2006年07月30日

『神の力によってなす

主たる聖書テキスト: コリントの信徒への手紙二 6章1〜10節


 新約聖書にも、旧約聖書のイスラエルの民のように、最高の恵み
をいただきながら、よりによって神に背いてしまう、そういう弱さ
をもった人がいます。それは、コリントの教会の人々です。使徒言
行録によりますと、使徒パウロは、第二伝道旅行の途中、コリント
の町に一年六ヶ月の間滞在して伝道しました。そうしてできたのが
コリント教会でした。パウロは、コリントの教会にとっては、神の
代理者として、教会を生んでくれた親のような存在だったのです。

 ところが、この教会は、パウロに背きました。つまり、神に背い
たのです。パウロが去ったあと、別の悪い教師が教会に入り込んで
きました。パウロには、使徒としての資格がない、と言いふらしま
した。使徒としての資格がなければ、その言葉はただの人間の言葉
になってしまいます。そして、コリントの教会の人々は、その言い
ふらしにのったのです。

 このパウロへの反逆、神への反逆は、出エジプトの民と全く同じ
です。出エジプトの民においても、コラ、ダタン、アビラムの反乱
がありました。(民数記16章)モーセに、つまり、神に反逆したので
す。曰く「あなたたちは、分を超えている。」すなわち、モーセの、
神の代理者としての地位を否定したのです。

 これらの、使徒への反逆者、モーセへの反逆者、神への反逆者は
どうなったでしょうか。モーセへの反逆の時は、モーセの執り成し
にもかかわらず、悔い改めは起こりませんでした。反逆者どもは滅
びてしまいました。しかし、コリントの教会の場合には、パウロの
執り成しに、コリントの教会が、やっとでありますが、応えたので
す。本日与えられました使徒書テキスト、コリントU6:1-10は、そ
のパウロの執り成しの手紙の一部です。2節で、パウロは、「今や、
恵みの時、今こそ、救いの日」と言っています。コリントの教会の
人々は、使徒パウロに背き、神に背いて罪を犯しました。罪を犯し
たコリント教会が、どうして「恵みの時、救いの時」というメッセ
ージをいただくことができるのでしょうか。むしろ、裁きの時なの
でないでしょうか。そのことについて、パウロは、その前の2節の前
半のところで、旧約聖書イザヤ書49:8を引用しています。イザヤ書
49章は、第二イザヤと呼ばれる預言者が預言をした、そのメッセー
ジが記されているところです。第二イザヤが「恵みの時、救いの時」
と告げた時、イスラエルの民はどういう状態にあったでしょうか。
見るからに立派な状態だったでしょうか。そうではないのです。神
に背くという罪を犯し、犯しつづけ、ついに国を失い、バビロンに
捕らえられるという、神の呪いの下にあったのです。しからば、本
来ならば、神の怒りが烈火のごとく降り注いでもおかしくない、呪
いの状態において、どうして、神の恵み、神の救いが用意されてい
るのでしょうか。それは、いったん約束したならば、背いた民をも
見捨てない神、失われた者を探し出す神だからなのです。

 神は、天地創造の最初から、お造りになった人類を愛しておられ
ましたが、その愛は、正しい者、立派な者を愛する愛にとどまるも
のではありませんでした。いったん造られた以上、罪を犯す者、と
りわけ神に背く者に対しても、心から、心を痛めて、心配なさる、
そういう愛だったのです。一方、人間の側はどうかと言えば、そん
な神の御心にもかかわらず、悪に悪を重ねてまいりました。神は、
ますます心の痛みを深められ、そして、ついに、御一人子イエス・
キリストを、罪の贖いの為にこの世に遣わされた、それこそ、パウ
ロの言う、「恵みの時、救いの時」なのです。

 神の、いとおしむ愛は、イスラエルの民に対してばかりでなく、
コリントの教会の人々に対してばかりでもなく、私たちにも、一人
の例外もなく向けられているのです。神は、私たち一人一人を、は
らはらドキドキしながら、見守っていてくださるのです。とりわけ、
私たちが罪を犯したときの神の心の痛みは、尋常ではないのです。

 その愛に、私たちは普段は気づかずに、神の怒りを買う生活をし
て、過ごしてしまっているかもしれません。しかし、自分の生活が
神の怒りを買う者であることに気づき、悔い改めるならば、そこに
は、怒りにもかかわらず、赦しをもって待っていてくださる神がお
られるのです。私たちも、気づきを通じて、神の赦しの愛の中に生
きようではありませんか。

 (2006/07/30 三宅宣幸牧師)


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