『み心の天になるごとく、地にもなさせ
たまえ(問124)』
(ハイデルベルク信仰問答講解説教56)
主たる聖書テキスト: ローマの信徒への手紙 12章1〜12節
マタイによる福音書 16章21〜28節
(前略)しかし、その後も人類は悪の道に走ることをやめませんで
した。そこで、神がこの歴史に対してなされた第二の介入が、イエ
ス・キリスト(子なる神)のこの世への派遣だったのです。そこには、
神のどのようなご意志が表わされているのでしょうか。
それは、創造の時から一貫して貫かれている愛の意志です。一度
リセットして再出発がなされた、その世界です。そこに再び悪が蔓
延したとしたら、今度こそ見捨てられるのが普通でしょう。ところ
が、神はそちらの方の手段はお採りになられずに、その悪の根本原
因である罪の処理、すなわち救いの完成という道を選択されました。
が、そのためには、み子イエス・キリスト(子なる神)が地上に遣わ
され、しかも十字架に死ぬことが必要です。が、父なる神はその道
を敢えて選ばれ、愛の意志を貫徹されました。
その愛の意志は、創造の時とは比較にならないくらい、大きな痛
みを伴ったものでした。いや、痛みをあえてご自身に引き受けられ
るくらいの愛の意志でした。子を派遣して、しかも十字架に死なせ
ることにより、その想像を絶する痛みの中に愛のご意志の強さを示
されたのです。
「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独
り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。」
(ヨハネ3:16)とあるとおり、この神の痛みには、神の愛のご意志、
神の人類を救わずにはおかないと固く決心された、強い愛のご意志
が示されています。
さて、主の祈りですが、イエスさまが弟子たちに示されたそのモ
トの形は、今まで学んできたマタイによる福音書6章と並んで、ル
カによる福音書11章にも記録されています。この二つの主の祈りは、
その意味については全く同じなのですが、その文章については若干
の違いがあります。その違いの中、最大のものは、ルカが伝える主
の祈りには、この第三の祈りが欠けているということなのです。こ
れは、どのように考え、受け止めたらよいのでしょうか。この点に
ついては、カルヴァンが明快に解明しています。『キリスト教綱要』
によれば(第三編26章43)、第三の祈りは、第二の祈りに属する(含ま
れる)というのです。しかし、われわれの愚昧さのゆえに、この第三
の祈りが付け加えられているというのです。
第二の神の歴史への介入によって贖われて救いに入れられた私た
ちには、前々回、前回の講解説教で学んだように、神のみ名を第一
とし、み国の完成を待ち望みつつ、そのように祈りつつ生活するこ
とが求められていますし、またそれで十分です。しかし、神の第三
の歴史への介入(終末)を待ち望む私たちは、神の顕なお姿が見えな
いがゆえに、今も、今この時も神が働いておられるということを忘
れがちです。しかも、私たちは、神の顕になお姿が見えないのをい
いことに、「神などおられないのではないか。」といった尊大な思
いさえも抱く罪人です。しかし、イエスが言われるように、「わた
しの父(神)は今もなお働いておられる。」(ヨハネ15:17)のです。今
この時も天において神が働いておられるとすると、救いに与った私
たちは、のんびりと「左団扇」でいていいのでしょうか。いいえ、
神がこの世界を何とか救おうとされている愛のご意志に自分の意志
を重ね合わせ、隣り人の救いのために働く、すなわち愛の業に励む
べきなのではないでしょうか。祈りつつ励まねばならないのではな
いでしょうか。この祈りが第三の祈りです。私たちは祈ることによっ
て、自分の意志を全く神のご意志に重ね合わせ、愛の業に励む力を
いただくのです。
第三の祈りに、そう生きたいとのクリスチャンの願いが込められ
たクリスチャンの生き方について、本日の使徒書、福音書のテキスト
は次のように道しるべを示しています。すなわち、主日ごとに礼拝
を守ることによって主の恵みをいただき続ける私たちは、ローマ12:1〜2
にあるごとく、私自身の体をお献げする献身をもって、自分の勝手
な意志を捨てて神のご意志に委ねるのです。そして、遣わされた毎
日の歩みの中で、マタイ16:24にあるごとく、自分を捨て、自分の
十字架を背負って歩むのです。もちろん、自分の意志を完全に神の
意志に重ね合わせることができるお方は、イエスしかおられません。
が、(中略)私たちにはイエスを模範として歩ませていただくことが
ゆるされています。その恵みに感謝しつつ励みましょう。
(2008/08/03 三宅宣幸牧師)
(ここに記しましたのは、あくまでも一部です。)
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