『イエス・キリストの聖晩餐(問
75〜77)』
(ハイデルベルク信仰問答講解説教36)
主たる聖書テキスト: 出エジプト記 12章1〜20節
コリントの信徒への手紙一 11章23〜26節
マタイによる福音書 26章26〜30節
前回学んだように、洗礼式の恵みをいただいて私たちの信仰生活
が始まるのですが、私たちの信仰は、放っておいたらどんどん退化
してしまいます。それは、人間が食物を摂らないと、いくら頑張っ
ても、頑張ったつもりになっても、どんどん体調を崩していくのと
同じです。そこでキリストは、み言葉の宣教と共に、霊の栄養をい
ただく聖晩餐をお定めになられ、しかもいただきつづけるように勧
められます。
洗礼のしるしが水で、血の洗いを象徴するように、聖晩餐のしる
しはパンとぶどう酒です。パンとぶどう酒は、すでに創世記に見ら
れるごとく、私たちのからだを支える食物の基本です。このパンと
ぶどう酒を食することにより私たちのからだが養われるごとく、パ
ンが指し示すキリストのからだ、ぶどう酒が指し示すキリストの血
を食することにより、それは霊の糧となり、私たちの信仰生活が確
実に養われます。キリストのからだと血とをいただくのが、聖晩餐
の式です。
それでは、なぜパンに象徴されるキリストのからだが私たちの霊
の養いになるのかと言えば、キリストのからだが、私たちの罪の贖
いのための犠牲として献げられた、提供されたからだだからです。
ぶどう酒によって象徴されるキリストの血も同様です。が、同時に、
血は契約のしるしでもあります。本日の旧約書出エジプト記12章に
は、出エジプトの時、イスラエルの民の家の入り口に塗られた小羊
の血のことが記されていました。この血は、主なる神とイスラエル
の契約のしるしです。守りの契約のしるしです。それゆえ、主はそ
の血を見て、その家への災いを過ぎ越されました。新約における契
約は、本日の福音書マタイ26:28に明らかに示されているごとく、多
くの人の罪を赦す、主イエスの契約です。この契約のしるしとして、
この契約を確かなものとするために、キリストは血を流されました。
私たちはその血をいただくことにより、救いの契約の更新をしてい
ただきます。
さて、食生活の改善によって体質改善がなされるごとく、聖晩餐
においてキリストのからだと血とをいただき続けると、私たちの霊
のからだそのものが変わってきます。この霊のからだの変化をルター
は「交換」という言葉で表現しました。聖晩餐に与りつづけること
によって、肉なる私たちが神の子と変えられる、交換されます。死
すべき性質に換えて、不死なる性質が与えられます。弱さが強さに
変えられます。何にもまして、不義なる者が義と変えられて、かつ
て思いも及ばなかった天上の富に与れるように変えられるのです。
ところで、栄養がよりよく摂取されるためには、からだの食事も
そうであるように、霊の食事にも食べ方があります。まず、からだ
の食べ物が規則正しく摂取されることによって初めてからだの養い
となるごとく、霊の食べ物も規則正しく、しかも継続的に摂取され
ることが求められます。それでカルヴァンは「少なくとも週に一回」
は、聖晩餐に与るように、と述べたのでした。(「綱要」W.17.16)
実際、カルヴァンの言葉どおり、主日礼拝ごとに聖晩餐を守る教会
もあると聞きます。が、からだの食物と同じく、飽食も霊の養いに
なりません。私たちは、毎月一回第一主日の主の晩餐を規則正しく
守っていきます。
第二に、からだの食事においても偏食がからだによくないごとく、
霊の食事も同じです。イエス・キリストは聖餐の制定の言葉(問71の
答え・本日の使徒書コリント一11:23〜26)で、パンとぶどう酒両方
を摂るように命じられました。両方を摂って初めてバランスの取れ
た食事となるのですから、カトリック教会のように片方だけという
偏食に陥ることなく、プロテスタント教会は両方をいただく聖晩餐
を守っていきます。
最後に、からだの食物においても心の有り様によって栄養摂取が
変わってくるのですから、霊の食物の場合は尚更です。聖餐の制定
の言葉で、「ふさわしくないまま」(Tコリント11:27)でパンを食し、
杯を飲むことが戒められているのは、聖晩餐にあたり、心の有り様
を正すことが求められているということです。私たちは、たとえ完
全ではなくとも、信仰をもって受け止めることが求められます。そ
れゆえ、信仰告白をなし洗礼を受けて信仰生活を始めて、それから
聖晩餐に与るのが順序です。もっとも、私たちはだれ一人完全な信
仰はもち得ないのですから、高慢な思いではなく、魂の飢えをもっ
て霊の食物を求めるべきことは言うまでもありません。
(2008/02/24 三宅宣幸牧師)
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