2015年01月25日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第14回「使徒言行録6章1〜7節」
  (12/12/9)(その3)
(承前)

 悔い改めのあるところ、神は必ず実りを与えてくださいます。異邦人伝道は
まだまだですが、このセクションは、新しいタイプの改宗者が起こされるとこ
ろで閉じられることとなります。

7節「こうして、神の言葉はますます広まり、弟子の数はエルサレムで非常に
増えていき、祭司も大勢この信仰に入った。」

 例によっての、「ルカの大げさ」を差し引いて、の話ですが、祭司の中でも
教会に加わる人が出た、とのことです。祭司階級とは言っても、イエス裁判を
主導した上流階級の祭司とは考えられません。が、それでも、ずいぶん改宗者
の巾が広がったものです。使徒たちのかたくなな心が打ち砕かれていくに従っ
て、逆に新たな改宗者が与えられ、福音宣教が進展していくのです。人間世界
の商売の常識とは全く逆に…。

(この項、完)


第15回「使徒言行録6章8〜15節」
  (12/12/16)(その1)

8節「ステファノは恵みと力に満ち、すばらしい不思議な業としるしを民衆の
間で行っていた。」

 先週の所から、初代教会の歩みは第二期に入りました。ルカはそのように考
えています。第一期と第二期との違いは何か。それは、「食事係」が決められ
て、教会制度が始まった、ということに止まるものではありません。「異邦人
伝道」という、教会の本来の使命に、教会は、第二期よりいよいよ乗り出すこ
ととなるのです。しかし、実際の異邦人伝道はまだまだです。その前に、教会
が異邦人伝道をなすにふさわしい教会に整えられていかねばなりません。とこ
ろが、実際の教会は、「異邦人伝道などまだまだ」の状況なのです。課題山積
です。前回の所では、教会の体質が問われました。教会内で差別、しかも、ユ
ダヤ系の信徒による、ギリシア系の信徒に対する差別があることが暴露されま
した。「異邦人伝道」にこれから取り組もうとする教会にあるまじき問題です。
異邦人伝道に取り組む以前に、まず自分たちが悔い改める必要があります。が、
実は、教会は先ほど述べた「組織改革」をもって、悔い改めの実を結ぶべく再
出発しました。初代教会は、謙虚でした。しかし、この問題への取り組みが始
まったばかりだというのに、教会は次の問題を抱えることとなりました。それ
は、ステファノの逮捕でした。彼の逮捕は、教会にとって計り知れない大きな
打撃でした。しかし、この事件が、教会が異邦人伝道へ本格的に乗り出すきっ
かけともなったのです。それではまず、ステファノの事件そのものを見ていき
ましょう。

8〜14節「ステファノは恵みと力に満ち、すばらしい不思議な業としるしを民
衆の間で行っていた。ところが、キレネとアレクサンドリアの出身者で、いわ
ゆる『解放された奴隷の会堂』に属する人々、またキリキア州とアジア州出身
の人々などのある者たちが立ち上がり、ステファノと議論した。しかし、彼が
知恵とW霊Wとによって語るので、歯が立たなかった。そこで、彼らは人々を
唆して、『わたしたちは、あの男がモーセと神を冒涜する言葉を吐くのを聞い
た』と言わせた。また、民衆、長老たち、律法学者たちを扇動してステファノ
を襲って捕らえ、最高法院に引いて行った。そして、偽証人を立てて、次のよ
うに訴えさせた。『この男は、この聖なる場所と律法をけなして、一向にやめ
ようとしません。わたしたちは、彼がこう言っているのを聞いています。「あ
のナザレの人イエスは、この場所を破壊し、モーセが我々に伝えた慣習を変え
るだろう。」』」

 さて、先ほども触れたように、この物語の主人公はステファノです。ステファ
ノは、ついこの間、教会の「食事係」に選ばれたばかりです。しかし、彼はた
だの食事係ではありませんでした。まず第一に「恵みと力に満ち、」第二に
「すばらしい不思議な業としるし」を民衆の間で行っていたのです。これらは、
どちらも使徒だけが行ってきたことです。(第一のものについては、4:33。第
二のものについては、2:43、5:12。) つまり、ステファノは、単なる食事係
ではなくて、使徒に準ずる者、いや、使徒と同等の権限を与えられた者だった
のです。異邦人伝道という新しい段階に踏み出した教会において、そのリーダー
は、もはやペトロを筆頭とする十二使徒ではありません。
まず最初のリーダーとされたのは、ステファノだったのです。
 このステファノをリーダーとする教会が、スタートした途端直面した困難が
迫害でした。しかも、リーダーのステファノが殉教する、という大変に厳しい
迫害でした。では、迫害は、いかなる経過をもってなされたのでしょうか。ま
ず第一に迫害者です。それは、意外にもエルサレム在住のユダヤ教徒ではあり
ませんでした。「キレネとアレクサンドリアの出身者で、いわゆる『解放され
た奴隷の会堂』に属する人々、またキリキア州とアジア州出身の人々」でした。
この人たちは、どのような人たちなのでしょうか。

(この項、続く)



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