2014年05月04日

〔ローマの信徒への手紙講解説教〕

第 50回「ローマの信徒への手紙15章14〜21節」
(12/7/1)(その3)
(承前)

17〜20節「そこでわたしは、神のために働くことをキリスト・イエスによって
誇りに思っています。キリストがわたしを通して働かれたこと以外は、あえて
何も申しません。キリストは異邦人を神に従わせるために、わたしの言葉と行
いを通して、また、しるしや奇跡の力、神の霊の力を通して働かれました。こ
うしてわたしは、エルサレムからイリリコン州までめぐって、キリストの福音
をあまねく宣べ伝えました。このようにキリストの名がまだ知られていない所
で福音を告げ知らせようと、わたしは熱心に努めてきました。それは他人の築
いた土台の上に建てたりしないためです。」

 異邦人が礼拝を守るためには、どうしたらよいでしょうか。異邦人に礼拝を
守らせるためには、異邦人に福音を宣べ伝えることがまず第一です。それで、
彼は異邦人伝道に着手してきたのです。その方法は、「わたしの言葉と行いに
よって」、神の側から言えば、「しるしや奇跡の力、神の霊の力によって」福
音を宣べ伝えることでした。これは、通常の祭司の務め、特に公務員として公
式の儀礼に仕える祭司の務めとはかけ離れているように思えるかもしれません。
しかし、これこそ新しい祭司の務めなのです。それは、「神託を伝えて、人々
に神に仕えることを促す」というレビ族の祭司の仕事の原点に戻った、と言え
るかもしれません。
 18節後半のパウロの伝道した範囲については、しばしば大げさだ、という指
摘を受けます。実際彼は、エルサレムでは伝道していませんし、イリリコン州、
すなわちマケドニアの外側までは行っていません。なぜ、パウロは事実と反す
る報告をしたのでしょうか。それは、自分の仕事を過大評価しているわけでは
なく、異邦人全体が真の礼拝を献げるという、新しい時代の到来の第一歩を自
らの異邦人伝道によって踏み出した、という自覚から来るのでしょう。こうし
て、他人の築いた土台、ユダヤ教の土台の上ではなく、信仰の義によって、新
たな教会が形成されていくのであります。
 教会形成の現実は、実際には厳しいものです。むしろ、後退しているのでは
ないか、とも思われます。しかし、それにもかかわらず、ローマの教会も、
「異邦人が礼拝を献げる」新しい時代に位置付けられています。そのことを感
謝をもって受け止め、新たな前進をめざし、私たちも歩んでまいりましょう。

(この項、完)


第51回「ローマの信徒への手紙15章22〜29節」
(12/7/8)(その1)

22〜24節「こういう訳で、あなたがたのところに何度も行こうと思いながら、
妨げられてきました。しかし今は、もうこの地方に働く場所がなく、その上、
何年も前からあなたがたのところに行きたいと切望していたので、イスパニア
に行くとき、訪ねたいと思います。途中であなたがたに会い、まず、しばらく
の間でも、あなたがたと共にいる喜びを味わってから、イスパニアに向けて送
り出してもらいたいのです。」

 4週に渡って、教会内における「強い人」「弱い人」の問題、それは実は教
会内における異邦人とユダヤ人の問題であったのですが、にふれ、これをもっ
て、長い長いキリストの福音についての記述、すなわちそれは「信仰による義」
がいかに「律法による義」とは異なるかということでしたが、を終え、前回の
ところで、パウロはもう一度、自分の使命を確認しました。
 その使命とは何か、と言えば、それは「異邦人の祭司」という使命でした。
つまり、神の憐れみによって、自分自身を、生きた、聖なる、いけにえとして
献げる、新たな礼拝において、異邦人に自らを献げさせるのがパウロの仕事で
した。異邦人に自分自身を献げさせるためにはどうしたらよいでしょうか。ま
ず、異邦人伝道がなされなければなりません。それで、パウロは異邦人伝道に
努めてきました。前回のところはそこまででした。
 今日のテキストも、ただ今お読みした前半、22節〜24節は、前回の続きです。
先週のところでは、パウロはエルサレムからイリリコン州まで伝道した、と言っ
ていました。これらの地域は、ローマ帝国の東半分です。22〜24節でパウロは、
この東半分での伝道は、一区切りがついたから、これからは西半分、すなわち
ローマを経てイスパニアに行きたい、と言っているのです。実際には決して実
現することのなかったイスパニア伝道ですが、もしそれが実現すれば、帝国全
土への伝道がなされたこととなります。そしてそれがパウロの異邦人伝道の範
囲についての目標だったのです。
 が、その上で、異邦人を「生きた、聖なるいけにえとして献げさせる」とい
う、祭司本来の務めがあります。25節から、早速そのテーマに入っていくこと
となります。

(この項、続く)



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