2015年11月01日
〔使徒言行録連続講解説教〕
第34回「使徒言行録13章1〜12節」
(13/6/9)(その1)
最初に、前回積み残した12:24〜25に触れておきましょう。
12:24〜25「神の言葉はますます栄え、広がって行った。バルナバとサウロは
エルサレムのための任務を果たし、マルコと呼ばれるヨハネを連れて帰って
行った。」
三回にわたって、ヘロデ・アグリッパによってエルサレム教会に対してなさ
れた迫害について触れてきました。国家権力による迫害は怖いもので、いきな
り、あの、多少いかれポンチではありますが、愛すべきヤコブが殺されてしま
いました。しかし、教会は、そのことを嘆き悲しんでいる暇もなく、続けてペ
トロも見せしめの刑にさらされんがために獄中にて厳重な監視下にある、とい
う、存亡の危機に直面するのであります。教会員は、ペトロの無事もそうです
けれども、なんとしても教会がこの危機を乗り越えられるように、と祈ったこ
とでしょう。
ところが、神様は教会を見捨ててはおかれませんでした。思いもかけない、
ペトロの解放がありました。そればかりか、あの迫害者、ヘロデ・アグリッパ
王が蛆にかまれて急死する、という思いもかけない事態の展開によって、教会
も完全に守られたのでした。
しかし、この一連の出来事を、神様は教会を守るためなら何でもしてくださ
る、と受け止めたとしたら、それはとんでもない間違いです。神は、ヘロデ・
アグリッパに罰を加えられることにより、ご自身がこの世界の本当の支配者で
あられることをお示しになられたのでした。教会も、それたらいけません。使
徒言行録の時代にはそのような事態に至ることはありませんでしたが、教会が
道を外れたとき、そこにはやはり裁きが用意されていることを忘れてはなりま
せん。
が、御心に適う教会は、神の奇跡的な守りの下、異邦人伝道にまい進するこ
ととなりました。しかし、異邦人伝道の主たる担い手は、アンティオキアの教
会です。25節以降、もう一度アンティオキア教会に焦点が合わせらせることと
なります。そこで、話は一旦11:30に戻ります。ユダヤ地方で飢饉があった際、
アンティオキア教会がエルサレム教会に援助の手を差し伸べ、「援助の品」を
バルナバとサウロがエルサレム教会へ届けました。その二人が、アンティオキ
ア教会に帰ったところから、次の物語が始まります。
13:1〜3「アンティオキアでは、そこの教会にバルナバ、ニゲルと呼ばれるシ
メオン、キレネ人のルキオ、領主ヘロデと一緒に育ったマナエン、サウロなど、
預言する者や教師たちがいた。彼らが主を礼拝し、断食していると、聖霊が告
げた。『さあ、バルナバとサウロをわたしのために選び出しなさい。わたしが
前もって二人に決めておいた仕事に当たらせるために。』そこで、彼らは断食
して祈り、二人の上に手を置いて出発させた。」
ここから、いわゆる「パウロの第一伝道旅行」となります。しかし、その前
に、わたしたちはどうしても使徒言行録8章、9章を思い起こさないわけには
いかないのです。つまり、今日の出来事に至るためには、教会には長い準備の
時が必要でした。その準備の中で、教会は異邦人伝道の3つの原則を学び取っ
たのです。第一は、使徒の権威が確立していることが必要であること。第二は、
福音をユダヤ人に対してばかりでなく、ユダヤ教の伝統を踏まえてさらに異邦
人に語ることのできる伝道者の必要であること。そして第三は、異邦人伝道に
当たっては、何よりも、イエス・キリストご自身が示され、語られる必要があ
ることでした。そこで、その三つの内の第一の原則が、まず確立されねばなり
ません。そこで、アンティオキア教会は異邦人伝道に、バルナバとサウロを遣
わすに当たり、二人に「使徒の権威」を付与することといたしました。それが
13章1〜3節の物語なのです。
しかし、12使徒、イエス・キリストから直接、神の国の教会の責任者として
世界伝道の使命を与えられた十二人の一人もいないアンティオキア教会がどう
して、使徒の権威を授けることができるのでしょうか。そこで、伝道者を立て
る以前に教会に、「預言する者や教師たち」五人が立てられることとなったの
です。ここで言う「預言」は旧約聖書で言う「預言」とは異なります。聖霊に
満たされて神の言葉を伝えるのです。しかも伝えられる言葉は「主の教え」と
して伝えられますので、彼らは同時に「教師」でもあったのです。
彼らは断食して礼拝を守っていました。断食は、主イエスがマルコ2:18〜20
で禁じられた業ですが、十字架の死を覚えて教会は断食を行っていたのです。
今の聖餐式に当たる、と私は考えています。すると、主のご隣在の下に、聖霊
がこの5人のうちの誰かの口を通して働いて、主がバルナバとサウロを、異邦
人伝道の使命に任じたのでした。
教会は二人を「任じた」だけではなく、「按手礼」を行って二人を任地へと
送り出したのでした。6:6と同じく、彼らに使徒の権威が付与されたことを確
認するためでした。
(この項、続く)
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