2008年07月27日

『み国を来らせたまえ(問123)
(ハイデルベルク信仰問答講解説教55)

主たる聖書テキスト: ヨハネの黙示録 3章14〜22節
                    マタイによる福音書 25章1〜13節


 (前略)神の国は、神が支配なさるところという意味です。ですか
ら、この祈りは、神のご支配を求める祈りです。

 (中略)こうして、イエス・キリストによって神の支配がもたらさ
れたのですから、「み国を来らせたまえ。」との祈りは必要なくなっ
たのではないでしょうか。ところが、またまた、その支配を私たち
が受け容れるかどうか、また、受け容れたとしても、受け容れつづ
けるかどうか、という問題が残るのです。種まきのたとえを見てま
いりましょう。(マルコ4:1-20など) 神の国、神の支配は種のよう
なものです。なぜなら、種自身に、成長し、実を実らせる力が秘め
られているからです。神の支配も神の一方的な恩恵によって実現さ
れます。しかしながら、種がまかれたとしても、まかれた場所によっ
ては種の成長を妨げ、無にしてしまうことが有り得るように、人が
神の支配を一旦は受け容れたとしても、その完成を妨げ、無にして
しまうことも有り得るのです。

 まず、道端、そこは誰でもが通るところです。人の場合も、寛容
という名の下に、何でも受け容れ、種を大切にしないと、やがて、
サタンも入り込み、種を取り去るばかりでなく、サタンの支配する
ところとなってしまいます。次に、石だらけの地の種は、まかれ、
受け容れられるのですが、種を本当には受け容れていませんから、
頑として受け容れていませんから、神の支配は完成せず、やがて消
え失せてしまいます。最後に茨の地ですが、ここは大変豊かな地で
す。豊かな地ですから、茨も生えるのです。才能ある人は何でも成
長させますので、まかれた種以外のものも成長させすぎてしまい、
ゆがてまかれた種以外のものに支配されるところとなってしまうの
です。受け容れ、受け容れつづけた土地では、実は100倍にも実るは
ずなのですが、受け容れた私たちが神の支配の実現に仕える者となっ
ているでしょうか。「み国が来ますように。」という祈りが、そし
て祈りつつ歩むことが必要なのです。

 しかし、それでも世界は祈りとは逆の方向へ向かって進んでいる
ように見えるのです。ティーリケが、ドイツのシュトゥットガルト
の教会で、主の祈りの連続講解説教をしていたとき、それは第二次
大戦の真っ最中でした。第一の祈り、「み名が崇められますように。」
の講解が終わった後、大規模な空襲があり、教会堂は破壊され、教
会員の多くが亡くなりました。第一の祈りの講解の時、共に礼拝を
守ったメンバーの多くが今日はいないのです。どうしてそのような
中で、「み国が来ますように。」と祈れましょうか。

 日本の今の状況は、それほどまでは厳しいものではない、と思わ
れるかもしれません。しかし、教会の教勢は長期低落傾向にありま
す。10年先、教会はどうなっているか、全くわかりません。キリス
ト教ブームはとっくに去り、人々は、超越的なものに関心を示そう
とさえしなくなってきています。このような現実を前に、どうして
「み国を来らせたまえ。」と祈ることができるでしょうか。

 いいえ、こういう時代だからこそ、神の支配の実現は、完成は近
いのだ、と示されているのです。主イエス・キリストによってすで
に示された神の支配を受け容れた者として、「み国を来らせたまえ。」
の祈りを祈りつづけていかねばなりません。

 私たちがどのような姿勢でこの祈りを祈ったらよいのか、二つの
み言葉から示されて参りましょう。
第一は、本日の福音書、マタイ25:1-12です。完成のときはいつか来
るのであり、そして必ず来るのですから、賢い乙女のごとく、主の
再臨に備えつつ、祈ることが必要です。

 第二に、本日の使徒書ヨハネの黙示録3:14-22です。このラオディ
キアの教会のように、神の支配の完成などないと高をくくって、あ
るいはあきらめて自己満足に終始する、これが最悪です。そして、
私たちが最も陥りやすい誘惑です。今、部屋の中に見えなくとも、
神は戸口の外に立って、戸をたたいていらっしゃるのですから、そ
の音に耳を傾け、戸口を開けること、すなわち、神に心と体とを向
ける悔い改めをもって、祈ることが求められています。

 イエス・キリストの恵みそのものである種は、隠れたところで、
確実に実りへと向かって成長しつづけています。この確かな救いに、
私たちも祈りつつ、与ってまいりましょう。

(2008/07/27 三宅宣幸牧師)

(ここに記しましたのは、あくまでも一部です。全文は録音(CD)にて
こ確認ください。)

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