『私たちの使徒信条』
(ハイデルベルク信仰問答講解説教8)
主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 8章18〜25節
私たちは毎主日礼拝で使徒信条を告白していますが、それはなぜな
のでしょうか。すらすら唱えられるようになれば、聖なる者になれ
る、救いに近づくのでしょうか。私たちは、そうではないことを知
っています。しかし、コリント教会には、その考え方に似たような
考えをもった人がいました。彼らは、こう考えます。人間にとって、
この世での肉体をもっての生は、苦に満ちています。しかし、人間
の本当の故郷は天にあるのです。そして、天に帰ったとき、本当の
平安を得られるのです。が、仮にそうだとしても、どうしたら天に
近づくことができるのでしょうか。コリントの人々は、神の知識を
得ることによって天に近づけると考えました。それで、神に関する
知識をしっかりと身につけ、すらすらと唱えられるようにまでなる
ことを求めたのです。
この考え方は正しいでしょうか。主の教会の信仰からはそれてしま
っています。それではどこが間違っているのでしょうか。1節の「我
々は、皆、知識を持っている」は、コリント教会の人々の考えです。
知識とは、神に関する知識ですから、コリントの人々は、自分たち
は神に近い、救いに近いと威張っていました。しかしみ言葉は言い
ます。「知識は人を高ぶらせる‥」(3節)知識は人を救いに至らせる
のではなく、高ぶりしかもたらしません。コリント教会の人にとっ
ては、意外な言葉です。さらに「自分は何か知っていると思う人が
いたら、その人は知らねばならぬことをまだ知らないのです。」(2節)
という言葉が追い討ちをかけます。自分が知っていると思っている
人は「無知の知」さえも知りません。自分で知識を得ることによっ
ては、神に近づくことはできないのです。しからば救いの道はない
かと言えばあります。3節「神を愛する人がいれば、その人は神に知
られているのです。」自分から知識をもって神に近づくことはでき
ないかもしれないが、神を愛するならば、神からの愛を受け止める
ならば、その人は神から知られている、神から救いに入るものとし
て認知されていることを知るのです。全くの主客転倒です。私たち
が知識を得て神に近づくのではなく、神の側で、私たち人間を愛し、
知ってくださった、その愛を受け止めることで救いに入れられる、
これが教会の正しい教えです。
ですから、使徒信条の受け止め方についても、同じことが言えます。
使徒信条を知識としてマスターすることで救いに近づくのではあり
ません。その内容、それは救いの出来事を指し示していますが、そ
れを「疑いないもの」として、つまり自分の問題として、悔い改め
をもって受け止めるとき、救いが、教会が造りあげられていくので
す。
さて、その使徒信条の内容ですが、それは、問24にあるように三つ
に分けられ、問25にあるようにそれは、「三位一体」の教理に仕え
ています。が、教理はかつてはドグマと呼ばれ、ドグマという言葉
には、固定観念に囚われている様を表わす悪い意味もあります。
「三位一体」の教理は、クリスチャンの固定観念なのでしょうか。
そうではありません。「三位一体」という言葉が先にあったのでは
なく、「三位一体」という言葉でしか表現できない事実が先にあっ
たのです。
私たちは、神の救済の出来事を、罪のゆえににっちもさっちもいか
なくなってしまった人間へ差し伸べられた救いの手として見てきま
したが、その同じ出来事を神の側から見たらどうなるでしょうか。
それは、「三位一体」という言葉でしか説明できない出来事となり
ます。
神が人間をお造りになられたのは、御自身の欠けを補うためではな
く、全くの恩恵によるものですから、もしも、そこに人間の裏切り
が発生すれば、人間を罰して見捨てて、それで終わりです。神が神
としておわします限り、そこまでです。しかし、神の愛は思いもか
けず深かったのです。人間の裏切りに対し、ご自身がその責めと償
いを負うという重大な決心に至りました。神の愛はそこまで深かっ
たのです。そのためには、自ら人となり、苦しまねばならません。
キリストという位格(ペルソナ)、すなわちお立場をとらねばなりま
せんでした。そして、それは実行されました。二位の神です。さら
に、神の愛は徹底していました。キリスト昇天後も,聖霊を教会に送
るという手立てによって、すなわち,聖霊という位格をもってご臨
在したもうのです。
私たちは、この救いの出来事によって既に救われて、今ここにあり
ます。教会にあります。ゆえに、「三位一体」の神について、語ら
ねばなりません。固定観念としてではなく、自分自身の救いの出来
事として‥
(2007/07/15 三宅宣幸牧師)
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