『神の正義』
(ハイデルベルク信仰問答講解説教4)
主たる聖書テキスト: ローマの信徒への手紙 1章18〜32節
ハイデルベルク信仰問答第四主日は、それ自体が罪である問いか
ら問答を始めます。「御自身の律法において人ができないようなこ
とを求めるとは、神は人に対して不正を犯しているのではありませ
んか。」神の不正を問う。実に不遜な問いです。しかし、問答はあ
えてこの問いを問うのです。私たちは、自ら罪を犯しておきながら、
その責任を神になすりつける、そのような罪人です。しかし、み言
葉は、そのような罪人の罪ある問いにも、み言葉をもって答えてく
ださることでしょう。
問9の答えは、「なぜなら、神は人がそれを行えるように創造され
たからです。」から始まります。「それ」とは律法を指します。し
かし、いわゆるユダヤ教の成文律法の意味ではなく、神の命令を指
します。そして、み言葉は、この答えのとおりでした。主なる神は
人を創造してエデンの園に配置し、「善悪の知識の木からは、決し
て食べてはならない。」と命令しました。そして、人はこの命令を
守り、神を礼拝して生活していました。ところがここで、問答は悪
魔のそそのかしにふれています。なぜでしょうか。前回、私たちは、
神と人間との関係を愛の関係、信頼関係として捉えてきました。し
かし、それは、別の角度から見れば、命令に従うかどうかの関係(従
順関係)なのです。命令は具体的です。いつも、従うか従わないかの
二者択一を迫られます。そして、人はいつも従わない誘惑と直面し
なければならないのです。この誘惑の働きかけが、悪魔の誘惑です。
いわゆる「悪魔」が姿を見せるわけではありませんが、あるときは
蛇の姿をとり、あるときは人の姿をとって、この悪魔の誘惑は襲っ
てくるのです。人がもし、愛する関係、信頼関係を貫こうとするな
らば、命令に従順に従う決断をする必要があります。しかし、最初
の人は命令を守ることができず、不従順の罪を犯したのです。その
ため、愛の信頼関係が壊れ、すべてのよきもの、賜物を失ってしま
ったのです。
しかし、この罪はアダムとエバの罪であって、自分には及ばない
と考える人がいるかもしれません。しかし、問答は、罪を犯したの
は「人」であるとしており、アダムとエバとは言っていないのです。
なぜでしょうか。それは、アダムとエバの出来事は、はるか昔、楽
園の中でだけ起こった出来事ではないということです。その後の歴
史の中で繰り返し繰り返し起こっていることであり、私たちも、同
じ罪を犯しているのです。ローマ1:18-32を見てみましょう。19節
「なぜなら、神について知りうる事柄は、彼らにも明らかだからで
す。」彼らとは異邦人です。アダムとエバの直系の子孫であるユダ
ヤ人ばかりでなく、非直系にして、聖書を知らなかった民も神につ
いて知りうる。すなわち、神に従えとの命令を受けているというの
です。しかし、どうしてそのことがわかるのでしょうか。「神がそ
れを示されたのです。世界が造られた時から、目に見えない神の性
質、つまり神の永遠の力と神性とは被造物に現れており、これを通
して神を知ることができます。」(19-20節)ここは、人がよくよく自
分を振り返ってみるときに、自分が被造物にすぎないことに気づく
はずだ、という意味です。自分が被造物であることがわかったら、
どうしたらいいのでしょうか。造り主なる神を礼拝し、神の命令に
従わなければならないのです。
然るに現実はどうでしょうか。アダムとエバ以上にひどいのです。
「なぜなら、神を知りながら、神としてあがめることも感謝するこ
ともせず」(21節)まず、神を礼拝しません。そして「かえって、む
なしい思いにふけり、心が鈍くなったからです。」自分の欲望に従
って生きたのです。が、ここまでは、アダムとエバも一緒です。と
ころが、ここから先、アダムとエバもしまなかったひどいことを人
はするようになりました。「滅びることのない神の栄光を、滅び去
る人間や鳥や獣や這うものなどと似せた像と取り替えたのです。」
(23節)被造物に過ぎない人間は、何かに頼らざるを得ず、偶像礼拝
に走り、冒瀆の罪まで犯しました。
このような人間を神はどう処遇されるでしょうか。「不義によっ
て真理の働きを妨げる人間の不信心と不義に対して、神は天から怒
りを現されます。」(18節)なぜでしょうか。それは、聖にして義な
る神は、人に、神への信頼を従順(命令を守る)をもって表わすよう
に求めておられるからです。
命令違反は罰、それも永遠の罰をもって償われねばなりません。
そして、私たちにはその罰は負いきれません。どうしたらいいので
しょうか。そこには、まことの救いが求められるのです。
(2007/06/17 三宅宣幸牧師)
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