2007年01月21日

『キリストに結ばれた者

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 1章1〜9節


 本日の使徒書はコリントの信徒への手紙一1:1-9です。この手紙は
パウロがコリントの教会に宛てた手紙ですが、コリントの教会とい
えば、その悪で有名です。第一の手紙では、読者もびっくりするよ
うな悪行が、教会の中で、教会のメンバーの間で行われていたこと
が、並べ立てられています。教会内で、パウロ派とアポロ派に分か
れて派閥争いをしていたというのはまだ序の口でして、5章には、教
会のメンバーの中に、「異邦人の間にもないほどのみだらな行い」
があるということが記されています。性的不品行を行う者がいたの
です。さらに6章には、教会内でもめごとを起こした時、それを教会
内で解決しようとしないで、この世の裁判に訴える輩がいる、とい
うことが記されています。現代、私たちはニュースを通して様々の
悪の情報を耳にしますが、その私たちもびっくりするような出来事
が書き連ねられているのです。そして、11章に至りますと、聖餐式
においてさえ、よからぬことが行われていたことが記されています。

 第一の手紙だけでも、このような有様でした。第二の手紙に至る
と、もっとすさまじく、あの使徒パウロを使徒として認めず、排斥
しようとする(もちろん、成功しませんでしたが)、そこまで行き着
いてしまうのです。

 私たちは、このようなコリント教会の有様を見るときに、いぶか
しく思います。なぜなら、使徒言行録が伝えるコリント教会の姿と、
コリントの信徒への手紙が伝えるそれとが、あまりにも違うからで
す。使徒言行録18章によりますと、パウロは、コリント在住のユダ
ヤ人の反発は買いましたが、異邦人には受け入れられました。神を
信じるティティオ・ユストという人の家で、最初の教会は始まりま
した。会堂長のクリスポは、一家を挙げて主を信ずるようになりま
した。コリントの多くの人々が、パウロの言葉を聞いて信ずるよう
になり、バプテスマを受けたのです。そればかりか、ある夜、パウ
ロは主の幻を見ました。「恐れるな。語りつづけよ。黙っているな。
わたしがあなたと共にいる。だから、あなたを襲って危害を加える
者はない。この町には、わたしの民が大勢いるからだ。」という言
葉をいただくのです。何と一年六ヶ月もここに止まって伝道しまし
た。

 この純粋な信仰をもったコリントの教会員が、どうして手紙に書
かれているような究極の悪を行うようになってしまったのか、読者
としては、信じがたいところです。が、もしその答えがあるとする
ならば、それはただ一つ、それは、コリントの信徒への手紙のそこ
ここに示唆されていますが、コリントの教会員が大変に優秀だった
からです。自分たちは優れている、自分たちは霊力ほを持っている
という誇り(プライド)、それが、自分の力で救われようという努力
となり、そして、救われるという確信に至り、救いに対する、失っ
てはならぬ「素直さ」を失うこととなり、この悪行につながったの
ではないでしょうか。

 パウロには、このコリントの人々の霊的状態がわかってしまいま
した。第二の手紙のひどい悪行は体験していません。しかし、この
悪行は放っておくと「異端」にまで至るかもしれない、と手紙を記
します。

 このコリントの信徒への手紙は呼びかけからして異常です。「神
の御心によって召されたキリスト・イエスの使徒となったパウロと、
兄弟ソステネから、コリントにある神の教会へ」ここまでは普通で
す。としかし、ここから先が異例です。「すなわち、至るところで
わたしたちの主イエス・キリストの名を呼び求めているすべての人
と共に、キリスト・イエスによって聖なる者とされた人々、召され
て聖なる者とされた人々へ。」コリントの教会の信徒の人々を「聖
なる者」と呼んでいます。しかも二度も。これは何なのでしょうか。
それは、パウロの皮肉です。コリントの人々は、自分たちのことを
「聖なる者」と思っていました。しかも、自分の力で「聖なる者」
になったと思っていました。しかし、それは、自分の力でそうなっ
たのではなく、キリスト・イエスによって「聖なる者」とされたの
であり、召されて「聖なる者」とされたのです。そしてキリストに
あって豊かにされたのです。全てがいただいたもの、賜物なのです。
ですから、高慢になって悪を行うのではなく、神の恵みと約束に
「素直に」従うことこそが求められるのではないでしょうか。

(2007/01/21 三宅宣幸牧師)

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