2006年11月12日

『イスラエルの選び

主たる聖書テキスト: 創世記 18章1〜15節


 「信仰の父」と呼ばれるアブラハムも、実は普通の人でした。神
様の言葉を本当は、本当には信じることができなかったのです。も
ちろん、アブラハムも半分は信じていました。土地については、彼
は苦労に苦労を重ねて、やっと、カナンという土地にたどり着くこ
とができました。そして、その土地にもともと住んでいた人たちと
の交渉がまとまって、安心して住めるようになったのです。(20章)
彼も、神様が土地を与えて住めるようにしてくださった、と心から
感謝したに違いありません。

 しかし子どもの方はというとなかなか土地のようにはいきません。
アブラハムは、神様から約束をいただいた時、75歳、そして妻のサ
ラは65歳、その後子どもが生まれる兆しもなく、25年が過ぎてしま
い、ついにアブラハム100歳、サラ90歳にまでなってしまっていたの
です。最初に、神様の約束は実現しないのではないか、と思い出し
たのは、妻のサラでした。ある時、自分が、女性として赤ちゃんを
産むことのできない体になってしまったことを知ってしまったから
です。そして、妻の体の変化はアブラハムも知るところとなり、神
様の言葉があったとしても、もう自分たちの間に子どもが生まれる
ことはない、というのが、二人の間の「真理」(常識)になってしま
ったのです。

 そんなある日のこと、アブラハムは、自分の家、天幕の入口に座
っていて、ふと目をあげると、三人の人が立っているのを見つけま
した。「普通の客人ではない」と直感した彼は、慌ててもてなしの
用意を致しました。「足を洗って木陰でお休みください。召しあが
るものを用意しますので、召しあがっていってください。」とひき
止めます。そしてサラに「早く、上等の小麦粉、3セア(23リットル)
をこねて、パン菓子をつくりなさい。」と命じてパンを用意させ、
さらには、牛の群れのところへ走っていって、柔らかくて、おいし
そうな子牛を選び、急いで料理させ、凝乳、乳などと一緒に客人の
ところへ運びました。イスラエルでは、牛の料理は、羊・鳥などに
はるかに勝るごちそう、そして、子牛は最高の食材でもあったので
す。

 そうしている最中、その客人が突然「あなたの妻サラはどこにい
ますか。」と尋ねるのです。ビックリしてアブラハムが「はい、天
幕の中におります。」と答えたところ、三人のうちの一人が、「わた
しは来年の今ごろ、必ずここに来ますが、そのころにはあなたの妻
サラに男の子が生まれているでしょう。」という思いもかけない言
葉を発した、というのが今日の物語なのです。

 アブラハムと、そして、妻のサラはどうしたでしょうか。子ども
が生まれたら、与えられたら、こんなに嬉しいことはありません。
それは夫婦の長年の願いであるし、確かに、神様も約束なさったこ
とです。しかし、とりわけ自分の体のことをよく知っているサラに
は、どうしてもその希望を持つことができません。サラにはこの人
の言葉が、どうしても現実離れしたものにしか思えなくて、それで
「クスッ」と笑ってしまったのです。ところが、その人は、サラの
不信仰を見逃しません。「なぜ、笑ったのか。なぜ、自分に子ども
が生まれるはずがないと思ったのだ。」とその信じられない心を追
求しまするそして、もう一度、「主に不可能なことがあろうか。来
年の今ごろ、サラには必ず男の子が生まれている。」けと確約なさ
ったのです。サラは恐ろしくなって、笑ったことを打ち消した、と
聖書に書かれていますが、サラは、考えを変えて、この人の言葉を
信じたのでしょうか。多分「笑った」ことを恥じただけで、やはり
信じたわけではないのです。

 さて、物語はどう展開するでしょうか。もしも、神様が厳しいだ
けのお方であったなら、「このような不信仰な者たちを、私はもう
面倒見切れない。」と、見捨ててしまわれたことでしょう。しかし、
神様は、この二人を、見所があるから認めた、のではなく、愛して
おられるのです。ですから、二人のために、そして二人が不信仰で
あったとしても、約束なさったことは、実行してくださるのです。
21章を見ますと、主は約束どおりサラを顧み、彼女は身ごもり、神
が約束された時期に、男の子を産んだのであります。神様は、不信
仰な二人にも愛を実行してくださった。二人は神様の愛を体験した
のです。神様が愛してくださるのは、アブラハムだけではありませ
ん。私たちも、例外なく愛されている一人です。

(2006/11/12 三宅宣幸牧師)

※このページに関するご意見・ご質問は三宅牧師までお寄せ下さい。miyake@aksnet.ne.jp


(C)2001-2006 MIYAKE, Nobuyuki & Motosumiyoshi Church All rights reserved.