2007年04月29日

『偶像に供えられた肉

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 8章1〜13節


 コリントの信徒への手紙一8章で問題となっているのは、偶像に供
えられた肉のお下がりを食べてよいかどうか、という問題です。日
本の古い伝統の中で育たれた方で、しかもクリスチャンの方は、他
の宗教が絡んだ行事に、クリスチャンとしてどのようにかかわった
らよいか、悩んでおられるかもしれません。コリントという町も、
町の南にアシタロテ(アフロディテ)の神殿がそびえており、その他、
地中海世界のあらゆる神がそこにいる、と言われるような町でした
ので、クリスチャンといえども、付き合い上、それらの宗教の絡ん
だ行事に参加せざるをえなかったのです。

 しかし、この8章で問題となっているのは、偶像礼拝そのものでは
ありません。後に10章で取り上げられるように、唯一の神によって、
また御子イエス・キリストの贖いの愛によって救われた者が、他の
神を拝むということは論外です。もちろん、論外だからといって実際
に守られるとは限りませんが、そうではなくて、ここで問題となっ
ているのは、偶像に供えられた肉、神々に捧げた供物を分け合う習
慣があったのでしょう、それにクリスチャンも与る、それがいいか
どうかという問題でした。

 パウロはどのように判断したでしょうか。聖書のテキストからは
読み取りにくいのですが、パウロの判断は、食べることそのものに
は問題はない、なのです。どうしてなのでしょうか。それは、4-6節
に書かれていますが、パウロの論旨を追えば次のとおりです。天地
すべてを巡っても、主なる神以外にはまことの神はいらっしゃいま
せん。ゆえに、世の中で「神」と呼ばれているものはみな本当の神
ではないのです。神に必要な聖なる性質は備えていません。それゆ
え、その儀礼に捧げられたものに聖なる力が帯びていることはなく、
食べたとしても功徳もなければ、たたりもないのです。

 それでは、偶像に供えられた肉を食べることに何の問題もないの
だとすると、クリスチャンはそれを自由に食べてかまわないのかと
いうと、そこに残された問題がある。それが七節以下です。その問
題は何でしょうか。その肉は、何の霊力もないとしても、あくまで
も、一旦偶像に捧げられた肉です。偶像への礼拝として捧げらた肉
です。だとするとどうなるか。この肉を食べることによって、偶像
礼拝に惹かれていくこともあり得るのです。特に弱い人(9節)−つま
り、偶像礼拝は意味がないという知識を持っていない人−は、惹か
れる危険が大きいのです。そして、強い人−偶像礼拝が意味がない
ことを知っている人−についても、たとえ自分自身は偶像礼拝に惹
かれなくとも、その人が自由に振舞うのを見た弱い人が偶像礼拝に
惹かれるかもしれ、ないのです。さらに強い人自身も、肉を食べた
ことがきっかけで、いつ心が弱って、つまり欲望に負けて、偶像礼
拝に陥らないとも限らないのです。クリスチャンは自由とされた者
です。しかし、自由を注意深く用いなさい。自分にも、教会の仲間
にも、つまづき、罪の入り口とならないように注意しなさい。これ
が、パウロの結論です。

 さて、クリスチャンはキリストの贖いの恵みに与ったのですから、
全てにおいて自由とされたはずなのに、なぜ、自由の濫用の問題が
起きるのでしょうか。それは、クリスチャンが霊の世界に生きるこ
とをゆるされたとしても、つまり自由とされたとはいえ、まだ肉の
世界にも止まっているからです。

 そもそも人は、アダム以降肉の世界だけで生きてきました。その
中にどっぷり浸かったままの人もいます。しかし、これではいけな
いと聖なる(上なる)世界を求める人もいて、修行を積まれるのです。
が、人は自分の力ではいくら努力しても罪の問題を解決することは
できません。自ら聖となることはできません。ところが、神が、神
の側から主イエス・キリストを送ってくださり、しかも贖いの死を
遂げられることにより、罪を贖い、私たちを自由にしてくださった
のです。これがクリスチャンが体験している自由です。自分で獲得
した自由ではありませんから、この自由を自分の欲望に基づいて行
使しようとするとき、大きな罪を犯すこととなり、神の恵みさえ失
うのです。そして第二に、この自由を聖なる自由として保つために
は、キリストがこの世で生きられたときのように、仕えることが必
要です。この自由は、神に仕え、人に仕えるときにまことの輝きを
増すのです。

(2007/04/29 三宅宣幸牧師)

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