな異邦人伝道への発案を行ったのは、パウロ個人でした。こ
こでのテキストで触れられていることではありませんが、私たちはすでにロー
マの信徒への手紙を通して、パウロが異邦人伝道に対して情熱だけでなく、確
かな「理念」をもっていたことを知っています。「情熱だけ」の人は、いった
ん逆風が吹くと、すぐにめげてしまいますが、「理念」のある人は、逆風の中
でこそ、確実な一歩を踏み出すことができます。
 パウロが36節で提案していることは「見舞」です。今、つまり逆風の中で、
最も大切なこと、どうしてもしなければならないことは、すでに信仰に入った
異邦人信徒の信仰を確かなものとすることなのです。
 パウロは、この提案を同志であるバルナバにいたしますが、バルナバがその
提案にどのように反応したか、そしてその結果、どのようなことになったかを、
後半で見ていくことといたしましょう。

37〜41節「バルナバは、マルコと呼ばれるヨハネも連れて行きたいと思った。
しかしパウロは、前にパンフィリア州で自分たちから離れ、宣教に一緒に行か
なかったような者は、連れて行くべきではないと考えた。そこで、意見が激し
く衝突し、彼らはついに別行動をとるようになって、バルナバはマルコを連れ
てキプロス島へ向かって船出したが、一方、パウロはシラスを選び、兄弟たち
から主の恵みにゆだねられて出発した。そして、シリア州やキリキア州を回っ
て教会を力づけた。」
 まず、第1の問題です。バルナバはパウロの提案に賛成だったのでしょうか?
 賛成ではなかったのでしょうか?

(この項、続く)



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