2014年08月10日

〔使徒言行録連続講解説教〕

第2回「使徒言行録1章15〜26節」
  (12/9/2)(その2)
(承前)

 一方、ペトロを中心とした120人とはどのような集団だったのでしょうか。ペ
トロは復活の主に出会った弟子たちの代表です。赦されて、そして宣教の使命
を与えられた者たちです。120人とは、諸説ありますが、ユダヤ教の会堂成立の
最小単位のことでしょう。ゆえに、まだ聖霊のバプテスマを受けてはいません
が、まがいなりにも、「神の国の教会」の原型は成立していたのです。だとす
ると、「神の国の教会」として、「天国の鍵」の権限を行使することも許され
ていたはずです(マタイによる福音書16:19)。ゆえに、ユダに対して、「永久
破門」「永遠の呪い」を宣告することも可能だったのです。
 しかし、聖霊によって導かれた聖書の言葉に発つ教会は、そのような「処分」
をしませんでした。「その住まいは荒れ果てよ。そこに住む者はいなくなれ」
と、不正に得られた財産の凍結は宣告しましたが、「その務めは、他の人が引
き受けるがよい」として、実質的な処分は、使徒職の解任にとどめられました。
教会は、なぜこのような判断をしたのでしょうか。いや、聖霊は、なぜ教会を
このようなか判断へと導いたのでしょうか。それは、教会の使命が「裁き」に
あるのではなく、福音宣教にあるからです。「裁き」は終末の時に神がなさる
ことです。教会は、福音宣教に差支えがある限りにおいて、神の裁きに備えさ
せる。これが、教会に許された「裁き」の最大限なのではないでしょうか。
 私たちもこのことを畏れをもって受け止めたいものです。
 そこで次に、いよいよ使徒の欠員補充です。これはどのようにして行われた
のでしょうか。

21〜26節「『そこで、主イエスがわたしたちと共に生活されていた間、つまり、
ヨハネの洗礼のときから始まって、わたしたちを離れて上げられた日まで、い
つも一緒にいた者の中からだれか一人が、私たちに加わって、主の復活の証人
になるべきです。』そこで人々は、バルサバと呼ばれ、ユストともいうヨセフ
と、マティアの二人を立てて、次のように祈った。『すべての人の心をご存知
である主よ、この二人のうちのどちらをお選びになったかを、お示しください。
ユダが自分の行くべき所に行くために離れてしまった、使徒としてのこの任務
を継がせるためです。』二人のことでくじを引くと、マティアに当たったので、
この人が十一人の使徒の仲間に加えられることになった。」

 教会は、使徒の選任についてきわめて慎重な方法をとりました。まず、第一
段階として、「ヨハネの洗礼のときから始まって、わたしたちを離れて天に上
げられた日までいつも一緒にいた者」に候補の条件を絞りました。イエスの証
人、とりわけ復活の証人であることが、使徒であるための必須条件であるから
です。そして、その上で、教会は候補者を二人に絞りました。「バルサバと呼
ばれ、ユストともいうヨセフ」と「マティア」の二人です。が、教会は、たと
え生まれたての教会であるとしても、「神の国の教会」としての権限を与えら
れているのですから、何らかの方法で一人に絞り、つまり、決定、選任しても
よかったのです。しかし、教会はそうはしませんでした。旧約聖書の時代から、
神意を知るための一つの方法として用いられてきた「くじ(ヨナ書1:7)」
を用い、当たった「マティア」を使徒として選任したのです。「めでたし、め
でたし」で、これで、教会の体制も整い、聖霊のバプテスマを受ける体制も整
えられたはずでした。
 ところが、この選任は失敗だったようです。選ばれたマティアは、この後、
使徒としての働きが確認されていません。それが全くなかったのでしょう。一
方、選から漏れたバルサバと呼ばれ、ユストともいうヨセフ、本人の働きは記
録に残ってはいませんが、兄弟と思われる、バルサバと呼ばれるユダなる人物
が、使徒言行録15:22で、エルサレム教会からアンティオキア教会へ派遣された
使者の一人として、名が挙がっています。本人においても、善い働きがなされ
た、と推測されます。
 結局、「くじ」という方法が、神意を尋ねる方法としては、不適切だったの
です。教会の決定は、たとえどのような決定方法がとられたとしても、最終的
には、聖霊の導きを祈り求めることによって、正しい決定として認証されるの
です。これが、最初の教会の大きな失敗から、私たちが学ぶことができる教訓
なのではないでしょうか。
 使徒言行録の学びを通して、成功ばかりではなく、失敗の多い教会の歩みに
おいても、神が大いなる力を持って導いていてくださることを学んでまいりた
いものだ、と思います。

(この項、完)


第3回「使徒言行録2章1〜13節」
  (12/9/9)(その1)

 使徒言行録の序の部分は、先々週、そして先週の学びで終わり、いよいよ使
徒言行録の本体部分に入ってまいります。第2期の使徒の宣教の記録です。第
2期の最初の出来事は、使徒の受洗、聖霊のバプテスマです。ペンテコステの
出来事としてよく知られたものですが、早速物語に入っていくことといたしま
しょう。

(この項、続く)



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