2007年11月04日

『神のすばらしい約束

主たる聖書テキスト: ペトロの手紙二 1章3〜11節


 本日は永眠者記念日です。この日を迎え、先に召された諸先輩を
思うとき、私たちにはいつも二つの不安・心配があるのではないで
しょうか。一つは、すでに亡くなられた方々が、本当によみがえり
の命をいただいているのだろうか、という不安、もう一つは、私た
ち自身が死んだあと、本当によみがえりの命をいただけるのだろう
か、という不安です。

 まず第一の問題です。使徒信条では、キリストが十字架にかかっ
て死んで葬られたあと、「陰府にくだり」と告白しています。しか
し、キリストは陰府に降って何をしておられたのでしょうか。ルター
派はペトロ一3:19を根拠として、キリストは陰府の世界に降っていっ
て、救われていない魂に救いを宣べつたえた、と解釈してきました。
一方改革派は、信仰問答にあるとおり、キリストが魂までも苦しま
れたことを表わしていると解釈してきました。違いはありますが、
いずれにしても、死者とりわけ魂の苦しみを死後にまで持ち越して
しまわれた方々にもキリストが救いの手を差し伸べていることは確
かなのです。私たちは死者のことが心配です。そして、私たちと死
者との間の壁は決して乗り越えられません。しかし、心配すること
はない。キリストが死者のところにも慰めと救いをもたらしていて
くださるのです。

 第二は私たち自身の問題です。自分自身は洗礼を受け、教会のメ
ンバーとなっているかもしれません。しかし、それで本当に死んだ
あと、よみがえりの命を受けることができるのでしょうか。これは
不安です。この問題もハイデルベルク信仰問答の学びで触れました。
キリストがよみがえられたのですから、私たちもよみがえるのです。
キリストが見本を示してくださったばかりではありません。キリス
トがわたしたちの罪を贖い、その業を完成してくださったというこ
とを、自らよみがえることによって示してくださったがゆえに、私
たち自身のよみがえりも保証されているのです。

 さて、人はだれでも、心の底では、神と共に生きるように願って
います。いるはずです。しかしあきらめてしまっているのではない
でしょうか。が、イエス・キリストがよみがえりの命への道を開い
てくださったことを知ったらどうでしょうか。もちろん無関心の人
もいるでしょう。聞いても拒否する人もいるでしょう。が、この喜
ばしい知らせを聞いて心から反応し、イエスに従っていこうと決心
する人もいるはずです。その人々と共にキリスト教会は始まりまし
た。が、物事には必ず早とちりがあります。初代教会にも早とちり
の人がいました。イエスがよみがえりの命を与えていてくださるな
ら、自ら早く死ぬことを求めよう、この肉体はもうどうでもいい、
というのです。この早とちりにはギリシャ哲学も影響したかもしれ
ません。ギリシャ哲学の中には、確かに肉体を軽視する考え方もあ
ります。このような哲学を教えられてきた人にとって、よみがえり
の命を与えられるという福音は、それならさっさと死んでしまった
方がいい、肉体なんかいらないという早とちりとなってしまったの
です。

 本日の使徒書、ペトロの手紙二は、教会の中にこのような早とち
りの人がたくさん現れてくる中で書かれました。まず第一にこれら
の人々に言わねばならないことは、よみがえりの命はあくまでも将
来の約束だ、ということです。「尊くすばらしい約束」(4節)ですが、
あくまでも将来のことで、今はそれを待ち望む生き方が求められて
います。第二は、現在はクリスチャンであっても肉体をもって生き
ることが定められているということです。いや、肉体こそ神が創造
の業をもって人間に与えてくださったプレゼントなのです。もちろ
ん肉体をその居場所として罪の汚れの歴史が繰り広げられてきまし
た。が、その罪がキリストによって贖われた今、クリスチャンは今
度は肉体を通して新しい命に生きることが求められています。まず、
神のすばらしい約束を受け止める信仰が基礎です。受け止めたら、
徳と知識という倫理的能力(大人の力)を発揮して、自制、忍耐、信
心(敬虔)という人間力を発揮し、兄弟愛に励み、さらに広く愛を及
ぼす努力をすることが求められています。そうやって生を全うした
とき、神のすばらしい約束が現実となる時を迎えることとなるので
す。

 先に召された先輩のことを思うとき、不安や心配が先立つかもし
れません。しかし、教理を通して私たちが学ぶことは、その心配は
すでにキリストがすべて解決していてくださるということです。私
たちは知らない世界に不安や心配をするのではなく、それらはすべ
てキリストにお任せして、今与えられた生を励んでいこうではあり
ませんか。

(2007/11/04 三宅宣幸牧師)

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