『キリストの昇天』
(ハイデルベルク信仰問答講解説教22)
主たる聖書テキスト: 使徒言行録 1章9〜11節
私たちは今、どのようにしてキリストと出会うのか、その問いを
持ちつつ、本日はキリストの昇天について学びましょう。使徒信条
でもキリストのよみがえりに引き続き「天に昇り」と告白している
とおり、よみがえりのイエスは40日にわたって弟子たちに現れられ
たあと、天に挙げられました。本日の使徒書はその場面を描いたも
のです。少し前、6節から見ますと、よみがえりのイエスは使徒(弟
子)たちと一緒にいる時、弟子たちに宣教命令(地の果てに至るまで、
わたしの証人となるように)を出された後、彼らが見ているうちに天
に挙げられました。その天に昇って行くイエスを覆った雲ですが、
それは神がそこにいたもうしるしです。イエスが「雲におおわれて彼
らの目から見えなくなった」ということは、明らかに神に属する者と
して、人間には知ることのできない、雲に隠された天の世界へ帰っ
ていかれたということを示しています。十字架や復活でおおよそわ
かっていたかもしれませんが、弟子たちは今、明確に、はっきりと、
疑いもなくイエスが人となられた神であったこと、そしてその神が
贖いの業を成就してくださったことを知るのです。キリストの贖い
の業は昇天をもって完成されたのです。
しかし、それでは昇天をもって直ちに全人類に救いがもたらされ
たかというとそうではありませんでした。なぜなら、キリストの贖
いの業を知り、そして信じ救われた者は、イエスの弟子たちという
小さなグループに限定されていたからです。この救いはまず第一に、
何としても全世界、地の果てまでも告げ知らされねばなりません。
弟子たちには告げ知らせる使命が与えられています。弟子たちは聖
霊を受けて全世界の宣教活動に散っていきました。そして、全世界
に福音が行き渡ったとき、その時は「知らなかった」という人がい
ない時です。知って受け入れた人と、知ってはいるが受け入れなか
った人とがいる時です。いよいよこの時とばかり、神としてのキリ
ストが「天に行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で」(使徒
1:11)つまり雲に乗って(ルカ21:27)この世にお出でになるのです。
その時、最後の裁きと救いがもたらされるのです。
キリストの昇天とともに、「中間時代」と言われる時代が始まり
ました。それは終末まで続きます。この中間時代、クリスチャンは、
キリストがいらっしゃらないという重荷に耐えながら、福音宣教と
いうこれまた重荷を背負っていかねばなりません。どうしてクリス
チャン一人一人がそのような重荷に耐えられましょうか。この中間
時代、キリストは私たちとどのような形で共にいてくださるのか、
そのような不安がハイデルベルク信仰問答問47の背景にあります。
とはいえ、イエスは「わたしは世の終わりまで、いつも、あなた
がたと共にいる。」(マタイ28:20)との約束を違えてはいらっしゃい
ません。イエスが去った後、別の弁護者を送るとの約束(ヨハネ14:
16)どおり、ペンテコステの日に弟子たちに聖霊が降りました。(使
徒言行録2:1〜)聖霊の導きがある弟子たち、そしてその弟子たちを
受け継ぐクリスチャンには何ら心配はないはずです。
ところが、クリスチャンの間でも、地上のイエスが居られなくな
ってしまわれたことに不安をどうしてもぬぐいきれない人もいたの
です。せめて、聖餐式の時ぐらいキリストのお体が、今、ここにあ
ってほしい、そのような願望が、カトリック教会での化体説や、ルター
の考え方を生んだのではないでしょうか。キリストのお体は普通の
体ではないはずだから、変幻自在、聖餐式のときそこに現れられて
もおかしくないのではないか、と考えたのだと思われるのですが、
聖書的根拠はないのです。キリストは神であられましたが、この地
上においては同時に人として、それも「ただの人」として本当に死ん
で葬られたのです。よみがえりの体を与えられて、よみがえりの体
をもって昇天されたのであって、この地上にはキリストの体のひと
かけらも残っていません。ただ、天に居られるキリストが遣わされ
た聖霊が、私たちの目に見えない霊というかたちで、この地上のど
こにでも居られるのです。問47の答えはそのことを言っています。
(問48については、省略)
私たちがイエス・キリストの昇天から受け止められることの一つ
はキリストは今、霊において働いておられるということです。聖餐
においてはもちろん、いつでもどこでも働いておられます。そして
第二に、キリストは私たちのために天に場所を用意しておられると
いう事です。キリストの備えてくださった助けと希望に感謝しつつ
歩みましょう。
(2007/11/18 三宅宣幸牧師)
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