『聖なる礼典(問65〜68)』
(ハイデルベルク信仰問答講解説教33)
主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 11章23〜26節
マタイによる福音書 28章16〜20節
私たちは信仰をどうやって獲得し、どのようにして育んでいくこ
とができるのか、それが次の課題です。(問65)もちろん、信仰は業
の一つではありません。神に全面的に頼ること、キリストの十字架
の贖いに全面的に委ねることです。それゆえ、信仰は自分の力で生
み出したり、育んだりすることができません。聖霊が私たちの中に
生じさせ、育んでくださいます。聖霊は、神のみ子イエス・キリス
トを、特にその贖いの業を証することを専らその努めとしておられ
ますから、キリストを証する教会の二つの働き、すなわち福音の宣
教と聖礼典を通して働かれます。説教と聖礼典を通じて私たちに信
仰をし生ぜしめ、育みます。ゆえに、私たちにとっては、日曜日に
礼拝に出席し、み言葉の宣教と聖礼典に与ること、これが信仰を与
えられ育まれる道、唯一の道です。それでは、福音宣教は「教え」と
いう形でキリストを指し示しますが、聖礼典はどのようにしてキリ
ストを指し示すのでしょうか。
さて、聖書では象徴=シンボルのことをしるしと言います。既に
天地創造の時から、神はしるしをお用いになられました。神がお造
りになられた太陽と月は、季節や日や年のしるしでした。(創世記1:14)
また、カインとアベルの物語において、弟アベルを殺してしまって
さすらい人となったカインに、神はしるしを付けられました。(創世
記4:15)これは、罪を犯してその罰を受けているカインをも、神は守
られるという愛のしるしでした。ノアの洪水物語においても、神は
再創造された世界を二度と滅ぼされないしるしとして、神はノアに
天かける虹を示されました。(創世記9:16)
こうして神はイスラエルへの祝福もしるしをもって示されるよう
になりました。アブラハム以降、選びのしるしとして「割礼」を用
いられます。創世記17章によれば、神はアブラハムに対して、アブ
ラハムが多くの国民の父となること、そして、神がアブラハムとそ
の子孫の神となること、すなわちイスラエルの民の選びを約束され
ました。そして、その契約のしるしとして、この民には割礼を施す
ことを要求されました。すなわち、割礼には、その人とその子孫と
は神に選ばれた民、祝福の中に入れられた民である、とのメッセー
ジが込められています。この選びは、モーセの時律法が授与される
ことによってますます確かなものとされましたが、もしも過って主
の戒めに違反し、禁じられたことを一つでも破ってしまった時でも
神に見捨てられないしるしとして、雄牛、羊、山羊、山鳩、家鳩が
贖罪の献げものとして、いけにえというしるしとして献げられまし
た。(レビ記)割礼といけにえは、神の選びと贖罪の約束を目に見え
る示したもので、同時に神の約束を証書という形で封印したもので
した。(問66の答え) が、神の約束そのもの、すなわち選びと贖罪
は、実はイエス・キリストを通して実現したのです。旧約聖書の時
代にも贖罪のしるしとして、いけにえに動物犠牲が献げられました。
しかし、動物犠牲そのものは、到底人間の罪を贖えません。どうし
たら贖うことができるでしょうか。仮に人間が自ら贖うとしても、
贖う人間自身に罪があれば、人類すべての罪を贖うことなど到底で
きません。罪なき人間の犠牲でなければなりません。こんな条件を
満たすことができるお方はただ一人、み子イエス・キリストのみで
す。そして、み子イエス・キリストは本当に全人類の罪を贖って下
さいました。このイエス・キリストによる罪の完全な贖いがあって
初めて、選びの祝福が本物となります。罪が贖われることによって、
永遠の生命が与えられ、選びの賜物が与えられました。こうして、
割礼といけにえは、イエス・キリストを前もって指し示すしるしと
なりました。
そして、主イエス・キリストは、主の十字架以降の教会のために、
洗礼(バプテスマ)と聖餐を選びと贖罪のしるしとしてお定めになら
れました。(問65)バプテスマは水の洗いをしるしとして、私たちの
罪が潔められていることを指し示し、私たちに永遠の生命が与えら
れていること、すなわち私たちの選びを確認します。聖餐は、主の
からだと血とのしるしであるパンとぶどう酒とを食することにより、
罪の贖いを確認します。旧約の時代と違い、主の十字架以降は、す
でに成就したしるしとして、受け止めます。聖礼典は、キリストの
十字架を指し示すしるしです。聖礼典が祈りのうちに執行される時、
聖霊が豊かに働き、一人一人の中に信仰を引き起こし、信仰を豊か
に育みます。、主の十字架を豊かに指し示します。
(2008/02/03 三宅宣幸牧師)
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