2008年09月28日

『キリストを証し、福音の真理を示し
(日本基督教団信仰告白講解説教 3)

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 2章6〜16節

 (前略) そこで、私たちが「旧新約聖書はキリストを証し」と告白
するとき、私たちがキリストをどのような方として捉えているのか、
そのことが問われるのです。そうしますと、キリストはお一人の方
でいらっしゃいますが、その働きには二つの側面があることに私た
ちは気づくのです。

 第一は緊急の助け手としての側面です。神は旧約聖書の時代から
イスラエルの民を神の民として選ばれましたが、このイスラエルの
民は順調な歩みを歩んだわけではありませんでした。しばしば危機
に直面しました。その危機に際し、神は助け手を送られました。一
例をあげれば、イスラエルの民がエジプトで奴隷として苦しんでい
た時、神はモーセを解放者として遣わされ、モーセはまさに自らを
犠牲として、イスラエルの民をエジプトから解放させました。後の
時代、カナンの地に帰ったイスラエルの民が外敵から攻められた時、
神は士師たちを遣わされ、士師たちは自らを犠牲としてイスラエル
を守りました。そして先ほど触れた「主の僕」は、イスラエルの捕
囚の際に解放者として遣わされ、自らを犠牲として解放を成し遂げ
ました。イエス・キリストも、ファリサイ・サドカイといった宗教
指導者までもが罪に染まる時代にあって、贖い主として世に遣わさ
れ、自己犠牲をもって贖いの業を全うされ、まずイスラエルに救い
をもたらしました。

 神から遣わされ、、自らの犠牲をもって神の民を救うという点で
は、モーセも、士師も、主の僕も、キリストも同じです。だから、
キリストが体験なさった出来事と似た出来事が旧約聖書の中に記さ
れていて当然なのです。旧約聖書はキリストの出来事に似た出来事
に満ちていると言ってよい。しかし、先ほども述べたように似てい
るというだけでは、キリストを指し示していると考える(受け止める)
ことはできても、キリストを証していると断定することはできませ
ん。

 私たちはここで、キリストの働きのもう一つの側面に目を注がな
ければなりません。それは、神の国、神の支配の実現(到来)です。
神の国、神の支配とは、天地創造のときには確かにあった、神と被
造物、とりわけ人間とが、何の隔てもなく信頼関係の中に生きる、
そういう世界です。イスラエルの歴史は、別の角度から見ると、人
類の罪のために壊されてしまった神の国を再現しようという神の試
みの歴史でした。神は、神の民イスラエルを用いて、カナンの地に、
神の王国という形で神の国を実現しようとされました。が、それも
イスラエルの罪のゆえにはかなく消え去ってしまいました。そして、
その神の国の実現は、終末の時、神がすべてを完成させる時まで持
ち越されることとなってしまったのです。

 しかし、その神の国が来た、すでに来ていると宣言されて、イエ
スは宣教を開始されました。(マルコ1:15)そして、イエスは、神の
国とはこのようなものだ、と譬えを用いて解き明かされたばかりで
はなく、放蕩息子を招き、ザアカイを招き、重い皮膚病の人を癒し
て、神の国を実際に見せたのです。それゆえ、ヨハネ福音書が正し
く捉えているように、イエスご自身が神の国です。

 神の国では、真っ先に罪のゆるしが宣言されます。それゆえ、十
字架は神の国の始まりであり完成でした。ヨハネによる福音書19章
30節が、イエスが十字架上で「成し遂げられた」と言われたことを記
録しているのは、この神の国の完成を証しているからなのです。

 旧約聖書との関連で申しますと、旧約聖書にイエス・キリストの
名を直接に指し示すものがないにもかかわらず、旧約聖書全体を通
して待ち望まれた、神の国、神の支配がイエス・キリストにおいて
実現した、現実のものとなったと言うことができます。旧約聖書全
体がイエス・キリストを証しているのです。

 本日の旧約書、イザヤ書60章19〜21節は、イザヤ書53章と違って、
イエス・キリストの出来事を示唆、いや連想さえさせない聖書箇所
です。しかし、ここは、第三イザヤが終末に期待される神の国のあ
り様を預言したところとして、イエス・キリストによってもたらさ
れた神の国を、イエス・キリストを確かに証しているのです。

 旧新約聖書を通して、キリストを、キリストによってもたらされ
た、またキリストそのものである神の国を証された私たちはどうし
たらよいでしょうか。もちろん、その神の国、神の支配の喜びを十
分に味わうと共に、この喜びを今度は私たちが証する使命が与えら
れています。神の支配に与る喜びを少しでも伝えていきましょう。

(2008/09/28 三宅宣幸牧師)

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