2007年03月18日

『新しい契約に使える資格

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙二 3章4〜18節


 パウロの使徒職に対して誹謗中傷を加えるコリント教会に対して、
パウロは、コリントU2:14-7:4の部分で、使徒職の弁明をしなけれ
ばなりませんでした。ところがコリントの教会は、それでもパウロ
に対する誹謗中傷を止めませんでした。

 そこで、パウロはさらに「涙の手紙」と言われるコリントU10-13
章の部分にあたる手紙を送らざるを得ませんでした。10-13章は、パ
ウロの誇りをめぐって話が展開しています。パウロは、使徒として、
苦労すること、愚かであることを、キリストにあって誇りとしてい
ます。ところが、これが教会になかなか通じません。キリストに仕
えるということが、見栄えのいいことではなく、苦労することであ
る、ということがどうしてもわからないのです。パウロは最後近く
に、「あなた方が、失格者なら別ですが(失格者にならないように)」
(13:5)と述べています。

 このときのパウロの心境はどのようなものだったでしょうか。自
分の愛した子が背く、背いて言うことを聞かないどころではない、
誹謗中傷してくる、そして手紙を書いてもなかなかわかろうとしな
い。裏切りにあったとき、私たちは、最も落ち込みます。ヨセフと
同じく、パウロも失意のどん底にあったのではないでしょうか。と
ころが、彼は希望を棄てませんでした。彼は、この「涙の手紙」を
祝祷をもって閉じているのです。(13:13)

 その後のコリント教会です。「涙の手紙」をコリント教会へ持参
したテトスの帰りを、パウロは今か今かと待っておりました。しか
し、テトスはなかなか帰ってきません。痺れを切らしてマケドニア
州まで出かけていったパウロに、テトスはやっと戻ってきまして朗
報をもたらしました。あれほど頑なだったコリント教会の人々が、
パウロの「涙の手紙」を読んで、悔い改めた、というのです。奇跡が
起こったのです。神が、不可能と思われた、コリント教会の人々の
悔い改めを引き起こし、苦しんだパウロに慰めを与えてくださった
のです。

 コリントU1:1-2:13、そして7:5-16は、その時パウロがコリント
の教会へ送った感謝の思い、と言われています。実は、コリントの
信徒への手紙第二は、「慰めの書」とも言われているのですが、そ
れは、「慰め」という言葉が、この手紙のこの部分に、そして、特
に1:3-7と、7:6,7,13に集中して、しかもそこだけに出てくるからな
のです。パウロが、コリント教会の悔い改めという奇跡を前にして、
いかに主の慰めを感じたか、主が慰め主であることを実感したか、
よくわかるのです。コリント教会は、罪に罪を重ねましたが、悔い
改めに至りました。そして、苦しみに苦しんだパウロは、主の大い
なる慰めをいただくこととなったのです。

 さて、本日与えられたテキストは、3:4-18です。ここは、本来は、
パウロが自分の使徒職を弁明するために述べたところです。しかし、
現在の聖書では、1:1-2:13に引き継がれて、つまり「慰めの書」に
引き継がれて読むように構成されている。あれほど問題となったパ
ウロの使徒職は、一体どうなってしまったのでしょうか。

 自分の使徒職を弁明しているとき、パウロは必死でした。それで、
モーセと比較して、自分に与えられた使徒職のすばらしさを必死に
訴えたのです。本日の旧約書でもお読みしました。(出エジプト記3
4章)モーセは、神に近づいた後、顔が光り輝いたのです。それは、
神から神のおきて律法を与えられるという栄光を受けたからです。
しかし、律法は、それが守られなくなった途端、威力を失います。そ
れゆえ、モーセの顔の輝きもすぐに消えてしまいます。それを「隠す」
ために、モーセは顔覆いをつけた、とパウロは解釈します。それに
対してキリストの栄光はどうでしょうか。すべてのものの罪を贖っ
て救うキリストの栄光は、威力が消えうせることは全くないのです。
キリストの栄光を受けた使徒職はこんなにすばらしいのだ、とパウ
ロは訴えたのです。

 あの時、必死に訴えたパウロに、コリントの教会の人々は、パウ
ロを使徒として決して受け入れようとはしませんでした。しかし、
神が、コリントの教会の人々を悔い改めに導いたということは、パ
ウロの使徒職を栄光ある使徒職として認定してくださったというこ
とでもあるのです。パウロを使徒として立てた神は、その約束をも
違えることはありませんでした。すべてを「然り」としてくださる
神に信頼して歩んでまいりましょう。

(2007/03/18 三宅宣幸牧師)

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