2007年12月23日

『聖徒の交わり
(ハイデルベルク信仰問答講解説教27)

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 12章31b〜13章13節


 使徒信条は、「聖なる公同の教会」に続いて、「聖徒の交わり」
という告白が続きます。神の恵みは「選びの恵み」に止まらず、教
会の枝に連なる一人一人も聖徒とされ、聖なる祝福に招き入れられ
ている、というのがこの告白の内容です。私たちが聖徒であり、私
たちの交わりが聖徒の交わりと言うにふさわしい者である、という
ことではありません。キリストの贖いによって一方的に恵みをいた
だいているのです。いただいた私たちには、聖徒とされたにふさわ
しい歩み、聖徒の交わりに値する交わりをなすことが求められます。
そのために何をどうすればよいのか、学びましょう。

 まずカトリック教会の場合ですが、キリストに倣うことと同時に
教皇への絶対服従が求められます。一例をあげましょう。カトリッ
ク教会の歴史において、教皇インノケンティウスV世(在位1198-1217)
の時代は、キリストの代理としてこの世を支配する教皇の権威がもっ
ともよく行き届いた時でした。異教や異端は征服され、国王たちも
教皇に屈服されられました。地上に神の国が実現したかのように見
えましたが、それは形だけのものであり、この後、聖職者の退廃、
教皇さえもの退廃が進んでまいります。しかし、その中でかろうじ
てカトリック教会の命を支えたのは修道会です。とりわけアッシジ
のフランチェスコが創立したフランチェスコ会の働きは大きなもの
でした。1182年中部イタリアのアッシジで富裕な織物職人の子とし
て生まれたフランチェスコは、贅沢三昧の青年時代をすごしますが、
回心を経験し、絶対清貧を理想とする修道生活に入ります。それは
「第二のキリスト」(ピウス11世のことば)と言われるくらい徹底し
たものでした。が、フランチェスコがモットーとしたものは絶対清
貧だけではありませんでした。教皇への服従がもう一つの欠かすこ
とのできないモットーでした。(フランチェスコ会会則)インノケン
ティウスV世は1210年、フランチェスコ会を公認し、それゆえカト
リック教会の命は何とか保ちえました。カトリック教会信徒の理想
とする「キリストにならいて」の生き方は、教皇への絶対服従と切
り離すことができません。なぜなら、天国の鍵を預かった教会の権
威は神の権威そのものであり、それは信徒の絶対服従によって支え
られたからです。フランチェスコは、カトリック教会での聖徒、聖
徒の交わりのあり方の理想を実現した人でした。

 とはいえ、教会という枠を取り払って「キリストにならいて」だ
けを求める生き方は、プロテスタントではありません。熱狂主義と
言います。既にインノケンティウスV世の時代に「カタリ」という
熱狂主義のグループがありました。個人の霊感を大切にします。そ
の立場から教会の一切を否定します。そして霊に導かれた生活とは
何かといえば、それは禁欲生活だったのです。教会を無視ないしは
否定して、個人で聖となること、聖徒の交わりを求める生き方です
が、これは聖書の教えるところとは違います。ペンテコステの出来
事にあるごとく、祈る教会が贖われた共同体として整えられて、そ
の枝である信徒一人一人が聖とされ、聖なる交わりに入れられるの
です。順序は、逆でも、教会をすっ飛ばしてでもありません。

 健全なプロテスタント教会は、聖書にしっかりと立ちます。教会
の選びの恵みはキリストの贖いの業によって私たちに示され、聖霊
によって保証されました。(エフェソ1章)それゆえ、教会は「聖なる
公同の教会」とされたのです。教会に連なる私たちも、聖霊の導き
により、キリストの贖いの恵みに与ることによって、聖とされ、聖
徒の交わりに入れられているのです。ということは、キリストの贖
いの恵みを伝えるみ言葉の宣教、記念する聖餐式に与ることによっ
て、私たちは聖とされ、聖徒の交わりに入れていただくのです。み
言葉を聞くことを拒否し、聖餐に与ることを拒否しては、聖とされ
ることも、聖徒の交わりに入れられることもありません。

 問55は、健全な聖書の教えを伝えています。「群れの一部として」
教会のみ言葉の宣教と聖餐に共に与ることが肝要です。私たちにとっ
てつながることがまず大切です。「キリストにならいて」は感謝の
献げものであって、功績でも義務でもありません。ですから「自発
的に喜んで」、つまり職業でも強制でもなくなされるべきです。そ
れこそがコリント一13章で言う愛の業です。

 クリスマスは、教会が聖なる共同体とされる出来事が始まった日
でもあります。教会から離れずみ言葉の宣教と聖餐に与り、共に歩
んでまいりましょう。

(2007/12/23 三宅宣幸牧師)

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