2006年08月06日

『働きに優劣なし

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙一 12章14〜26節


 元住吉教会には、独自の習慣として礼拝後一同で週報に印刷され
た「今日の聖句」を読むということがあります。本日の聖句は、使
徒パウロの「ひとつの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、
一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。」とい
う言葉(コリント一、12章26節)です。

 パウロの言うように、本当にそうであったらどんなによいかと思
います。しかし、一方で「人の不幸は蜜の味」という言葉があるよ
うに、他者と共感して生きるということは人間にとってそう自明な
ことではないようにも思われます。人間というものは自他に対して
なかなか難しい存在であります。

 ある人は「自分が転職しなくても友達に先を越されると何故かも
のすごく悔しい」と言いましたが、この言葉は多くの人の心に共通
するものではないでしょうか。どうも人間には他の人よりも少しで
も上でありたいという思いがあるように思われます。本日の福音書
はマルコ9章33〜41節ですが、ここには弟子たちが「誰が一番
偉いか」といって議論していたという記事がありますし、10章35節
以下には弟子のヤコブとヨハネの兄弟がイエスの支配する時代にな
ったら、自分たちを誰よりも重んじてくださいとイエスに願ったと
記されています。

 パウロの言葉に戻ると、コリントの教会は彼の異邦人伝道の結果
生まれた教会でありましたが、信仰的、組織的に多くの問題、課題
を抱えていたようであります。また、新約聖書にはコリントの教会
宛の手紙は二通ありますが、元来は四通あったのではないかと考え
られています。そして、残されている2通の手紙を見ても、パウロ
はコリントのことで様々に心を用いていたことが分かります。手紙
の数は親しさより問題の多さを示しているといえます。

 この教会には指導者を巡る争いもありました。教会も所詮ただの
人間の集まりであると思われても仕方ないようなことです。2章に
は具体的に、パウロに付く人、あるいはアポロに付こうとする人が
あり、パウロは、「この二人はあなた方を信仰に導くためにそれぞ
れ主がお与えになった分に応じて仕えた者です。わたしは植えアポ
ロは水を注いだ。ですから、大切なのは植える者でも水を注ぐ者で
もなく成長させてくださる神です。植える者と注ぐ者は一つですが、
それぞれが働きに応じて自分の報酬を受けることになります。わた
したちは神のために力を合わせて働く者であり、あなたがたは神の
畑、神の賜物なのです。」と諭しています。

 教会の奉仕に軽重、貴賎はないというのがパウロの主張です。大
事なことは教会の一人ひとりの働きが真の教会キリストの教会を建
てる働きに繋がっているということです。そして、教会の人間の働
きはそれ以外にないのです。もし私利私欲がそこに入り込めば、教
会はこの世以下の醜い人間集団に成り下がってしまいます。

 教会が教会本来の働きを考えるとき大切なことは「ひとつの霊に
よって、わたしたちは、ユダヤ人であろうとギリシャ人であろうと、
奴隷であろうと自由な身分であろうと、皆一つの体となるために洗
礼(バプテスマ)を受け、皆一つの霊を飲ませてもらった。」という
信仰の事実に立ち返ること。ここに教会の働きの価値基準を置くと
いうことです。

 そして、このような教会の中でこそ、本日の「今日の聖句」が真
に意味を持ち、教会の一致と働きの豊かさが生まれてくるのです。

 本日は、日本基督教団の教会暦では「平和聖日」であります。ニ
ューヨークの国連ビルの向かい側の壁にはイザヤ書2章の「彼らは
剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かっ
て剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。」という言葉が刻まれ
ているといいます。しかし、世界の現実はそれと反対の様相を呈し
ています。本当にどうしたら世界が平和になるのかと思ってしまい
ます。

 平和という言葉は、旧約聖書ではシャロームという言葉が使われ
ています。この言葉はすべてのことが和らいでいる、満たされてい
るという意味があるといわれます。

 私たちは、キリストの名により洗礼を受け一つの霊を「飲む」時、
神と人、自然との間に真の和らぎ(和解)を与えられます。この信仰
を忘れずに日々を過ごしたいと思います。そして、本日の礼拝に用
意された「聖餐」に与らせていただき、キリストの霊を飲ませてい
ただくとともに、この信仰を世に伝えて世界の平和の実現に奉仕し
たいと思います。

(2006/8/6 石井道夫牧師)

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