2007年05月06日

『ただ一つの慰め
(ハイデルベルク信仰問答講解説教1)

主たる聖書テキスト: ローマの信徒への手紙 8章1〜17節


 本日より、ハイデルベルク信仰問答を学んでいきます。ハイデル
ベルク信仰問答は、1562年、ドイツのハイデルベルクで、ドイツの
改革派教会の流れの中でつくられました。が、改革派に限定されな
い福音主義(プロテスタント)の立場に立ってまとめられた教理問答
でもあります。私たちの教会は、改革派の伝統に属する教会ではあ
りませんが、広く福音主義の立場に立つ教会として、み言葉の解き
明かしの中で、この教理問答の学びを補助として用いることにより、
教会の信仰を確かなものとしていきたい、と願うのです。お手元の
資料を見ていただければわかるとおり、この教理問答は、問と答と
証拠聖句とからなる三部構成となっています。が、実は証拠聖句が
主なのです。それゆえ、その日取り上げる証拠聖句の中、もっとも
重要と思われる聖書テキストをその日の主たる聖書テキストとして、
問答の内容を添えるかたちで、み言葉の解き明かしを進めてまいり
ましょう。

 さて、本日は、ハイデルベルク信仰問答の学びの第一日目、第1主
日として、問1、問2を与えられました。「問1.生きるにも死ぬにも、
あなたのただ一つの慰めは何ですか。答.わたしが私自身のものでは
なく、体も魂も、生きるにも死ぬにも、わたしの真実な救い主主イ
エス・キリストのものであることです。」(吉田隆訳による)あなた
(わたし)のただ一つの慰めが、救い主イエス・キリストのものであ
ること、つまりキリストに捉えられていることだというのです。が、
この冒頭の短い内容が、本日第1主日に与えられた問1、問2全体の、
そしてハイデルベルク信仰問答全体のメインテーマとなっています。
それで、まずこの冒頭の短い問答に集中して二つのことを取り上げ
て学んでいきましょう。

 まず、第一に、ここで言う「あなた(わたし)」とは誰のことか、
ということです。誰のことでしょうか。全人類の一人一人のことで
しょうか。もちろん、すべての人が、全人類が主イエス・キリスト
の救いを受け止めて欲しいということは、教会の願いです。しかし、
現実にはみんながみんな、主イエスをキリスト(救い主)と告白して
いるわけではありません。むしろ、現代の世界では、主イエス・キ
リストに捉えられることを慰めと受け取る人の方が少ないのではな
いでしょうか。それでは、このあなた(わたし)はとりわけ信心深い
人について言われることでしょうか。今、日本の若者に宗教につい
て問うと、多くの若者が、宗教は「弱い人」の慰めとしては理解す
るが、自分には関係ないし、必要ないと答えるのだそうです。信仰
とは、いろいろな困難に出会ったとき、心が弱った時になって考えれ
ばいいことだというわけですが、そうなのでしょうか。イエス・キ
リストは、困難に出会って弱っている人にとってだけの慰め主なの
でしょうか。実は、このあなた(わたし)は、全人類でも、とりわけ
困難に直面している人だけを指すのでもありません。このあなた(わ
たし)は、証拠聖句の(1)(2)(3)、Tコリ6:19〜20、ロマ14:7〜9、
Tコリ3:23、テト2:14では、あなたがた(わたしたち)であり、教会
のメンバーなのです。教理問答でいうあなた(わたし)は、全人類に
までは至っていないが、困難に出会っている人だけでなく、主イエ
ス・キリストに出会って、その愛の中に入れられて、洗礼を受け、
教会メンバーとされた者のことを言うのです。そして、その者にと
っては、キリストに捉えられることが、唯一の慰めであるはずだ、
というのです。

 それでは、第二の問題ですが、慰めとは、慰めとなるとはどうい
うことなのでしょうか。日本語で「慰め」というと、第一の意味と
して「心を楽しませること」とあります。要するに気分の問題です。
だとすると、クリスチャンがキリストに捉えられていると、いい気
分になるということなのでしょうか。ところがここで慰めと訳され
ている言葉は、原文では、しっかりとした土台の上に立っている状
態を言うのです。気分の問題ではないのです。それでは、どうして
人間はしっかりした土台に立つことを必要とするのでしょうか。そ
れは、答の第2段落、そして問2の答にもかかわってきますが、人は
罪によってがんじがらめにされてしまっているからです。困難でし
たら、お金が与えられれば、健康が回復すれば、克服できるかもし
れません。しかし、罪の問題は自分で償うことが一切できません。
キリストの尊い犠牲が必要、それゆえ、キリストはゆるぎない基盤
なのです。(前半のみ)

(2007/05/06 三宅宣幸牧師)

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