『晩餐に与る資格(問80〜82)』
(ハイデルベルク信仰問答講解説教38)
主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 11章27〜32節
今日のテーマは、主イエス・キリストの聖餐に与る資格についてです。
カトリック教会では、聖体拝領を与ることができる者は、「洗礼を
受けたカトリック信者のみ」と定められています。プロテスタント
教会でも洗礼を受けていることが、聖晩餐に与る前提となります。
聖晩餐はキリストと私とのつながりです。つながりのないところで
は成り立たないからです。しかしながら、カトリック教会では、と
りわけ伝統的なカトリック地域では、幼児洗礼が子どもたち全員に
施され、そして、教理教育が施された上で、ある年齢になるとだれ
でも自動的に初聖体拝領を受けられるのに対し、プロテスタント教
会の場合には、幼児洗礼を受けた人がある年齢になると自動的に聖
餐に与ることができるという制度がないのはもちろんのこと、洗礼
を受けた人でも、「あなたは本当に聖餐に与る資格があるのですか。」
と問われるのです。
プロテスタント教会は、とかく外面だけに流れがちなカトリック教
会と違い、神と、そして自分だけが知っている内面を強く問題にし
ます。問81の答えにあるごとく、まず第一に私たちが「自分の罪の
ために自己を嫌悪しているかどうか」が問われます。私たちはどう
でしょうか。たとえ罪の自覚があったとしても、罪を憎み、嫌い、
そこから逃れたいと本当に願っているでしょうか。その願いをあき
らめて、罪の自分を放置してはいないでしょうか。自分の罪はたい
したことはない、と高をくくってはいないでしょうか。表面的によ
いクリスチャンを装うことはできても、神は人の心をすべてご存知
です。神の目を誤魔化すことはできません。また、自分も、自分の
心のようにしか生きられないのです。私たちが心の中で罪を放置す
ると、いくら装っても、罪を何べんでも繰り返します。どんどん深
みにはまっていきます。犯罪者にまで行き着かない保証はどこにも
ありません。
私たちには、聖晩餐を受けるにあたって、自分の罪を嫌悪すること
が求められます。ところが、実はこの「嫌悪する」ということが実
はなかなか難しいのです。私たちが罪を嫌悪すれば、当然「罪を犯
さないようにしよう。」という行動となって表われます。しかし、
しばしば挫折します。そして元の木阿弥、放置に戻りかねません。
ところが、不思議なもので、私たちが自分では解決できなかった、
乗り越えられなかった罪を、神が赦してくださるということがわかっ
たら、また、そのことを私たちが信じることができたなら、私たち
は自分の罪を嫌悪できるのです。私たちにとって、罪から解放され
るということは、私たちが心に抱くどんな夢にも勝って困難な、そ
して人類全体にとっても到達不可能な、文字通り見果てぬ夢でした。
しかし、その罪の赦しを、罪からの解放を、神の側から、何と御子
イエス・キリストをこの世に遣わして、私たちの身代わりに十字架
に死なせるという思いもかけない手段をもって実現してくださった、
そのことを私たちが知った時、そして信じた時、今まで到達不可能
としてあきらめていた罪からの解放の夢が私たちにも可能となった
のです。私たちはすべてを投げ打って罪を嫌悪できるのではないで
しょうか。私たちが罪を嫌悪する時、私たちには悔い改めの生活へ
と道が開かれます。悔い改めの生活とは、神を第一とする生き方で
す。聖晩餐に与る者には、「さらにまた、よりいっそう自分の信仰
が強められ、自分の生活が正されることを切に求める」神を第一と
する生活が求められます。
が、神は、私たちが罪を嫌悪することなく、悔い改めることなく聖
晩餐に与ってしまうことがあることもご存知です。そういう場合た
とえ他人からは見えなくとも私たちは自分に裁きを招くこととなり
ます。(Tコリント11:19)神との関係を壊してしまうのです。そうい
う時、もし気づいたなら、そのことを神に謝るべきです。そして、
赦しの恵みをいただき直し、悔い改めの生活を始める決心をし直す、
聖餐とは、神と私たちとの対話です。
しかし人の内面は必ず外に出て人にも知られるところとなります。
問82にあるように、信者にしてしかも「その信仰と告白と生活とに
よって、明らかに不信仰と背信とを示している」場合もあるかもし
れません。その人が聖餐に与ろうとした場合、教会は拒否しなさい、
というのがプロテスタント教会の立場です。とはいえ、教会が人を
裁くのではありません。その行為が、できれば内面そのものも整え
直されることを願って、説教まで戻っていただきます。説教を通し
て再び聖晩餐に共に与るところまで整え直されることを願って‥
(2008/03/09 三宅宣幸牧師)
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