2014年06月08日

〔ローマの信徒への手紙講解説教〕

第 53回「ローマの信徒への手紙16章1〜16節」
(12/7/22)(その2)
(承前)

 第二に、ここに挙げられている26人、ないしはそれ以上の信徒について、大
部分の人については、わたしたちは、この箇所に記された情報しか持っていま
せん。よって、その情報のみから、この教会がどこの教会であるか、を確定す
るのは至難の業です。しかし、プリスカとアキラについては、多くの情報があ
りますので、この二人について調べるところから、この教会の特定ができるの
ではないか、と考えられます。
 プリスカ(別名プリスキラ)と、その夫のアキラは、ユダヤ人クリスチャン
にして、異邦人伝道に携わってきた夫婦です。使徒言行録18章によれば、二人
はポントス州(小アジアの北部)出身のクリスチャンで、最初はローマで伝道
していました。ところが、クラウディウス帝によるユダヤ人のローマ市からの
追放令(これは紀元41年に出されました)にぶつかってしまい、コリントに避
難して来ていました。そして、そこで、第二伝道旅行中のパウロに出会い、共
に伝道しました。職業(天幕づくり)が同じだったのです。
 その後、二人はパウロと一緒にエフェソに行きました(使徒言行録18:18)。
パウロはここで二人と別れて、結局エルサレムへ赴くこととなりましたが、二
人はエフェソに残って、アポロとも協力して伝道しました(使徒言行録18:26)。
 二人はずっとエフェソに残ったようです。パウロが、第三伝道旅行の途次、
エフェソ滞在中に執筆したとされるコリントの信徒への手紙一の締めくくりで、
パウロは、「アキラとプリスカがその家に集まる教会の人々と共に、主におい
てあなたがたにくれぐれもよろしくとのことです(コリントの信徒への手紙一
16:19)」と言っています。
 さて、パウロのエフェソ滞在中に何らかのトラブルがあり、パウロは入獄す
ることとなった、と考えられます(フィリピの信徒への手紙)。そして、この
直後に書かれたと考えられるコリントの信徒への手紙二6:4〜5で、パウロは
「苦難、欠乏、行き詰まり、鞭打ち、監禁、暴動、労苦、不眠、飢餓」と、自
分が今までに出会った苦難をあげて、自分が「最近」苦難に会った事を匂わせ
ています。
 また、その後続けて書かれたコリントの信徒のへの手紙二11:23〜27でも、
今度はもっと具体的に、「苦労したことはずっと多く、投獄されたこともずっ
と多く、鞭打たれたことは比較できないほど多く、死ぬような目に遭ったこと
もたびたびでした。ユダヤ人から四十に一つ足りない鞭を受けたことが五度。
鞭で打たれたことが三度、石を投げつけられたことが一度、難船したことが三
度、一昼夜海上に漂ったこともありました。しばしば旅をし、川の難、盗賊の
難、同胞からの難、異邦人からの難、町での難、荒れ野での難、海上の難、偽
の兄弟たちからの難に遭い、苦労し、骨折って、しばしば眠らずにすごし、飢
え渇き、しばしば食べずにおり、寒さに凍え、裸でいたこともありました」と
述べています。
 もちろん、パウロは今までの経験を述べているのでしょうが、エフェソでも
パウロは自身の生命にかかわる厳しい状況に出会ったに相違ありません。その
パウロの命を「命がけで(原文は「首を差し出して」)」守ってくれたのがプ
リスカとアキラだったとパウロは16:4で言っているのです。プリスカとアキラ
には、パウロを守ったこと、即、異邦人伝道を守ったこと、とう意味で、異邦
人教会すべてが感謝すべきなのです。パウロは、プリスカとアキラを始めとし
て、ここにあげられた信徒一人一人に最大の賛辞を送っているのです。
 以上、ここにあげられた信徒一人一人は、エフェソ教会の信徒であり、そし
て、この部分は、本来は、エフェソ教会にあてて記された手紙の一部分であっ
た、ということは間違いありません。パウロが開拓した教会、という点でも一
致します。
 そこで最後に、そもそもはエフェソ教会にあてて書かれた手紙の断片が、な
ぜローマの信徒への手紙に添えられたのか、という問題を考えるため、「よろ
しく」の後半部分を読んでみることといたしましょう。

7〜16節「わたしの同胞で、一緒に捕らわれの身となったことのある、アンド
ロニコとユニアスによろしく。この二人は使徒たちの中で目立っており、わた
しより前にキリストを信じる者になりました。主に結ばれている愛するアンプ
リアトによろしく。わたしたちの協力者としてキリストに仕えているウルバノ、
および、わたしの愛するスキタスによろしく。真のキリスト信者アペレによろ
しく。アリストブロ家の人々によろしく。わたしの同胞ヘロデイオンによろし
く。ナルキソ家の中で主を信じている人々によろしく。主のために苦労して働
いているトリファイナとトリフォサによろしく。主のために非常に苦労した愛
するベルシスによろしく。主に結ばれている選ばれた者ルフォス、およびその
母によろしく。彼女はわたしにとっても母なのです。アシンクリト、フレゴン、
ヘルメス、パトロバ、ヘルマス、および彼らと一緒にいる兄弟たちによろしく。
フィロロゴとユリアに、ネレウスとその姉妹、またオリンパ、そして彼らと一
緒にいる聖なる者たち一同によろしく。あなたがたも、聖なる口づけによって
互いに挨拶を交わしなさい。キリストのすべての教会があなたがたによろしく
と言っています。」

(この項続く)



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