2014年08月24日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第3回「使徒言行録2章1〜13節」
  (12/9/9)(その3)
(承前)

 しかし、忘我状態になった使徒たちが、外国語を語った、というのはいった
いどうしたことなのでしょうか。これは、旧約聖書以来の伝統とは異なるので
はないでしょうか。
 実は、ルカのところに届いた資料においては、使徒たちが聖霊を受けたしる
しとして示されたことは、「異言を語るようになった」ということだったと考
えられるのです。
 「異言」とは何でしょうか。それは、コリントの信徒への手紙一14:2以下
で、パウロが詳しく説明していますが、聖霊を受けた時、人によってはこうい
うことも起こる、というしるしの一つです。忘我状態になるだけではなく、理
性は失われ、本人も分からない言葉で語りだします。神秘的な言葉ですので、
聞く人にも理解不能ですが、内容的には、神への賛美です。聖霊を受けた人が
すべてこうなる、という訳ではありません。人によっては、こういうしるしを
示す人もいる、ということです。
 実は、4節の「ほかの国々の言葉で語りだした、」と訳されている部分、
「まだ聞いたことのない異言を語りだした」と訳すこともでき、しかも、こち
らの方が本来の物語だったようなのです。ですから、そこから12節につながり、
ある人は、神の御言葉に畏れを抱き(12節)、ある人は、「フン」と言ってバ
カにした、ということです。聖霊が降ったしるしの一つとして、使徒たちが、
「異言を語りだした」、これが、この物語の中核です。
 ところが、ルカは、この「使徒たちが語った異言」が普通の異言と違って、
「わかりやすかった」、しかも、「外国から来た人にもわかりやすかった」と
言っているのです。それで、5〜11節の物語が付け加えられることとなりまし
た。第二の奇跡です。
 しかし、聖霊が降って、「外国語が話せるようになる」ということが、聖霊
が降ったしるしなのではありません。なぜなら、そのような出来事は、聖書の
他の箇所には、どこにも記されてはいないからです。あくまでも、使徒たちが
語った異言が、外国から来た人にもわかりやすかった、ということなのです。
 それでは、使徒たちの語った異言がどうして外国から来た人にもわかりやす
かったのでしょうか。実は、使徒たちには、異言を諸外国の人たちに分かりや
すく語る素地があったのです。ガリラヤは、ユダヤの一部でしたから、当時ガ
リラヤの人々は、日常言語としては、アラム語を話していました。そして、ア
ラム語はセム語に属します。ゆえに、アラム語を話す人は、セム語族の人々、
場合によっては、ハム語族の人々と会話ができるのです。
 さらに、ガリラヤは、長いギリシア支配の時代を経て、当時、ペンテコステ
の時代は、ローマの植民地となっていました。それゆえ、ガリラヤの人々は、
ギリシア語を強制されましたし、実際話せたのです。そして、ギリシア語は、
そのころまでは、ローマ帝国西半分では、共通語でした。ゆえに、彼ら、ガリ
ラヤの人々が語る言葉は、世界の人々に全然理解されないものではありません
でした。「わかりやすく」語られたことが奇跡だったのです。ちなみに、9〜
11節に示されている地域は、すべてローマ帝国の範囲内です。
 彼らのネイティブの言語だけでなく、植民地支配によって押し付けられた言
語も、神の奇跡のために用いられました。ここにも、神の偉大な力がローマ帝
国をはるかに凌ぐものである、という、ルカの、使徒言行録の隠されたメッ
セージがほのめかされているのではないでしょうか。
 いずれにせよ、聖霊は確かに降り、使徒たちは世界宣教への第一歩を踏み出
しました。

(この項、完)


〔使徒言行録連続講解説教〕
第4回「使徒言行録2章14〜36節」
  (12/9/16)(その1)

14節「すると、ペトロは十一人と共に立って、声を張り上げ、話し始めた。」

 先週は、使徒たちに聖霊が降る、という出来事が起こったことを学びました。
ルカが伝えるところによれば、この出来事は、風が吹いて来たり、大きな音が
したり、炎のようなものが現れるのが見えたり、使徒たちが異言を語りだした
り、大変不思議な現象を伴いました。しかし、それらの現象はすべて、神の霊
が降ったしるしです。使徒たちは、確かに聖霊のバプテスマを受け、新たな使
命へと遣わされていくのです。
 さて、使徒言行録では、神の手による大きな出来事が起こった後、それを使
徒の誰かが説教を持って解説する、という流れになっています。聖霊降臨の出
来事は、神のなしたもう大きな出来事でした。その出来事をペトロが、説教を
もって解説することとなりました。ペトロの説教が36節まで続きます。少し長
いものですが、今日は、そのペトロの説教をテキストとして取り上げます。
 ペトロの説教は、二つのテーマを取り上げています。一つは「聖霊降臨」そ
のものについて、もう一つは「イエス」についてです。最初に聖霊降臨につい
て、です。

(この項、続く)



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