2014年12月28日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第12回「使徒言行録5章12〜32節」
  (12/11/25)(その3)
(承前)
 しかし、その極めて困難な裁判に二つの助けが与えられました。一つは「天
使の介入」そしてもう一つは、たまたま使徒たちが皆で捕らえられたがゆえに、
逆に使徒たちが「一つとなったこと」です。神の導きとしかいいようがありま
せん。天使の介入に関しては、結局は使徒たちが裁判にかけられてしまったの
ですから、実は、どの程度の、どのような介入があったか極めて不確かです。
が、使徒たちにとっては確かに「あって、」その介入のお陰で、力関係では、
訴追者よりも優位に立つことさえできたのでした。さらに、今度はペトロ「一
人」で、つまり孤立して尋問されるのではありません。祈りの一致によって与
えられた連帯が、一人一人を支えたのです。
 この「力」の助けをもって、使徒たちはどのように尋問に対処したのでしょ
うか。

29〜32節「ペトロとほかの使徒たちは答えた。『人間に従うよりも、神に従わ
なくてはなりません。私たちの先祖の神は、あなたがたが木につけて殺したイ
エスを復活させられました。神はイスラエルを悔い改めさせ、その罪を赦すた
めに、この方を導き手とし、救い主として、ご自分の右に上げられました。わ
たしたちはこの事実の証人であり、また、神が御自分に従う人々にお与えになっ
た聖霊も、このことを証ししておられます。』」

 前回の裁判の時のペトロの答え、4:8-12、そこにはかなり、全部といってい
いほどルカの手が加わっておりましたが、それでもそれは、イエスへの信仰告
白と、そして結果的には、ユダヤ教当局者への告発に止まるものでした。しか
し、今回の使徒たちの答えは、そこを一歩踏み越えています。イエスの十字架
と復活が、ユダヤ人の悔い改めと罪の赦しのためであったことが、何と触れら
れているのです(31節)。パウロの贖罪論まであと一歩です。
 大きな試練を通して、使徒の信仰が少しずつ深められていったことが、この
答えに反映されています。私たちも、試練の中に「学び」があることに気づか
されてきまいりたいものです。

(この項、完)


第13回「使徒言行録5章33〜42節」
  (12/12/2)(その1)

33節「これを聞いた者たちは激しく怒り、使徒たちを殺そうと考えた。」

先週の続き、使徒たち全員のサンヒドリンにおける裁判の経過の続きです。
前回の裁判と異なり、「イエスの名によって語るな」との命令が出た後ですの
で、その命令違反が問われました。それに対して、ペトロを始めとする使徒た
ちは、この命令を無視する、堂々と違反することを宣言しました。理由は、
「人に従うよりも、神に従う、」イエスの宣教命令(使徒1:7)に従う、です。
ただし、前回裁判の時に主張されたユダヤ教当局者への責任追及は影を潜め、
代わりに「罪の赦し」が宣言されました。
 しかし、ユダヤ教当局者にとっては、その違いは全く問題ではありません。
あくまでも「命令違反」のカドで、死刑の判決を下す方向へと裁判は進みまし
た。しかし、ここで、思わぬ出来事が起こりました。「牢抜け」に続く、第二
の奇跡です。ガマリエルという人物の介入です。

34〜39節前半「ところが、民衆全体から尊敬されている律法の教師で、ファリ
サイ派に属するガマリエルという人が立って、使徒たちをしばらく外に出すよ
うに命じ、それから、議員たちにこう言った。『イスラエルの人たち、あの者
たちの取り扱いは慎重にしなさい。以前にもテウダが、自分が何か偉い者のよ
うに言って立ち上がり、その数四百人くらいの男が彼に従ったことがあった。
彼は殺され、従っていた者は皆散らされて、跡形もなくなった。その後、住民
登録の時、ガリラヤのユダが立ち上がり、民衆を率いて反乱を起こしたが、彼
も滅び、つき従った者も皆、ちりぢりにさせられた。そこで今、申し上げたい。
あの者たちから手を引きなさい。ほうっておくがよい。あの計画や行動が人間
から出たものなら、自滅するだろうし、神から出たものであれば、彼らを滅ぼ
すことはできない。もしかしたら、諸君は神に逆らう者となるかも知れないの
だ。』」
 議場の雰囲気としては、確信犯に対して厳罰をもって処そう、というもので
した。ところが、そこでガマリエルという議員が立って弁論を展開しました。
このことは、それまでのサンヒドリンの状況を考えると、まさに奇跡でした。
日本語聖書では、新共同訳でも協会訳でも「議場に立って」と訳していますが、
「サンヒドリンのガマリエルが立って」と訳せないこともありません。傍聴者
ではなくて議員の一人だったのでしょう。そして、ルカはここでこの人物の属
性について、「民衆全体から尊敬されている律法の教師で、ファリサイ派に属
する」と、いやに丁寧に説明しています。この説明から、「ルカは、ファリサ
イ派にある程度の好感をもっている」と受け止めることもできるかもしれませ
ん。

(この項、続く)



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