2008年06月22日

『偽証するな(問112)
(ハイデルベルク信仰問答講解説教50)

主たる聖書テキスト: マタイによる福音書 7章1〜6節など


 十戒の第九戒ですが、第九戒はすでに学んだ第三戒と切っても切
れない密接な関係があります。第三戒は、「あなたの神、主の名を
みだりに唱えてはならない。」でした。この戒めの主旨は、神の名
を貶めないということでした。特にクリスチャンにとっては、神を
この世界の本当の支配者として受け止めなければならないにもかか
わらず、神があたかもおられないかのように振舞ったり、あるいは
逆に、自分の利益のために神の名を利用したりすることは、神の名
を貶めることとなるのです。しかし、クリスチャンでありながら神
の名を貶めるということがどうして起こり得るのでしょうか。それ
は、それはその人の信仰が真実ではない、ウソだからです。神を信
じている顔をしていたとしても、本当に信じているわけではなくて、
自分の都合で神の名、そしてクリスチャンという名を利用している
だけだからです。いくら隠したとしても、そのウソは行動となって
表われてきます。実生活は信仰のことよりも金儲けの方に執着して
いたり、時と場合によっては自分がクリスチャンであることを隠し
たり、キリスト教や神の悪口を言うことさえあるかもしれません。
こういったウソの信仰、ウソのクリスチャンに出会われて、神はど
のように感じ、受け止められるでしょうか。クリスチャンとは、本
来、洗礼を受けて、神といわば夫婦のような関係に入った者のこと
を言います。神の方は真実であられるのに、相手の方は心ここにあ
らず、時として自分が独身者であるような顔をしたり、パートナー
のいないところでパートナーの悪口を言っていたりしたら‥。パー
トナーであられる神は深く傷つき、大いに怒られるのではないでしょ
うか。第三戒の講解の時にはふれることができなかったのですが、
十戒の第三戒には、戒めに加えて、「みだりにその名を唱える者を、
主は罰せずにはおかれない。」という言葉、罰への言及がなされて
いました。もちろん、神はどの戒めに対する違反についても罰をもっ
て報い、違反を正される権限をお持ちでいらっしゃいます。しかし、
この第三戒についてだけは、すでに戒めの本文に中に違反者を罰せ
ずにはおかれないことが明記されています。これは、第三戒違反、
すなわち神の名を汚すこと、そしてその根底にはウソの信仰、ウソ
のクリスチャンの存在があるのですが、それが神と人との信頼関係
を揺るがすという意味で、いかに大きな害悪をもたらすか、という
ことを指し示しており、また同時に、神は、第三戒違反を決してお
見逃しになられない、という強い意志を示しているのではないでしょ
うか。このように、神は第三戒違反によって深く傷つけられはする
のですが、しかし、その傷を修復する手立てはお持ちでいらっしゃ
ることは、私たちは、安心と信頼をもって覚えておきたいのであり
ます。

 ところが、神の名を汚すクリスチャンは、神の名を汚すに止まり
ませんで、隣人の名をも汚すのです。ウソのクリスチャンは、神か
ら真実の愛をいただきながら、その神をさえ自分の都合によって利
用し、そして結局その名を貶めました。神に対してさえそうなので
すから、隣人に対しては利用し放題です。隣人の方は、人間同士の
信頼関係を結んだ、と思うかもしれません。ところが、当人にとっ
ては、隣人はその人の名を自分のために利用する手段に過ぎなかっ
たのです。隣人がそのことに気づいたときには、自分の名を利用し
尽くされ、利用価値のなくなった自分の名は徹底的に貶められてい
たということが間間あります。隣人にとって、信頼関係を壊された
ショックは極めて大きいものです。神も傷つけられたくらいですか
ら、人は立ち直れなくなってしまいます。しかも、悪いことに、隣
人に名誉を傷つけられた場合、名誉回復が侭ならないのです。神は
第三戒違反があったとしても、それに対して修復し正す手段をお持
ちです。人の場合も、この世の法において裁判を通じて名誉を回復
する手立てがないわけではありません。しかし、実はこの世の裁判
こそウソつきクリスチャンの本領発揮の場なのです。ウソつきクリ
スチャンは、自分の利益、都合のためには神の名さえ利用する輩で
すから、自分があたかも正しい者であるかのように見せる術は、実
に見事に身につけています。人が人のことを見抜くことは、もちろ
んある程度は可能ですが、完全にはできません。まして、神さえ利
用するウソつきクリスチャンの迫真の名演技を見抜くことは、この
世の裁判官をしても、不可能に近いのです。こうして、この世にお
いては、ウソつきが正しい者と見なされ、名を貶められた隣人は救
済の手段を一切失うのです。(後略)

(2008/06/22 三宅宣幸牧師)

(ここに記しましたのはあくまでも一部です。)

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