2008年06月08日

『姦淫するな(問108〜109)
(ハイデルベルク信仰問答講解説教48)

主たる聖書テキスト: ホセア書3章1〜5節
          マタイによる福音書5章27〜30節など


 今日は十戒の第七戒「姦淫してはならない」がテーマです。
 十戒は、第一戒から第四戒までの神に関する規定と、第五戒から
第十戒までの人に関する規定とに分けられますが、第五戒「あなた
の父母を敬え。」と第六戒「殺してはいけない。」は、人間関係の
基本に関する戒めでしたので、本当の意味での人間関係=隣人関係
についての戒めはこの第七戒が最初です。そして、隣人関係の第一
(基本)は、何と言っても夫婦の関係なのです。もちろん、カトリッ
クの聖職者もそうであるように、結婚をせずに社会に仕えていくと
いう道も大きな徳です。しかし、夫婦関係が営まれ、そこで命を育
まれた子どもを、皆で育てていくという社会のあり方が、基本形で
あることに変わりはありません。

 ところが、この夫婦関係が、大きな喜びがあると同時に、なかな
か難しいのです。
 まず、夫婦の関係というのは全くの横の関係ですから、お互いを
夫として妻として大切にしていくという約束(契約)が支えです。結
婚式においても夫婦の誓約が、その核、なくてはならない部分です。
この契約はきちんと確認されねばなりません。連合長老会による結
婚式の式文においては、夫婦の誓約の前に二つのことが確認されま
す。一つは、会衆に向かって「お二人が夫婦の誓約をなすにあたっ
て、この結婚が道にかなわないと思う方がもしあれば、どうか今責
任をもって明言してください。」と問いかけがなされることです。
もしも、申し出があれば、もちろん事実を確認した上でですが、信
仰的な判断が司式者によってなされる、場合によっては式を中断す
ることもありうるのです。もう一つは本人に向かって、「自ら省み
てこの結婚に関し、もし道にかなわないことを思い起こすならば、
今直ちに明言してください。」と問うことです。もし発言があった
ら同前です。この二つの問に発言がないことを確認した上で、司式
者は「今、何のお申し出もないならば、後日この結婚に対して何ら
かの言葉をさしはさむことは厳に慎んでいただき、お二人が幸いな
家庭をつくり出していくことにご協力いただきたい。」との言葉を
もって誓約に入っていくのです。通常の結婚式の式文よりも厳しく
感じられるかもしれませんが、これだけ厳しい確認をもって誓約を
していかないと、夫婦関係の荒波を乗り越えていくことはできませ
ん。

 が、このような、きちんとした誓約をもって夫婦生活を始めれば
すべてうまくいくかというと、そうとは言い切れません。やはりい
ろいろな困難に直面します。そして、その夫婦生活を脅かす最大の
ものが、姦通、俗に言う不倫です。なぜ、姦通が夫婦関係を揺るが
すか、と言えば、夫婦の関係を誓約をもって始めたはずなのに、そ
こに何と別の夫婦関係が入り込んでくることになるからです。人は
同時に二つ以上のまことの夫婦関係をもつことはできないのですか
ら、裏切り、信頼関係の崩壊、誓約の崩壊を生むのです。姦通は夫
婦関係を破壊するがゆえに、第七戒を待つまでもなく、法やその他
の形においても厳しく禁じられてきました。

 また、そもそも、夫婦の関係は性によって一つとされる関係です。
結婚生活には一つとされる喜びが備えられています。しかし、姦通
がその最たるものですが、結婚生活以外のところで性の関係が結ば
れるとしたら、それらはすべて、結婚生活の、一つとなる喜びに侵
害し、破壊するものとなります。旧約聖書レビ記が18章において、
いとうべき性関係を列挙し、罰をもって禁止しているのはそのため
です。近親者と性関係をもっているような人が正しい夫婦関係を結
ぶことができるでしょうか。できないのです。

 また、さらには、性の感覚的な快楽だけを求めて人との関係をと
り結ぶ場合、本来夫婦が一つとなるための賜物であった性をただの
モノに貶め、相手の人格そして自分の人格さえモノに貶めることが
起こり得るのです。現代のセクシュアルハラスメントにおいても、
相手を性的なモノとしてしか見ない、ということが起こっています。

 「姦淫してはならない。」という戒めは、人間関係の基本である
夫婦関係を支え、人間同士の関係とはいえない関係を厳しく禁止し
ます。この第七戒は、自由という名の下に、好き勝手なことをした
い放題にしている現代人に対して激しく警鐘を鳴らしているのでは
ないでしょうか。 (後略)

(2008/06/08 三宅宣幸牧師)

(ここに記しましたのはあくまでも一部です。説教録音CDにて全体を
お聞きください。)

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