2008年04月13日

『神を第一とする(問92〜95)
(ハイデルベルク信仰問答講解説教42)

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 10章1〜22節


 私たちが罪と戦うときの目安、足がかりとして、神が与えたもう
たものが律法です。
 しかしながら律法は、少なくとも公布当初は今日で言う民法・刑
法の役割を果たしていました。たとえば「殺人」について考えてみ
ましょう。多くの人は「ともかく殺人はいけないことだ」と考えま
すから、殺人は致しません。しかし、だれでも人を憎むことはあり、
それが殺意にまで至ることがあるかもしれません。また、人を殺す
ことを何とも思っていない人もいるかもしれません。それらの人が、
心に殺意を抱きながらも、実際に殺人の罪を犯すことを踏みとどま
るとしたら、その理由の一つは発覚したら法によって罰せられるか
らでしょう。法の存在が公共の秩序を守るのです。律法にも殺人の
禁止と罰則があり、公共の秩序を保つ効果のあったことも事実です。
この効果を律法の第二用法と言います。しかし、神を神と思わず、
悪を悪とも思わない悪人にこの効果があるのは、律法と国家の法が
全く一致している場合に限られます。

 しかし、悪人にさえ守ることが期待されているとすると、クリス
チャンは当然律法を守らねばなりません。しかも、神は霊なる方で
すから、心から守ることが期待されます。しかし、心の中の罪を見
逃されない神の裁きにだれが堪えられましょうか。堪えられる者は
一人もいません。そこで、神の律法のもう一つの、二番目の効果は、
これは律法の第一用法といわれますが、私たちが、自分が神の前で
いかに罪人であるかを知るという効果です。真摯に律法に取り組む
とき、自分がいかに罪深いかを知り、キリストの贖いの恵みの有り
難さがわかるのです。

 しかし、クリスチャンにとっての律法の効果は以上二つに止まり
ません。キリストの贖いの恵みは受けたが、やはり肉の体に生きて
おり、いつでも罪を犯しかねない私たちが、罪を憎み、キリストに
ある新しい命に生きる、そのための力となり、指針となるのが律法
です。律法のこの効果を第三用法と言います。

 神の律法は、第三用法において、たとえば「殺すな」という戒め
を外面的に守ることを要求するに止まらず、心の中で憎しみを抱く
ことを警告するにも止まらず、「敵を愛せよ」(マタイ5:44)と要求
します。一見、私たちは、実行不可能である、と思うかもしれませ
ん。しかし、この戒めを未だ律法を知らずして実行したイサクの例
に見られるごとく、憎しみを愛に代えることによって、何よりも自
分に罪を犯すチャンスを与えません。この戒めに従うことにより、
罪を憎む歩みが実行できてしまったのです。

 さて、ハイデルベルク信仰問答は第三部感謝の生活の学びの中心
に十戒の学びを据えています。十戒は出エジプトの民イスラエルに
与えられた単なる法に止まることなく、クリスチャンに自分の罪深
さを知らせる働きをも超えて、今や贖われた私たちの感謝の生活を
導く導き手として燦然と輝いています。その意味で、十戒は、問93
にあるごとく前半四つの神に関する戒めと、後半六つの隣人に関す
るいましめとに分けられますが、前半四つがとりわけ重要です。キ
リストの贖いによってのみ救われた私たちは、神を第一とする時は
じめて新しい生に生きる基盤が確立されるからです。

 神を第一とする生活をするために、私たちはまず何をしたらよい
でしょうか。それが第一戒「わたしをおいてほかに神があってはな
らない。」つまり、偶像礼拝の禁止です。人間同士の場合でも、愛
する者同士で「愛している。」と言いながら浮気をしていたら、本
当に愛していることにはなりません。まず、偶像礼拝をしないこと
で、神と私の関係が正しいものとなり、贖いの主に生かされている
自分の腰が据わります。

 が、この戒めを第三用法として捉えたとき、偶像礼拝をしないと
いうことは、他の神を実際に拝むことをしないとか、他の神に心を
向けることのないよう努力する、といったことだけでは不十分です。
それだけでは罪の力に打ち勝てず、罪を憎むまでには至りません。
問94の答が最後の二行で言っているとおり、「神の御旨に反して何
かをするくらいなら、むしろすべての被造物の方を捨てる」つまり、
偶像を捨てることが求められています。私にとっての偶像(アイドル)
は何でしょうか。他の神かもしれませんが、人や学歴やプライドか
もしれません。私たちがクリスチャンでありながら、未だに偶像
(アイドル)にしがみついていたとしたら、そんな偶像は捨ててしま
いましょう。そして文字通り「神と共に」歩む生を歩みましょう。

(2008/04/13 三宅宣幸牧師)

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