2015年07月05日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第25回「使徒言行録9章32〜43節」
(13/3/10)(その3)
(承前)

 「クリスチャン(イエスを信ずる者)」とは、イエスにおいて、イエスの十字
架と復活において、よみがえりの命、永遠の命への道が開かれたことを受け止
めた者のことです。そこで、「クリスチャン(イエスを信ずる者)」に対して、
イエス・キリストの名によって、使徒たちによって「死者の蘇生の奇跡」が行
われることによって、「本当にそうなのだ」、「イエスは、よみがえりの命、
永遠の命の与え主なのだ」ということが確認されたのです。
 異邦人世界において、教会が徳を示すことが出来たなら、これは、大きな伝
道の推進力となることでしょう。しかし、現実はそうではありません。では
「クリスチャン(イエスを信ずる者)」は、何を誇りとすることができるので
しょうか。それは、十字架と復活の主です。そして、それしかありません。が、
この十字架と復活の主を信じることにおいて、「クリスチャン(イエスを信ず
る者)」には、よみがえりの命、永遠の命に至る道が示されているのです。こ
れこそ、そしてこれだけが教会の誇りです。ペトロら、使徒たちには、異邦人
伝道に当たって、十字架と復活の主を伝えることだけが、復活の証人としての
働きをすることだけが求められていました。ペトロは、ヤッファでの出来事で、
この事を習得したのではないでしょうか。
 私たち、今の教会も当時の教会と同じく、示すべき徳を持っていません。徳
をもっていないどころか、抱えきれないほど大きな問題の中にあえいでいます。
しかし、私たちにも、十字架と復活の主を伝えることが赦されています。その
ことを覚え、感謝のうちに歩んでまいりましょう。

(この項、完)


第26回「使徒言行録10章1〜33節」
(13/3/17)(その1)

 たびたび申し上げているように、異邦人伝道が、使徒言行録のテーマです。
そして、前回申し上げたように、教会が本当に異邦人世界に入っていって伝道
を開始するのは、13章のアンティオキア教会によるキプロス伝道が最初です。
それまで、準備の時を過ごしています。
 いろいろな準備がありました。これも前回申し上げたとおり、異邦人伝道に
当たっては、特に、とりわけ、使徒の権威が確立していることが必要であるこ
と、また、福音をユダヤ人に対してばかりでなく、ユダヤ教の伝統を踏まえて
さらに異邦人に語ることのできる伝道者の必要であること、そして、異邦人伝
道に当たっては、何よりも、イエス・キリストご自身が示され、語られる必要
があること、でした。
 以上三点ですが、どれも大変に重要なことです。しかし、それは整い、以上
これで異邦人伝道への準備は万端なのではないでしょうか。が、私たちはここ
で肝心のエルサレム教会のリーダーたちの心が、異邦人に実はまだ開かれてい
ない、という事実を思い起こさざるを得ないのです。使徒たちは、「ユダヤと
サマリアの全土で、また地の果てに至るまで、わたしの証人となる(1:8)」こ
とが求められました。しかし、使徒たちは、8章にあったようにサマリアに対
してでさえ、まして地の果ての人々には、「この人々もまた神の愛したもう民
である」という認識が欠落していたのです。このままでは、異邦人伝道におい
て、いくら有能な伝道者が出て、すばらしい成果を挙げたとしても、それは、
単なる偶発的事件で終わってしまいます。
 異邦人伝道は、神の救いのご計画のうちに打ち立てられた教会のわざとして、
神の救いの歴史の中の出来事となって行かねばなりません。そのために、いき
なり完全に、は無理としても、エルサレム教会の使徒たちの心がなんとしてで
も開かれて行かねばなりません。そこで神は、エルサレム教会のリーダーの一
人であるペトロを用いて、エルサレム教会が、異邦人に、異邦人伝道に心開か
れるきっかけとなる出来事を用意されました。それが、今日のテキストの出来
事、その結末をも含めると11:18まで続く物語の「主旨」なのです。
 まず、エルサレム教会の人々から見て、典型的な「異邦人」が用意されねば
なりません。エルサレムの人々にとって「異邦人」と言えばまずローマ人でし
た。そこで典型的なローマ人、ローマの百人隊長が登場します。10:1〜9は、
その人物についての描写です。

10:1〜9「さて、カイサリアにコルネリウスという人がいた。『イタリア隊』
と呼ばれる部隊の百人隊長で、信仰心あつく、一家そろって神を畏れ、民に多
くの施しをし、たえず神に祈っていた。ある日の午後3時ごろ、コルネリウス
は、神の天使が入って来て「コルネリウス」と呼びかけるのを幻ではっきりと
見た。彼は天使を見つめていたが、怖くなって、「主よ、何でしょうか」と
言った。すると、天使は言った。「あなたの祈りと施しは、神の前に届き、覚
えられた。今、ヤッファへ人を送って、ペトロと呼ばれるシモンを招きなさい。
その人は、革なめし職人シモンという人の客になっている。シモンの家は海岸
にある。」天使がこう話して立ち去ると、コルネリウスは二人の召し使いと、
側近の部下で信仰心のあつい一人の兵士とを呼び、すべてのことを話してヤッ
ファに送った。」

(この項、続く)



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