2008年04月06日

『古い人の死滅と新しい人の復活(問 88〜91)
(ハイデルベルク信仰問答講解説教41)

主たる聖書テキスト: ローマの信徒への手紙 6章1〜11節


 私たちが、本気で罪の赦しを受け止めているならば、必ず、罪の
告白、悔い改めが伴うはずです。なぜなら、キリストの光に照らさ
れた私たちの本当の姿は、罪にまみれた一人の罪人に過ぎないから
です。私たちが、礼拝において、罪の赦しのメッセージをいただい
ていたとしても、悔い改めがなかったとしたら、それは、本当には
罪の赦しを受け止めてはいないのです。真剣に罪の赦しを受け止め
るとき、それは、罪の告白、悔い改めに至らざるを得ません。

 とはいえ、自分で自分を責めるだけの、いわゆる「律法的悔い改め」
は、本当の悔い改めではありません。聖書の罪の認識は大変に厳し
いのです。すべての罪は神への反逆に通じています。傷つけてしまっ
た相手の尊厳ももちろんですが、傷つけてしまった神の名誉をどの
ようにして償うのでしょうか。人間の力では、たとえ何をしても償
えないのです。

 そこで私たちはどうするでしょうか。まず罪を隠そうとします。
自分でもできるだけそのことは考えないようにします。人に知られ
なければ大丈夫だろう、と考えます。しかし、考えなかったからと
いって罪は消えません。神はすべてお見通し、そして何よりも、自
分自身にその罪の事実は刺青のごとく刻み込まれておりまして、洗っ
ても洗っても消えることはありません。

 運悪く、その罪が人に知れてしまった場合、私たちが次に考える
手立ては、言い訳することです。自分が罪を犯してしまったのは環
境のせいだ、仕方がなかった、等々。挙句の果ては、人間をこんな
姿に造った神が悪い、と神に責任をなすりつけるところにまで行き
着きます。しかし、どんなに言い訳しても、自分の責任を逃れるこ
とは決してできません。

 もし、罪があったとしても、罪の事実が起こったとしても、本当
の悔い改めがあれば、私たちは平和に暮らせるはずです。なのに、
私たちは本当の悔い改めからは程遠いところにいます。(み言葉の取
り次ぎにてご紹介した)Sの事例においても、当初は、自分の罪を認
めることだけは、決してしようとしませんでした。

 ところがSが変わったのは、罪をゴシゴシと攻めたてられて、では
ありませんでした。キリストの福音に、キリストの贖いの恵み、罪
の赦しに出会って、です。私たちも、犯した罪の取り返しのつかな
さのゆえに、そして、償いようのない罪の大きさのゆえにたじろい
でいます。ところが、その罪の償いと贖いを、キリストが十字架に
かかって一手に引き受けてくださり、そしてよみがえりの主が私た
ちの罪の赦しを宣言してくださったことにより、その罪の後始末を
考えると怖くて怖くて受け容れることも認めることもできなかった
自分の罪を、私たちが認めることができるという恵みが与えられま
した。罪の赦しによって、悔い改めの恵みが与えられました。

 悔い改めには二つの実があります。一つは「古い人の死滅」です。
それは、罪を憎むことです。私たちは、神に罪赦されていることが
知らされていますから、自分の罪を認めることができ、憎むことが
できます。Sさんは、キリストに出会って、自分の罪を本当に認め、
本当に憎んで、その始末を受け止められました。私たちはどうした
らいいでしょうか。犯罪を犯して隠している人がいたら、名乗り出
て、その罰を堂々と受けるべきです。たとえ犯罪にまでは至らなく
とも、私たちは自分の犯した罪をきちんと追及し、その処置をきち
んとする、その勇気を神は与えてくださるに違いありません。

 そして悔い改めの第二の実は、「新しい人の復活」、これで安心
して善い行いに励めます。しかし、これは一見すると、悔い改めと
矛盾するように思えるかもしれません。カルヴァンが悔い改めが惹
き起こす七つの感情を挙げているごとく、真に悔い改めたとき、私
たちは、自己嫌悪などのマイナスの感情を抱かざるを得ません。し
かし、贖いの愛に基づいた「福音的悔い改め」は、キリストによっ
て与えられた究極の救いへの希望がありますから、罪を憎む勇気と
共に、新しく生きる力を、併せ与えられます。悔い改めは、新しい
人のよみがえりを生む聖霊の働きなのです。

 この悔い改めの恵みに与かるために、私たちには二つのことが必
要です。一つは神を畏れ、洗礼の恵みに与かり、罪に死ぬこと。も
う一つは悔い改めの恵みに与かった後も、私たちには罪の火口があ
りますから、罪を憎む力をいただきつづけることです。

(2008/04/06 三宅宣幸牧師)

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